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衝突時の安全性を高める船舶用高強度厚鋼板をLPG船に世界初適用【JFEスチール】
2016年3月14日
当社は、三菱重工船舶海洋㈱(本社:長崎県長崎市、社長:横田宏、以下「三菱重工船舶海洋」)と共同で、船舶衝突時の安全性を高めることができる高強度厚鋼板「KA32-HD20」および「KD32-HD20」(商品名:『SAFEED™』(*))を新たに開発し、このたび、飯野海運㈱(本社:東京都千代田区、社長:関根知之)が所有するアストモスエネルギー㈱(本社:東京都千代田区、社長:増田宰)向けLPG(液化石油ガス)運搬船に、世界で初めて適用しました。
船舶の衝突は、その積載物の流出により深刻な環境被害をもたらす懸念があることから、衝突時の破損リスク低減が求められており、特にLPG船等の可燃性ガスを積載した船舶においては、破損リスクの低減が極めて重要です。破損リスク低減の方法としては、設計段階で破損しにくい船体構造とするほか、今回のような衝突時の安全性を高める鋼鈑を使用する方法が考えられます。
今回開発した鋼板は、鋼の化学成分および圧延条件の適正化により、鋼板のミクロ組織を最適に制御することで、従来鋼と同等の溶接施工性などを維持しつつ、同一強度の従来鋼と比べて高い伸び特性を得ることに成功しました。三菱重工船舶海洋での船舶衝突シミュレーションでは、本鋼板を船側外板に適用することで、衝突時に鋼板が破断するまでに吸収することができるエネルギーを、従来鋼を使用した場合と比べて2割以上向上できることが確認されています。本鋼板は、一般財団法人日本海事協会(所在地:東京都千代田区、会長:上田徳)より「KA32-HD20」、「KD32-HD20」として認証を取得しています。
本鋼板の適用によって、船体構造を変えることなく、船舶側面から衝突された際の破損リスクを大きく低減することができるほか、船体構造との組合せによりさらなる衝突安全性の向上効果も期待でき、LPG船と同様に高い安全性が求められるLNG船や原油タンカー等への適用も効果的です。
当社は今後とも、高機能・高品質な鋼材の供給を通じて、船舶の更なる安全性、経済性、信頼性向上に努めるとともに、地球環境の保全に貢献し、お客様や社会の多様なニーズに積極的に応えてまいります。
(*)SAFEED : SAFE Excellent Ductility steel の略
【図1】船舶衝突の概念図
【図2】開発鋼適用船と同型船の断面図と適用範囲
【写真】開発鋼適用船と同型船
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