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ナノ積層フィルム技術の革新により次世代モビリティ向け高遮熱フィルムを創出【東レ】
2023年6月28日
ナノ積層フィルム技術の革新により次世代モビリティ向け高遮熱フィルムを創出
~EVの冷房消費電力3割削減と5G通信対応を両立~
東レ株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:大矢 光雄、以下「東レ」)は、このたび、ナノ積層フィルム技術の革新により、ガラス並みの透明性と太陽からの赤外線に対する世界最高レベルの遮熱性を備えた、次世代モビリティ向け高遮熱フィルムを創出しました。
本フィルムをEVに代表される次世代モビリティに適用することで、高い遮熱効果による冷房消費電力抑制・航続距離向上や、車内の快適性向上、さらに、高い電波透過性により自動運転に欠かせない5G通信に対応できることを実証しました。
地球温暖化を背景に省エネやCO2削減が求められており、特に自動車分野ではEV・FCVなどの次世代モビリティの普及が加速しています。その際に航続距離のさらなる向上や乗車時の快適性向上のための遮熱性能向上のニーズが高まっています。
東レは、ナノスケールの厚みのポリマー層を数百~千層重ねたナノ積層フィルムPICASUS®(ピカサス)1)を上市していますが、このナノ積層技術を深化させ各層の厚みを1nm(nm=10-9m)レベルで高精度に制御することで、従来技術では困難であった高い透明性と遮熱性を両立させた革新的な高遮熱ナノ積層フィルム2)を開発しました。 このフィルムをEVのフロントガラスに実装した結果、最大で夏場の走行時の冷房消費電力を約3割削減でき、また航続距離を約6%向上できることを実証しました3)。加えて、通常の遮熱ウインドウでは不快感を覚える夏場環境条件でも-2℃の体感温度抑制を示し、搭乗者の快適性向上を確認しています4)。
また、自動運転や安全性向上のためさまざまな通信機器が活用されており、特に5G通信に対応するための電波透過性の向上も必要となってきています。一部の自動車で採用される金属スパッタガラスでは、優れた遮熱性能を示す一方で電波透過性に課題がありました。これに対し本遮熱フィルムは、より優れた遮熱性能に加えて、金属を用いないことから5G通信電波への高い透過性も備えています。
本遮熱フィルムは、自動車フロントガラスやサンルーフに対応できる大面積フィルムの供試を進め、実車搭載を目指して顧客評価を本格化しています。航続距離・快適性向上に加えて高い電波透過性を備えた本技術により、次世代モビリティのカーボンニュートラル促進やコネクティッド対応・自動運転技術の拡大に貢献してまいります。
東レは今後も、「有機合成化学」、「高分子化学」、「バイオテクノロジー」そして「ナノテクノロジー」という東レのコア技術を駆使して、社会を本質的に変える力のある革新的な素材の研究・技術開発を推進することで、創業以来の東レグループ企業理念である「私たちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」の具現化に取り組んでまいります。
<用語説明・注釈>
1)PICASUS®
東レ独自のナノ積層技術を駆使したポリエステルフィルムの総称。可視~近赤外線までの光を一様に干渉反射させた金属光沢調フィルムから、ディスプレイから発するブルーライトのみを色づきなくカットできるフィルム、特定の色の光のみを選択的に反射できるダイクロイック調フィルムなど、さまざまなラインナップがある。
2)革新的な高遮熱ナノ積層フィルム
積層される各層の厚みの配列デザインの中で、特にナノ積層技術の深化で得られた革新的・層配列デザインにより得られたナノ積層フィルム。本デザインは、従来のナノ積層フィルムが約100nmの厚みの層を交互に重ね合わせるのに対して、数十nm厚みの層を1nm単位で厚み制御して挿入することで、可視光の反射を抑制しつつ赤外線カット性能のみを向上させ、世界最高レベルの遮熱性を達成している。
3)フロントガラス実装試験方法
本遮熱フィルムに熱線吸収層をコートしたフィルムをフロントガラスへ貼り、環境型シャシダイナモメータを用いてテストを実施した。
4)体感温度試験方法
本遮熱フィルムに熱線吸収層をコートしたフィルムをガラスに貼り、ソーラーシミュレーターを用いて、模擬太陽光の下でのガラス越しの皮膚温度をサーモグラフィーで計測した。
<東レ 「PICASUS®」 ウェブサイト>
https://www.films.toray/products/picasus/pis_001.html
<資料ダウンロードアドレス>
https://www.films.toray/download/technical_2.html
以上
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