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「SiC高品質薄板化エピウエハ」の製品開発に成功【NEDO】

2016年4月14日

「SiC高品質薄板化エピウエハ」の製品開発に成功
―東洋炭素が製品化、サンプル供給を開始―


NEDOプロジェクトにおいて、東洋炭素㈱と関西学院大学は、コア技術の「Si蒸気圧エッチング技術」を用いた「SiCウエハの平坦表面処理技術」を完成、従来の処理法に比べて欠陥を1/20に低減しました。さらに、この「Si蒸気圧エッチング技術」を応用することで、ウエハ薄板化加工も容易となり、高品質薄板化SiCエピウエハの製造を可能としました。この技術を用いることでSiCデバイスの実用化が加速、自動車や機器の省エネ化を可能にします。
東洋炭素㈱は、これらの開発技術を統合して、量産製造装置の導入、製品化し、特定顧客へ「高品質薄板化SiCエピウエハ」のサンプル供給を開始しました。


図1 従来工程フローおよび新規「SiCウエハの平坦表面処理技術」工程フロー

1.概要

半導体SiCによるパワーデバイスは、半導体Siに比べ優れた電気的特性を持ち電力変換に伴う損失の大幅な低減を可能とするため、自動車に搭載することで燃費を約10%改善することが期待されています。しかしながら、SiCは研磨が非常に難しく、たとえ見かけ上、平坦な表面を機械研磨により形成しても表面加工歪層が導入されてしまい、結晶のエピタキシャル成長時に新たな結晶欠陥を導入することがある点が高品質ウエハを安定供給する上での課題でした。
NEDOのプロジェクト※1において、東洋炭素㈱と関西学院大学(金子忠昭 理工学部教授)は、「Si蒸気圧エッチング法」をコア技術とした独自のSiCウエハの平坦表面処理技術を開発、当該技術を用いることで、従来のCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理SiCエピウエハ※2に内在している加工歪/潜傷の除去を可能としました。その結果、当該技術で処理を行ったSiCエピウエハは、従来法に比べてエピ欠陥※3が1/20に低減されることが確認され、高品質SiCエピウエハの製作が可能となりました。
さらに、当該処理技術は、熱化学エッチングであり、機械研磨により発生する加工歪/潜傷が原因で割れることもないため、ウエハ薄板化加工も容易となり、高品質薄板化SiCエピウエハの製造も可能となりました。
東洋炭素㈱では、量産製造装置の導入を行い、特定顧客へ高品質薄板化SiCエピウエハのサンプル供給を開始しました。

2.今回の成果

(1)Si付与TaC※4/Taルツボ(製品名:EVEREDKOTE-K)を用いた「Si蒸気圧エッチング技術」によるSiCウエハの平坦表面処理技術の開発
「Si蒸気圧エッチング技術」は、東洋炭素㈱が製造を行っているTaC/Taルツボの内壁にSiソースを付与し、そのルツボの中にSiCウエハを配置し、高温真空炉にて加熱を行うことで機能を発揮させます。ルツボ内部では、Si蒸気とSiCウエハ間で熱化学反応(SiC(s)+Si(g)→Si2C(g)↑)が起こり、SiCウエハ表面がエッチングされて平坦化されます(図2)。
そこで、当該技術で表面処理を行ったSiCエピウエハとCMP処理SiCエピウエハの品質比較を行うため、1900℃の環境で熱処理を行い、加工歪/潜傷の出現実験を行いました。当該技術で表面処理を行ったSiCエピウエハは、従来品と比較して加工歪/潜傷が内在していないことが確認されました(図3)。このことより、当該処理を行ったSiCウエハの方が高品質であることが実証されました。


図2 Si付与TaC/Taルツボ模式図

図3 潜傷出現確認1900℃熱処理(顕微鏡観察)


(2)薄板化SiCウエハの開発
「Si蒸気圧エッチング技術」を応用して、SiCウエハの薄板化の開発を行いました。当該技術は、熱化学エッチングであり、機械研磨により発生する加工歪/潜傷が原因で割れることもなく、容易に薄板化ウエハの加工を可能としました。そこで、当該技術薄板化ウエハと機械研磨薄板化ウエハの強度の比較を行うと、当該技術薄板化ウエハの強度が一桁高いことが明らかとなりました(図4)。その品質がデバイス処理工程に耐えうる強度であることが明らかとなり、今後のデバイスの工程短縮ならびにコストダウンに一躍を担う技術として期待されます。


図4 ウエハチップ曲げ強さのワイブルプロット


【用語解説】
※1 NEDOプロジェクト
    名  称 : 戦略的省エネルギー技術革新プログラム/実用化開発フェーズ/CMP-free超高温安定化EPI-
         readySiCナノ表面制御プロセスの開発
    期  間 : 2012~2014年度
    参加機関 : 東洋炭素㈱、関西学院大学
※2 SiCエピウエハ
    シリコンカーバイド(炭化ケイ素)。ケイ素と炭素の化合物で、これを用いて作った半導体デバイスと従来のシリ
    コン半導体デバイスを比べると、内部の電力損失が1/100と小さく、高い周波数・高い温度で使用することがで
    きる。
    通常、研磨されたSiCウエハ表面に、CVD法(化学気相合成法)などにより高品質結晶膜(エピ膜)を成長させ
    て形成される。SiCデバイス作製に必要となる厚みと不純物濃度が制御されたエピ膜が堆積されたウエハのことで
    ある。
※3 エピ欠陥
    デバイス歩留りを低下させるエピ
    タキシャル成長プロセスで発生する欠陥。ウエハ中の欠陥に起因する欠陥とエピタキシャル成長プロセスに起因
    する欠陥が存在する。
※4 TaC
    タンタルカーバイド(炭化タンタル)。タンタルと炭素の化合物で、化合物の中で最も融点が高い材料(融
    点:3880℃)である。

3.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 省エネルギー部 TEL : 044-520-5281
東洋炭素㈱ 広報・IR TEL : 06-6472-5815 E-mail : info@toyotanso.co.jp

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 TEL : 044-520-5151 E-mail : nedo_press@ml.nedo.go.jp








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