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ナノアロイ®技術により高耐熱性と靭性を兼ね備えたPPS樹脂を創出【東レ】
2016年1月12日
東レ㈱（本社：東京都中央区、社長：日覺 昭廣）はこのたび、ポリフェニレンサルファイド樹脂（以下「PPS樹脂」）が本来有する高い耐熱性や機械強度を維持しながら、PPS樹脂の長年の課題であった靱性（しなやかさ）を飛躍的に向上した高性能PPS樹脂の開発に成功しました。本開発品は、2種類以上の樹脂をナノメートルオーダーでアロイ化（混合）する当社独自のナノアロイ®技術により実現したものです。今後1年以内の本格販売を目指し、自動車をはじめとする幅広い工業材料分野に向けて用途開発を進めてまいります。
PPS樹脂は、その優れた性能と、他のスーパーエンジニアリングプラスチックに対するコスト優位性から、五大エンプラに次ぐエンジニアリングプラスチックとして様々な用途に使用されています。一方で、他のスーパーエンジニアリングプラスチックに比べると靭性に課題があり、その展開には制約がありました。
樹脂特性を改質する方法としては、2種類以上の樹脂をアロイ化する方法が広く用いられていますが、PPS樹脂のアロイ化は技術的に難度が高く、靭性の改良には比較的反応が容易な柔軟ポリオレフィンをアロイ化する方法がほぼ唯一のものでした。しかし、ポリオレフィンはPPS樹脂に比べて耐熱性が低く、アロイ化によってPPS樹脂本来の耐熱性を低下させてしまう問題がありました。
これに対して東レは、PPS樹脂本来の特長と靭性の両立を目指し、PPS樹脂よりも高い耐熱性と靭性を持つ他樹脂との新たなアロイ化技術の開発に取り組みました。従来、PPS樹脂と他樹脂とのアロイ化は、マイクロメートルオーダー程度の分散構造が限界でしたが、PPS樹脂とアロイ成分を化学的に結合するようにポリマーを設計するとともに、溶融混練する際に化学反応を促進するコンパウンド技術を追求することで、PPS樹脂中にアロイ成分を10～200nmオーダーでナノ分散化させることに成功しました。
このナノアロイ®技術による新規PPS樹脂は、PPS樹脂本来の高い耐熱性や強度、剛性を維持しつつ、従来の柔軟ポリオレフィンアロイに比べて靱性が約2倍向上しました。また、200℃での長期処理後にも脆性的な破壊は認められず、高温での連続使用時耐久性にも優れます。さらに、靱性とは相反する特性であるクリープ変形量の抑制も実現しました。
本開発品は、高度化する顧客の要求特性に応えることが可能になるとともに、PPS樹脂よりも耐熱性の高いスーパーエンジニアリングプラスチックの領域への展開も期待できます。今後、使用環境がますます厳しくなるエンジン、モーター周辺部材を中心とした自動車用途をはじめ、電気・電子、住設などの幅広い工業材料分野に向け、展開を加速してまいります。
※ナノアロイ®は、東レ㈱の登録商標です。
ナノアロイ®に関する詳細はこちら → http://www.nanoalloy.jp/
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