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LNG船用TMCP型中厚YP460級厚鋼板を開発、世界初適用【JFEスチール】

2016年5月30日

当社は、川崎重工業㈱(東京本社:東京都港区、社長:村山滋、以下「川重」)と共同で、液化天然ガス(LNG)運搬船用として中厚(板厚50mm以下)の降伏応力(YP)460MPa級の高強度厚鋼板をTMCP(*1)製造にて開発・実用化し、MOSS型(*2)LNG船(LNG積載量:164,700m³)の船側外板に世界で初めて適用しました。

LNGの需要は今後中国を中心としたアジアが牽引すると見られており、一方供給元としてはシェールガス革命により増産整備が進んでいる米国が特に注目されています。
LNG輸出基地計画の多い米国東岸からアジアへのLNG輸送は、2016年に拡張工事が完了する予定のパナマ運河を通行することで運行日数を大幅に短縮できます。この拡張後のパナマ運河を通峡可能なMOSS型の最大船型の設計において、高強度化、軽量化につながる厚鋼板のニーズが高まっていました。

今回開発した鋼板は、従来のLNG船に使用されている降伏応力355MPa級もしくは390MPa級鋼板に比べて、降伏強さがおよそ15~30%高い厚鋼板です。最大船型の設計を可能とする船体強度の向上に寄与するとともに、船体軽量化による輸送エネルギーの低減を実現します。また、造船所での建造効率を向上させるために必要な、各種大入熱溶接施工(*3)にも対応しています。

開発にあたっては、特に溶接部分の強度と靭性の両立が課題となりました。大入熱溶接では、溶接熱により影響を受ける鋼板部分に軟化部が形成されます。当社は、世界最高速の冷却速度を有する高精度水冷装置『Super-OLAC®(On-Line Accelerated Cooling)』および熱影響部の靱性劣化を抑制する『JFE EWEL®』技術により、溶接熱影響部の組織を最適に制御することで、溶接部分の強度と靭性の両立を達成しています。

今回開発した厚鋼板は、川重坂出工場にて建造され2016年に就航予定の、164,700型LNG船に適用されました。中厚のTMCP型YP460MPa級高強度厚鋼板がLNG船に適用されたのは世界初です。

当社は今後とも、高機能・高品質な鋼材の供給を通じて、船舶のさらなる経済性、安全性、信頼性向上に努めるとともに、地球環境の保全に貢献し、お客様や社会の多様なニーズに積極的に応えてまいります。


(*1)TMCP : Thermo-Mechanical Control Process(熱加工制御)。
         制御圧延、加速冷却を駆使してオンライン製造で鋼材の強度や靭性を向上させる技術。

(*2)MOSS型 : 球形独立型タンクを円筒形の支持構造(スカート)で固定する方式。

(*3)大入熱溶接 : 一般的な小入熱多層盛溶接に比較して、一度の溶接で投入される熱量が大きく高能率な溶接方
           法。サブマージアーク溶接やエレクトロガスアーク溶接など。

【写真】高強度厚鋼板が適用された、MOSS型LNG船

※写真提供 : 川崎重工業㈱









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