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ポリマーがカーボンナノチューブを可溶化する過程のリアルタイム観測に初めて成功【物質・材料研究機構】
2013年2月7日
カーボンナノチューブ実用化の鍵となる技術の進展に大きな貢献
独立行政法人物質・材料研究機構
国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学
天津大学(中華人民共和国)
NIMS 環境再生材料ユニット、天津大学連携研究センターの内藤 昌信主幹研究員と奈良先端科学技術大学院大学は、次世代材料である単層カーボンナノチューブにポリマー(分子の重合体)が巻き付く過程をリアルタイムで解析することに世界で初めて成功しました。
概要
1. 独立行政法人物質・材料研究機構(理事長:潮田 資勝)環境再生材料ユニット(ユニット長:葉 金花)NIMS-天津大学連携研究センター(センター長:葉 金花)の内藤 昌信主幹研究員と奈良先端科学技術大学院大学(奈良先端大、学長:磯貝 彰)のグリーンフォトニクス研究プロジェクトチーム(代表:河合壯)は、次世代材料である単層カーボンナノチューブにポリマー(分子の重合体)が巻き付く過程をリアルタイムで解析することに世界で初めて成功しました。
2. カーボンナノチューブは、有機材料を使うソフトエレクトロニクスや、化学センサー・燃料電池など、環境に優しいグリーン・ライフサイエンス分野での様々な用途が期待されている新しい材料です。しかし、水や有機溶媒に極めて溶けにくいことがカーボンナノチューブの基礎研究や実用化の際にボトルネックとなっていました。その有力な解決手法として、ポリマーに包んで溶かす「ポリマーラッピング」が盛んに研究されていますが、ポリマーがカーボンナノチューブの周りにどのような機序で巻き付くか、その結果、どのようにナノチューブが可溶化していくかをリアルタイムで観測することはできませんでした。
3. 本研究では、タンパク質やDNAなどの生体分子の瞬時の動的な構造変化を解析する手法の一つである「ストップトフロー法」を採用し、カーボンナノチューブの動的なポリマーラッピング挙動の解析に初めて成功しました。
4. 本研究成果は、溶媒に溶かすことが困難であったカーボンナノチューブをポリマーに包んで可溶化するという量産化、実用化に向けたカギとなる技術でありながら従来未解明だったメカニズムを明らかにするもので、新たな可溶化剤の開発など効率的な生産に結びつくと期待されます。
5. 本成果は、日本時間平成25年1月17日に米国の科学雑誌「Journal of the American Chemical Society」のオンライン速報版で公開されました。
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