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マテリアルズ・インフォマティクス技術を用いたゴム材料基盤技術の進化について【TOYO TIRE】
2020年4月22日
TOYO TIRE株式会社(本社:兵庫県伊丹市、社長:清水隆史)は、社会の要請に応える高性能なタイヤを開発、提供するために、独自のゴム材料開発基盤技術「Nano Balance Technology(ナノバランステクノロジー)」の技術革新を継続的に進めています。今回、当社はNano Balance Technologyの一環として、新たにマテリアルズ・インフォマティクス(以下、MI)※1を利用したゴム材料の特性予測技術や材料構造の最適化技術を開発しましたのでお知らせいたします。
※1)人工知能(AI)などを用いることで、従来手法に比べ、新規材料や代替材料の探索などを効率よく行なうことが可能となる技術。
(ゴムの材料構造に対する推測モデルの適用イメージ)
近年、材料開発のプロセスにおいてもAIや機械学習などが用いられ始め、MI技術によって、その領域の潮流は変わりつつあります。これまでは技術者の経験値と繰り返し実施する実験による試行錯誤のなかで新素材へのアプローチを行なってきたことから、開発には相当量の時間を要していました。
当社では、資産としてストックした既存データをベースに、2018年よりMI技術を用いた配合と物性の予測技術の検証を本格的に行なってきました。技術の精度を向上し、2019年には外部情報との紐づけといった対象データの拡大適用も検証できました。今後、保有データをフルに有効活用できる環境を整備するとともに、従来にない視点での解析方法や予測データを用い、開発を高度に最適化するMI技術を駆使した新素材の実現を進め、「高性能な製品開発」と「開発時間短縮・コスト低減」の両立を図ってまいります。
■データ資源を活用した配合開発
ゴム材料は主要原料であるポリマーに補強剤、各種薬剤が添加された複合材料です。いずれの薬剤も製品特性に直接作用するため、その種類や量、また、加工方法の調整による複雑な制御が必要とされます。今回、MI技術を導入して特性や配合の推測値を高精度に出力するシステムを構築したことにより、最小限のテストで効率的な材料開発が可能となります。システムには非線形推定モデル※2を実装しており、データベースに外部情報を取り込むことでこれまでの知見を超えた拡張予測を行ない、高性能材料の開発にも活用していきます。
※2)予測に使用する変数間の非線形な関係を関数としてモデル化したもの。
■新材料開発に向けたデジタル技術の利用
当社では、Nano Balance Technologyの「分析」の領域において、多様なツールを活用しながら、材料特性の要素を階層別に構造分析、あるいは評価し、開発上の課題を抽出しています。
取得した材料構造や化学構造はデータの次元が異なるため、これまでは主に間接的に特性を推測するための情報として活用してきましたが、今回、開発したMI技術を採用したことで、これら構造情報から材料特性の推測値を算出することができるようになりました。さらに、「目標とする特性値から構造を最適化する」という逆問題にも応用できることから、新材料の開発領域にも適用・拡大を進めていきます。
なお、これらの技術は、SAS Institute Japan株式会社(代表取締役社長:堀田徹哉)※3との協業で実現できました。
※3)革新的ソフトウェア/サービスを通じ幅広い産業にAIテクノロジーの活用や高度なIoTソリューションの導入を進めるアナリティクスのリーディング・カンパニー(https://www.sas.com/ja_jp/home.html)
当社では、独自のゴム材料基盤技術「Nano Balance Technology」とタイヤ設計基盤技術「T-MODE(ティーモード)」の両輪を基軸として確立し、双方を連携させて高性能・高品質な製品の開発を行なっています。また、タイヤそのものをセンシングデバイスとして活用していく可能性を追求し、将来のモビリティ社会に貢献できる付加価値の高い製品を創出していきたいと考えています。
今後、当社はゴム材料開発プロセスにおいてMI技術をフルに生かし、開発製品のさらなる価値の向上を図ってまいります。
□Nano Balance Technologyについて
Nano Balance Technologyは、「分析/解析/素材設計/加工」という4つの体系を横断的に統合し、ゴム材料をナノ(分子)レベルで観察、予測、機能創造、精密制御することによって、理想的なゴム材料開発を実現していく基盤技術です。
当社は、この技術を駆使し、乗用車用低燃費タイヤなどにも採用し、タイヤの転がりよさ(低燃費性能)と制動性(ウェットグリップ性能)といった二律背反する性能を高次元で両立するなど、より付加価値の高い商品群を提供しています。また、トラック・バス用タイヤにおいても同様に、Nano Balance Technologyの素材設計技術による発熱性に優れた配合の低燃費トレッドを採用した商品群の市場投入を行なっています。
【ご参考】
前述のとおり、当社はゴム材料基盤技術とタイヤ設計基盤技術の両輪を基軸に、自動車用タイヤの開発を進めています。今回のMI技術を採用したゴム材料基盤技術に先駆け、シミュレーション技術や新たなセンシング技術分野でもAIを駆使した技術革新を続けていますので、以下にご紹介します。
■新たに進化した「T-MODE」によるリアルタイムシミュレーション
(2019年7月9日発表:https://www.toyotires.co.jp/press/2019/190709_1.html
)
当社は、すでに20年前より確立していたタイヤ設計基盤技術をさらに進化させ、自動車用タイヤ開発プロセス「T-MODE」として体系化しました。
「T-MODE」ではSPDM※4を活用し、これまでのシミュレーションで蓄積したさまざまなデータを集約することに成功しました。また、今年2月には、これらのデータを活用し、設計仕様をインプットすれば、AI技術を介してタイヤ性能の予測値を瞬時に導き出すことができるという、画期的なリアルタイムシミュレーション技術を確立しました。
タイヤの設計仕様とタイヤ性能を横断する階層図を作成し、データサイエンスの手法を活用することによって、タイヤ設計仕様とタイヤ性能の関係の可視化に成功したものです。この関係に基づき、シミュレーションデータを題材として機械学習を実施したところ、短時間の計算で精度の良い予測が可能になりました。
※4)Simulation Process and Data Managementの略。各種データを一元管理し、標準化されたプロセスを共有できる基盤システム。
■「T-MODE」を生かしたスノー予測技術
(2020年2月25日発表:https://www.toyotires.co.jp/press/2020/200225.html
)
当社は、従来から特定の雪質(新雪・シャーベット)におけるスノートラクション性能の予測手法を確立していましたが、「T-MODE」の新たに進化したシミュレーション基盤技術を活用したことにより、実際の使用環境における雪質を考慮した「高精度なスノートラクション性能の予測」が可能になりました。
これにより、さまざまなタイヤの使用環境における駆動、制動時のブロックやサイプの変形の可視化に成功し、使用環境に適したトレッドパターンの検討を行なえるようになりました。
■TOYO TIREのタイヤセンシング技術コンセプト
(2020年2月7日発表:https://www.toyotires.co.jp/press/2020/200207.html
)
AIやデジタル技術を活用し、タイヤそのものがセンシングデバイスとして走行中の路面情報、あるいはタイヤ状態情報を検知し、リアルタイムで走行中のタイヤパフォーマンスを可視化する技術を開発しています。運転しているクルマのタイヤは画一的ではなく千差万別の使用履歴、性能状態を有しており、そのクルマにとって必要な情報は1台ずつ異なります。路面に唯一接するタイヤの役割が、新しいモビリティ社会で変わろうとしているなか、当社はオープンイノベーションで新たな価値創造に挑戦します。
(イメージ図)
【本件に関するお問合せ先】
TOYO TIRE株式会社 コーポレートコミュニケーション部
(本社) TEL:072-789-9110 FAX:072-773-3272
(東京) TEL:03-5822-6621 FAX:03-3865-2240
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