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樹脂めっきにおける前処理と下地層形成を真空下で行える環境負荷を抑えた新技術を開発【島津製作所】

2017年10月19日


当社の高速スパッタリング装置


島津製作所は、ABSなどの樹脂基材に金属膜を形成する樹脂めっき工程において、高速スパッタリング装置を用い、基材表面の前処理や下地層の形成を真空下で行う環境負荷を抑えた新技術を開発しました。

従来の樹脂めっきは、前処理から下地層の形成までの工程で、環境負荷の原因となる六価クロムや高価な金属触媒が使用されています。対して、この度開発した新技術は、真空下でプラズマによる前処理やスパッタリングによる下地層の形成を行うため、六価クロムや金属触媒も使用しないことから、環境負荷の低減やコストの削減が期待できます。

当社は、10月24日から幕張メッセで開催される「IPF Japan 2017(国際プラスチックフェア)」で本技術を紹介します。


【新技術開発の背景】
近年、軽量化やコストダウンなどを目的に、自動車をはじめとする様々な工業製品が、金属からめっき処理された樹脂に置き換わってきています。一方で、めっき工程に使用される六価クロムが環境面で課題となっています。「持続可能な開発に関する世界首脳会議」で2002年に定められた実施計画では、「2020年までに化学物質の製造と使用による人の健康と環境への悪影響の最小化を目指すこと」とされており、有害な化学物質を使用しない、もしくは使用を最小限に留めるための技術開発が進んでいます。

このような背景のもと、当社は、立体プラスチック製品へ金属膜を成膜できる高速スパッタリング装置を応用し、環境負荷が少ない新技術を開発しました。


【新技術の概要と特長】
従来の樹脂めっき工程では、六価クロムを含むクロム酸で基材表面をエッチングした後に、高価な金属触媒を用いて銅とニッケルで構成された下地層を形成していました。

これに対し新技術は、高速スパッタリング装置の真空チャンバー内で、プラズマによる前処理後にスパッタリングによる銅下地層の形成を行います。前処理とスパッタリングの最適化によって実現した本工程では、六価クロムや金属触媒は必要とせず、廃液も発生しないため、環境負荷の低減やランニングコスト削減が期待できます。また、これまで検討されていた多くの代替手段では下地層の密着性を確保することが課題でしたが、当社による評価において、新技術は従来手法と同等の密着性を確認しています。

加えて、射出成形機と高速スパッタリング装置を連携させ、樹脂成形から下地層の形成までを自動化することも可能であり、防湿や防汚による歩留まりの改善にも貢献します。


【今後の計画】
当社は、樹脂めっきの使用を拡大している自動車内外装部品メーカーや家電メーカーに本技術の提案を開始して、2020年までに従来法に代わる技術として本格展開し、環境課題の解決に貢献します。また、本技術を応用し、めっき処理が難しいとされている炭素繊維強化プラスチックなどの材料への金属膜成膜技術の開発を進めています。


・詳しい技術説明についてはこちら


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