ニュース

世界初、パルス放電回路を搭載した車載用鉛バッテリ状態検知センサーを量産開始【古河電気工業】

2012年6月22日

当社と古河AS㈱(本社:滋賀県犬上郡甲良町尼子1000、社長:黒川通豊)は共同で、パルス放電回路を搭載した車載用鉛バッテリ状態検知センサーを、世界で初めて開発しました。本センサーの使用により、エンジン停止時やスターターモータを搭載していない車両においても高精度な鉛バッテリの状態監視が可能となり、バッテリ上がり防止などに役立てることができます。

開発の背景

バッテリの内部抵抗(注1)は、バッテリの放電性能、劣化度を把握するために非常に重要な指標です。

従来、バッテリの内部抵抗は、エンジン(スターターモータ)始動時の電流、電圧応答から算出する方式が一般的でした。しかしながら、この方式では、エンジン停止時や、スターターモータを搭載していないEV/HEVでは鉛バッテリの内部抵抗を測定することができませんでした。

当社は、センサー内に放電回路を搭載し、センサーが制御するタイミングで、パルス状の放電を行い、この時の電流、電圧応答から内部抵抗を算出する技術を開発しました。本センサーを使用することで、世界で初めてエンジン停止時やスターターモータを搭載していないEV/HEV においても鉛バッテリの状態監視が可能となりました。状態監視技術について、グループ会社である古河電池㈱がバッテリで起こる現象に対する電気化学的ノウハウを活かし、高精度化を実現しています。

開発品の特長

鉛バッテリの高精度な状態監視が可能です。
パルス放電回路(注2)を内蔵しており、エンジン停止時、およびEV/HEV の補機バッテリ(注3)に対しても、エンジン再始動性能(SOF:放電能力)(注4)など、鉛バッテリの高精度な状態監視が可能です。
車両システム(注5)とは多重通信で接続します。
関連する特許も多数出願済、取得済(第4015128号、第4532416号、等)です。

将来への展開

状態検知センサーは、パルス放電による、内部抵抗とともに、バッテリの電圧、充放電電流、温度などを測定し、独自のアルゴリズムに基づいてバッテリ状態を検知し、車両システムへ出力します。

バッテリの状態を表す量には、車両の発電制御(注6)やアイドリングストップ機能(注7)に必要な「SOC(充電率)(注8)」や、その他「SOH(劣化度)(注9)」「SOF」などが用いられています。

現状では既に鉛バッテリのSOC、SOF検知が可能(注10)で、更にSOHの検知技術を開発中です。

今後、自動車の燃費改善やCO2削減のための発電制御やアイドリングストップ機能車への受注活動を行い、当面2015年までには世界シェアの10%以上の獲得をめざします。

補足

(注1) 内部抵抗
バッテリ内部の電気抵抗のことで、内部抵抗が大きくなると放電時に電圧が低下しやすくなります。一般的に劣化が進行すると内部抵抗は大きくなります。本文に戻る

(注2) パルス放電回路
バッテリの端子間にパルス状の放電電流を通す回路。負荷電流に依存せず、バッテリと本センサーのみで内部抵抗を測定することが可能です。本文に戻る

(注3) EV/HEV の補機バッテリ
現在のEV(電気自動車)/HEV(ハイブリッド車)には補機用に12V の鉛バッテリが搭載されており、電子制御ユニット(ECU)の電源として使用されています。補機バッテリがバッテリ上がりを起こすと電子制御ユニット(ECU)が起動できず、車両は始動できません。また、エンジン始動電流が発生しないので、負荷電流に基づいた内部抵抗測定は、原理的に不可能ですが、本センサーはパルス放電回路を持つので測定可能です。本文に戻る

(注4) SOF
State of Functionの略で、エンジン始動などを想定した規定の大電流放電時に、規定の電圧を維持できるかどうかの放電能力を表す指標です。本文に戻る

(注5) 車両システム
エンジンやオルタネータを制御する電子制御ユニット(ECU)などです。本文に戻る

(注6) 発電制御
オルタネータの出力を調節することにより、不要な発電を抑えて燃費を改善する技術です。バッテリの状態が検知できれば効果の拡大が期待できます。本文に戻る

(注7) アイドリングストップ機能
信号待ちなどの停車時に自動的にエンジンの停止、再始動を行うことで、CO2排出量を削減する技術です。バッテリの状態が検知できれば再始動不能などのトラブルを回避でき、効果の拡大が期待できます。本文に戻る

(注8) SOC
充電率を表す指標。State of Chargeの略です。本文に戻る

(注9) SOH
劣化度を表す指標。State of Healthの略です。本文に戻る

(注10) SOC、SOF検知が可能
バッテリメーカ、サイズなどに制約があります。

取得済特許の一部

特許第4015128号  充電率推定方法、充電率推定装置、電池システム及び車両用電池システム
特許第4532416号  バッテリ放電能力判定方法、バッテリ放電能力判定装置、及び電源システム


古河電気工業株式会社ホームページはこちら

キーワードをクリックして関連ニュースを検索

#古河電気工業
#センサ
#電池
#世界初/日本初/世界最高レベル
#2012年6月22日