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全固体ポリマー電池用電解質膜の高性能化に成功【日本触媒】

2020年2月13日

 株式会社日本触媒(本社:大阪市中央区、社長:五嶋祐治朗、以下「日本触媒」)は、全固体リチウムポリマー電池(図1)用電解質膜の高性能化に成功しました。ポリマー電解質を用いた全固体電池は、有機溶媒を用いず高温で安定なことから、長寿命、高安全性などの特徴を有していますが、ポリマー電解質はリチウムイオンの伝導性に乏しいことから、電池温度を50℃以上に加温する必要がありました。今回開発した新規電解質膜は、室温でも高いリチウム伝導性を有することから、電池の作動温度を室温近くまで下げることが可能になり、全固体ポリマー電池の新しい用途展開が期待できます。

図1 全固体ポリマー電池の構成

 日本触媒は、ポリエチレンオキシドを主骨格とするリチウムポリマー電池用の固体電解質を開発し、2013年頃から商業生産を開始しました。一般的に、ポリエチレンオキシドのポリマー電解質は、リチウムイオン電池の非水電解液と比較するとイオン伝導度が1桁以上低く、さらにリチウムイオン輸率※1が0.1~0.2と低いことから、室温ではリチウムイオンが電解質中を動く速度が非常に遅くなります。そのため、安定した性能を得るためには、電池を50℃以上に加温し、リチウムイオンを動きやすくする必要がありました。

※1 イオン伝導度は、電解質膜中を流れることのできる全てのイオン(アニオンとカチオン)の伝導度を示し、イオン伝導度の内、リチウムイオンが担う割合のことをリチウムイオン輸率という。

 ポリマー電解質のリチウムイオン輸率を向上させる取り組みは多数報告されていますが、その多くはイオン伝導度を低下させてしまうため、総じて性能を改善するには至っていません。当社は、ポリマー電解質の高性能化を実現するために、当社が独自に開発した新しいイオン伝導のメカニズムを取り入れました。電解質膜中のリチウムイオンを伝搬しやすくした新規電解質膜は、ポリエチレンオキシド系電解質膜と比較すると、同等のイオン伝導度を有しながら、リチウムイオン輸率を5倍以上向上させることに成功しました(表1)。

表1 イオン伝導度とリチウムイオン輸率

 新規電解質膜は、リチウム金属に対しての安定性と、4V級正極活物質でも充放電できる耐酸化還元性を有しています。

 本技術を用いて作製したラミネート型全固体リチウムポリマー電池は、ポリエチレンオキシド系のポリマー電池と比較して、40℃では2倍以上、25℃では5倍以上の放電特性が得られます。性能が飛躍的に向上したことで、従来の全固体ポリマー電池と比較して、充電時間の短縮や、エネルギー密度の向上、電池を加温するための熱源を減らせるなど、多くの改善効果が見込めます。

 本技術は、全固体ポリマー電池用の電解質膜として、さらには無機電解質の界面形成材などへの活用も目指して、サンプル出荷を進めて用途開拓を行います。

 今回の研究成果を2月26日(水)~28日(金)に東京ビッグサイト(青海展示棟)で開催される国際二次電池展の当社出展ブースにて展示いたします。

日本触媒について:
1941年の創業以来、自社開発の触媒技術を核に事業を拡大。酸化エチレンやアクリル酸、自動車用・工業用触媒などを世の中に送り出し、現在では紙おむつに使われる高吸水性樹脂で世界1位のシェアを誇っています。日本触媒は「テクノロジー(技術)」を通じて「アメニティ(豊かさ)」を提供する、という企業理念「TechnoAmenity」のもと、グローバルに活動する化学会社です。
https://www.shokubai.co.jp


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