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最高性能の前方レーダーでビジョン・ゼロを現実のものに【日本テキサス・インスツルメンツ】

2020年4月6日

この数年間、ヨーロッパ新車アセスメント・プログラム(Euro NCAP)2025の「交通安全プロジェクトビジョン・ゼロ運動 」と、消費者向けファイブスター安全等級評価という、2つの大きな力が後押しして、先進運転支援システム(ADAS)の普及が進んでいます。

ビジョン・ゼロ運動のため、自動車メーカーは車の乗員だけでなく歩行者の安全にもより注目し、可能な限り最高のテクノロジをすべての国で提供するという、難しい課題に直面しています。OEMは、安全規格試験の評価を重視しています。これは、消費者に車種をどれだけアピールできるか直接影響すると考えられるためです。

そのため、自動緊急ブレーキ(AEB)、自動緊急操舵(AES)、自動クルーズ・コントロール(ACC)、前方衝突警告(FCW)などの、主要な安全対策の重要性が増しています。ADASの開発ペースが加速するにつれ、車の安全等級評価にもADASや衝突回避テクノロジがますます含まれるようになってきています。

AEB、AES、ACC、FCWといったシステムの安全対策の性能は、使用するセンサがどのような種類でどれくらい複雑かによって決まります。OEMとティア1サプライヤ各社は、このような機能に使用するセンサ類、特に、レーダー・センサがNCAP試験に求められる厳格な要件を確実に満たすことを、非常に重視しています。

TIは、第2世代フロント・レーダーTIミリ波センサである『AWR2243 』を加えることで、レーダーの豊富なポートフォリオを拡充します。ビジョン・ゼロの優先課題の達成に近づくことを目的に、『AWR2243 』を採用する設計では、次のようなADASシステムが実現します。

・優れた送信出力(13dBm)、ノイズ指数(12dB)、位相ノイズ(-97dBc/Hz)により、
 感知距離が車から最大220mまでに拡大
・位相ノイズ特性のダイナミック・レンジが向上し、近距離の大小の対象物を識別
・柔軟で自律的にプログラムされたチャープ変調を2,000以上も使用し、
 ビーム方向調整やDDMA(Doppler division multiple access:ドップラー分割多元方式)
 のような先進機能を提供
・フロント・レーダー設計に加え、『AWR2243 』のバンパー裏の性能と
 マルチチップ・カスケード機能を使用することで、研究開発成果を車両全体に展開

 

 

それでは、新しいNCAP安全規格がより厳しくなった結果、フロント・レーダー・センサの性能強化が必要になる領域を詳しく見ていきましょう。『AWR2243 』には優れた無線周波数(RF)性能と豊富な機能セットがあるため、自動車メーカーは、目的とするファイブスター安全規格を獲得しやすくなります。これらの機能の性能は、図1のAWR2243BOOST 評価モジュールを使用して評価することができます。

図1:AWR2243BOOST 評価モジュール

正面衝突回避
車のAEBシステムは、正面衝突が起きそうなことを見極め、ブレーキとステアリングのシステムを連動させて、他の道路利用者を巻き込む事故を防止するように作動します。アメリカ自動車協会(AAA)が行ったある研究 でも、時速20マイル(32キロ)で走行する車にはねられた歩行者が重傷を負うまたは死亡するリスクは18%になることが示されています。走行速度がほんの10マイル(16キロ)上がって時速30マイル(48キロ)になると、リスクは47%と倍以上に増えます。送信出力13dBmとノイズ指数12dBの『AWR2243 』のリンク・バジェットのおかげで、自動車メーカーは、視野角(FoV)の広さを維持したまま、歩行者などの交通弱者を220メートル以上も遠方から認識できるフロントエンド・システムを設計することが可能になります。

横断と方向転換の操作
交差点で発生する横断と方向転換の操作では、視認性の欠如や、ドライバーの不注意、方向転換時にドライバーが前方から来る交通の確認を怠ったりすることにより、別の車や歩行者と衝突する危険性が生じます。『AWR2243 』の5.6度分解能位相シフタによるビーム方向調整機能により、レーダーが道路を探査し、差し迫った危険を認識し、必要であればAEB機能を作動させることが可能になります。この高分解能位相シフタにより、時分割多重化MIMO(複数入力/複数出力)に比べて良好な角分解能と同時に信号対雑音比が高い、DDMA MIMOのような複雑なチャープ変調が容易になります。

夜間走行
いくつかの研究で、視界が限られる夜間走行時にはAEBシステムの効果が著しく低下することが分かっています。例えば、AAAの試験によると、夜間の場合、試験対象のAEBシステムはどれも、大人の歩行者を検出したりそれに反応したりすることができませんでした。夜間の視認性が低下するカメラを補うには、カメラとレーダー・センサのセンサ・フュージョンが有効です。

図2:TIミリ波センサのカスケード接続イメージング・レーダーRF評価モジュール

静的物体を検出するため、図2のようにAWR2243 センサを複数カスケード接続することで、FoVの拡大、距離の延長、角分解能の向上が得られます。カスケード接続センサを使用するイメージング・レーダー・システムにより、4つの面(距離、速度、方位、仰角)から周辺の世界を「見る」ことができるようになり、AEBとAESのシステムの効果が著しく改善します。優れた干渉検出および軽減機能を含め、先進的かつ自律的な自己診断機能によっても、自動車メーカーを支援して機能安全性が保証されたシステムを実現します。

まとめ
第1世代の『AWR1243 』と完全互換性がある『AWR2243 』がTIのミリ波センサの豊富なポートフォリオに加わることは、様々な利点があります。RF互換性があり、第1世代のミリ波リンク・アプリケーションのプログラミング・インターフェイス命令を維持するので、ポートフォリオ内のさまざまなデバイス間でスムーズに移行できます。フロント・レーダー・アプリケーションの厳格なEuro NCAP規格への対処に、『AWR2243 』の高いRF性能と豊富な機能セットが役立つでしょう。 シングルチップAWR2243第2世代76GHz~81GHz高性能車載MMIC評価モジュール およびmmWaveカスケード・イメージング・レーダーRF評価モジュールは、どちらも供給中です。魅力的なフロント・レーダー・センサの世界に向かって迅速に設計を開始していただけます。

参考情報
AWR2243 』をイメージング・レーダー向けにカスケード接続する方法
車載用ミリ波センサ mmWave AWR – アプリケーション
技術記事 “イメージング・レーダー:自動運転の広範なニーズを単独で満たすセンサ
Smart Radar Systemsによるコンテンツ 2-chip and 4-chip cascade imaging radar driving demo (英語)

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※上記の記事はこちらの技術記事 (2020年3月25日)より翻訳転載されました。
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