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耐応力緩和特性に優れたCu-Zn系合金「MNEX®」を世界で初めて開発【三菱マテリアル】
2013年9月2日
三菱マテリアル㈱(取締役社長:矢尾 宏、資本金:1,194億円)は連結子会社の三菱伸銅㈱(取締役社長:堀 和雅、資本金:87億円)と共同で、耐応力緩和特性*1に優れたコストパフォーマンスの高いCu-Zn系合金「MNEX®」(合金組成:Cu-Zn-Sn-Ni-Fe-P)を、世界で最初に開発しましたのでお知らせいたします。
近年、自動車の高度エレクトロニクス化に伴い、車載用電子・電気機器は多機能化、高性能化によりその端子コネクターについても小型化、高性能化のニーズが高まっております。特に車載用端子コネクターには、確実に電気信号を送るために、高温環境下でもオス型端子とメス型端子間の嵌合(かんごう)接合力※2が落ちない高い信頼性が必要であり、その指標である耐応力緩和特性に優れた銅合金が求められておりました。また、金属価格高騰リスク低減や調達部品の低コスト化など、お客様からコストパフォーマンスの高い銅合金が望まれていました。
従来は、高品位・高価格のコルソン系合金(Cu-Ni-Si系合金)が、その強度と加工性により車載用端子コネクターに利用されておりましたが、当社はこのようなお客様のニーズを受けて、十分な強度と加工性を備え、お客様の低コスト化に貢献する新たな最適品質の銅合金として、「MNEX®」を開発いたしました。
「MNEX®」は、従来のコルソン系合金(Cu-Ni-Si系合金)と同等の特性(強度、加工性)を有しており、車載用端子コネクターの小型化に対応できる上、Cu-Zn系合金として極めて優秀な耐応力緩和特性を持っております。また、一般的なプロセスで製造できる上、高価な銅とニッケルの使用量を従来のコルソン系合金と比較して約1割削減し、安価な亜鉛(Zn)を使用することで原料コストを低減しているため、金属価格高騰リスクも低減できる世界初のCu-Zn系合金です。
当社は「MNEX®」について、新興国における低価格帯の自動車向けから次世代の環境対応車向け車載用端子コネクターまで幅広い展開を見込んでおります。今後も当社は、お客様にご満足いただける最適品質の製品開発、製造を積極的に進めてまいります。
*1…ばねによる耐応力緩和特性と嵌合(かんごう)接合力
高温で優れたばね性を示す指標として、耐応力緩和特性があります。耐応力緩和特性とは、ある材料に対して、ばね性を発揮する弾性範囲内の負荷(0.2%耐力に対して80%の負荷)をかけて150℃の高温環境下で1,000時間保持した後に、どれだけばねが弱るかを示す指標のことです。図1に示したように、耐応力緩和特性に優れる合金の場合は、高温で使用してもばねが弱らないため、オス型端子とメス型端子間のばねの嵌合接合力は十分に保持されます。一方で耐応力緩和特性に劣る合金の場合は、高温で使用するとばねが弱り、オス型端子とメス型端子間のばねの嵌合接合力が低下します。このような状態で振動等が加わるとオス型端子とメス型端子が外れる場合があります。
※2…嵌合(かんごう)接合力
例えばコネクタ等におけるオス端子とメス端子の寸法差による嵌め合いの接合力のこと。図1に示した端子の場合は、メス端子側の板ばね部分のばねの力でオス端子と接合しています。
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