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60GHzレーダーによる産業および車載マーケットの発展を考察する【日本テキサス・インスツルメンツ】
2020年9月23日
人が操作していた機械や乗り物が、ほんの数十年の間で自律的に動作する、もしくは人がほぼ介入する必要がないインテリジェントな機械へと置き換わりつつあります。こういった進歩にともない、産業および車載マーケットでは、ビルや街や自動車がその周囲を感知してよりスマートに判断を下せる革新的なセンシング・テクノロジが必要とされています。
エンジニアは、高分解能の検知能力、さまざまな環境に対応できる柔軟性、プライバシーを侵害しないといった、アプリケーションでミリ波(mmWave)レーダーによるセンシングを使用した場合のメリットを深く理解しようとしています。ミリ波センサは、高齢者モニタリングや、自動車の車室内モニタリング、ロボティクスなど、今後もさまざまなアプリケーションに組込まれていくでしょう。
周波数規制により、ミリ波レーダー・センサを利用するアプリケーションに制限が課せられる場合があります。欧州と中国では76~81GHz周波数帯を比較的自由に使用できますが、米国はこの帯域を先進運転支援システム(ADAS)アプリケーションに限定しており、人数計測、ロボティクス、交通監視などの産業用アプリケーションには60~64GHzを割り当てています。
規制により、どの周波数を製品に利用するかという課題が生まれます。異なる周波数帯で動作するレーダー・デバイスにピン互換性とソフトウェア互換性があれば、同時に複数の周波数帯で開発を行ったり、規制や展開先の要件に従って簡単に周波数を切り換えたりできる機能が実現します。周波数帯とは切り離してプリント基板や、電源テクノロジ、ソフトウェア・アルゴリズム、システム・アーキテクチャを構築した後に、アプリケーションや地域に応じてこれらのテクノロジを再利用してさまざまに展開できます。
TIのミリ波レーダー・センサ、『IWR6843 』(60~64GHz)と『IWR1843 』(76~81GHz)を用いれば、異なる周波数規制に柔軟に対応しながら開発を進めることができます。現在と将来のアプリケーションに対するマーケットや性能のニーズを予測できるようになるだけでなく、新たなマーケットの創造につながる可能性もあります。
自動車の車室内アプリケーションの場合、図1のような幼児置き去り検知や、ドライバー監視、乗員識別(子供か大人か)、よりインテリジェントなシートベルト・リマインダーといった最新のセンシング・アプリケーションに、ミリ波レーダー・テクノロジは最適です。最近、ヨーロッパ新車アセスメントプログラム(Euro NCAP)のロードマップに、幼児置き去り検知機能を標準装備する自動車メーカーには報奨金を出す ことが記載されました。ただし、Euro NCAPは具体的な周波数帯やテクノロジを示しておらず、どの周波数を使用するかは開発事業者と規制当局の判断に任せています。
図1:77GHzおよび60GHzレーダーの使用例(幼児の車内置き去り検知と居眠り検知)
最大限の安全規格のために、自動緊急ブレーキなどの機能を車に搭載することが必須になっていますが、自動車だけでなく図2のような無人搬送車(AGV)や自走するロボット、フォークリフトなどにも安全ソリューションを拡大しようと、多くの設計者が模索しています。北米のFCCは最近、AGVなどの「物品または人間を運搬する」機器を乗り物と定めました。つまり、自動車におけるADASと同様にAGVがセンシングにレーダーを使用する場合、これらのレーダー・システムも76~81GHzの周波数帯での動作が必須になるということです。ただし、北米以外では、AGVは60~64GHzの周波数帯を使用することになるでしょう。
図2:60GHzおよび77GHzの周波数帯を使用する産業用アプリケーションの例
TIのレーダー・センサについては、TI Resource Explorer に技術コンテンツ、リファレンス・デザイン、ソースコードのサンプルを幅広く用意しているので、新たにセンシング・アプリケーションを作成するエンジニアの習得の助けになります。60GHzと77GHzの間で柔軟に周波数帯を切り換えられることで、再利用できる設計が増え開発期間も短縮できると同時に、規制や展開する地域に関係なく新しいマーケットに向けた製品開発に安心して投資できるようになります
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※上記の記事はこちらの技術記事
(2020年8月2日)より翻訳転載されました。
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