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環境配慮型バイオマス樹脂製品“エコディア®”の「高植物度グレード」の販売開始について【東レ】

2012年8月28日

東レ㈱(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣)はこの度、環境配慮型バイオマス樹脂製品“エコディア®”について、植物由来のデンプンを原料とするポリ乳酸樹脂を50%以上の高率で使用した「高植物度グレード」を開発しました。今年の9月から、米国の電子製品環境評価ツール「EPEAT」への対応が必要なOA機器および電子製品向けの販売を開始し、まずは初年度の2012年度に100トン、さらに3年後の2015年度には年間1,000トンの販売を目指す計画です。

東レの“エコディア®”は、100%では成形性や耐久性、耐熱性、強度などの物性が充分に得られないポリ乳酸樹脂に対し、ABS樹脂を組み合わせることで実用上充分な成形性や物性を持たせた、ポリマーアロイの環境配慮型バイオマス樹脂製品です。これまで、必要な物性が得られるポリ乳酸樹脂の比率は30%まででしたが、今回の開発により50%以上の高率にすることが可能になったため、CO2などの温室効果ガスの発生を抑制するバイオマス樹脂としての特徴がより明確になりました。

ポリ乳酸樹脂は、植物由来のデンプンを乳酸発酵させて製造する環境に優しい樹脂として今後の拡大が期待されていますが、他の樹脂に比較して成形加工しにくく、長期間の耐久性や耐熱性、強度などが劣るという欠点がありました。一方、ABS樹脂は、家電製品やOA機器、自動車、玩具など幅広い用途に使用されており、成形加工のし易さや、耐久性、耐熱性、強度などが高度にバランスしている汎用性の高い樹脂であることから、東レではこの両樹脂を組み合わせたアロイ樹脂とすることで、環境配慮型でありながら実用性の高い樹脂製品として“エコディア®”を展開して参りました。
ところが近年、環境対応への意識がますます高まる中で、充分な物性と加工性を確保しながらポリ乳酸樹脂の比率を高くすることは大きな課題となっており、ポリ乳酸樹脂を多く使った際には、タルクと呼ばれる補強用の鉱石を添加しポリ乳酸成分を結晶化させ、物性を高める方法も提案されています。しかしこの方法では結晶化させるため、90℃以上の高温の金型で成形する必要があるため、生産効率の悪さから実用的とは言えないものでした。
今回の開発では、可能な限り少ない比率のABS樹脂で、従来ABS樹脂を70%以上配合することで得てきた成形性や物性を付与することを目指し、樹脂の分子構造を自在に制御するモルフォロジー制御と呼ばれる技術を駆使することで、ABS樹脂をポリ乳酸樹脂の中で、均一に微分散して存在させることに成功しました。そしてこれにより、従来より3割以上も少ない比率のABS樹脂との組み合わせで、これまでと同等のレベルでポリ乳酸樹脂の成形性や物性面での欠点を補うことができる「高植物度グレード」を実現しました。

バイオマス由来材料素材を活用した新製品の開発は、中期経営課題“プロジェクト AP-G 2013”で掲げる「グリーンイノベーション事業拡大(GR)プロジェクト」において、その中核を成す重要な取り組みです。東レは、基礎素材メーカーとして、企業理念「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」に則り、社会を本質的に変える力のある素材を提供していく考えです。そして、“Innovation by Chemistry”のコーポレート・スローガンのもと、ケミストリーの力で先端材料の開発を進め、より豊かな社会の実現に向けて「素材」で貢献する企業集団であり続ける所存です。

環境配慮型バイオマス樹脂製品“エコディア®”の「高植物度グレード」の詳細は下記の通りです。

1. 商品名

環境配慮型バイオマス樹脂製品“エコディア®” 高植物度グレード

2. 商品特長

(1)ポリ乳酸樹脂を50%以上使用した「環境に優しい素材」でありながら、ABS樹脂を成形する際に要する同等の時間や温度で、成形することが可能である。
(2)実用上十分な耐熱性や強度を有している。

3. 技術概要

ポリマーの分子構造を自在に制御するモルフォロジー制御技術により、ABS樹脂をポリ乳酸樹脂の中で均一に、微分散して存在させている。この技術により、従来は重量中70%程度必要だったABS樹脂の含有量を、重量中50%以下という3割以上少ないABS樹脂でポリ乳酸樹脂の成形性や物性面での欠点を補い、これまでと同等の成形性と物性を発現させることに成功した。

4. 発売時期

2012年9月

5. 販売計画

2012年度 100トン、2015年度 1,000トン


※1. シャルピー衝撃強さ
角柱状の試験片に対して高速で衝撃を与え試験片を破壊し、破壊するのに要したエネルギーと試験片の靭性を評価する試験により算出するもので、この値が大きい材料は、引張り強さや伸びが大きく、靱性がある。
※2. 荷重たわみ温度
荷重を与えた状態で、試料の温度を上げていき、たわみの大きさが一定の値になる温度を表す。


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