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希土類磁石スラッジリサイクルを開始【日立金属】

2015年7月23日

希土類磁石スラッジリサイクルを開始
環境親和型リサイクル方法で国内でのサプライチェーンを構築


日立金属㈱(以下 日立金属)は、Nd-Fe-B系焼結磁石(以下 希土類磁石)の生産過程で発生する加工くず(以下スラッジ)※1から、希土類元素と鉄を回収できる環境親和型リサイクル方法(以下 炭素熱還元法※2)を用いた国内でのサプライチェーンを構築し、リサイクルを量産規模で開始しましたので、お知らせいたします。

1. 背景

希土類磁石は、高効率化、軽量化が求められる自動車、産業機械、電機・電子機器のモーターなどに使用されています。省エネルギー化が進められる中で、今後も希土類磁石の使用が増え、生産量の増加が見込まれます。それに伴い、原材料である希土類元素の使用量が増加し、一方で、生産過程で発生する希土類元素を含むスラッジが増加します。増加するスラッジから炭素熱還元法で希土類元素を回収し、リサイクルを行えば、天然鉱山由来の希土類元素の調達量を減らせるとともに環境への負荷の低減が可能になります。

2. 炭素熱還元法について

スラッジには希土類元素が含まれるため、再生用資源として輸出したり、国内のリサイクル工場に委託したりして、リサイクルを行ってきました。しかし、従来の回収方法である湿式法※3では、多量に、酸、アルカリを使用する上にホウ素を含有する廃水が生じるなど、環境への負荷の懸念がありました。また、希土類元素の回収後の残渣(残りかす)には、鉄分が多く含まれる(スラッジ固形分10トンに対して約7トン)にもかかわらず、利用されずに産業廃棄物として埋め立て処理となっていました。
そこで、日立金属は、酸やアルカリの使用を極力減らし、環境への負荷を抑えた環境親和型の方法で、希土類元素を高い回収率で回収するだけでなく、鉄分を銑鉄(有価物)として再利用することができる炭素熱還元法を世界で初めて開発※4しました(2014年3月発表済)。その後、量産規模での導入に向けた検討を進めてまいりました。

3. 開始したリサイクルの概要

日立金属は、炭素熱還元法による希土類元素の回収率が、量産規模においても、従来の湿式法に比べて高くなることを確認しました。また、鉄分も銑鉄として再利用できる品質となりました。
そこで、炭素熱還元法によるスラッジの処理を委託会社が実施する形で、国内で希土類元素をリサイクルするサプライチェーンを構築し、希土類磁石の生産を開始しました。
さらに、炭素熱還元法は、スラッジだけでなく市中から回収された廃磁石にも適用可能であることも確認できたため、今後は、廃磁石も含めたリサイクルの拡大に取り組んでまいります。



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ご参考
※1 加工くず(スラッジ)
希土類磁石は粉砕,焼結,熱処理,加工,表面処理の工程を経て製造されるが、焼結や熱処理を行うと寸法にズレが生じるため加工による修正が必要となる。磁石の小型化や生産量の増加によって加工くずの量は増大する傾向にある。
加工は、水(研削液)を磁石に掛けながら行うため、スラッジは、加工くずと水が混ざった泥状の物質である。

※2 炭素熱還元法
酸化物を炭素源が存在する状態で高温に加熱すると還元反応が起こる原理を利用した方法。主に酸化鉄からなる鉄鉱石から銑鉄を得る方法として、直接還元製鉄法が近年注目を浴びている。この直接還元製鉄法の応用技術をここでは炭素熱還元法と呼ぶ。
具体的には、焼成スラッジ(水と加工くずからなるスラッジを沈降処理により濃縮後、炉で加熱し酸化させたもの)を鉄鉱石に見立てて炭素とともに加熱することによって、希土類元素をスラグ(スラッジ上に浮上する物質)として回収します。希土類元素抽出にかかる時間が従来の湿式法に比べて短く、収率も高くなることを確認しています。
残った鉄くず(酸化鉄)は、再利用可能な銑鉄となります。また、炭素熱還元法は酸による抽出ではないため、酸の使用をホウ素抽出時のみに減らすことが可能であり、環境への負荷が低減されます。

※3 湿式法
スラッジを酸化し、鉄を酸に溶けにくい状態にした後、酸に溶けやすい希土類元素のみを抽出する方法。回収物への鉄の混入を低減させることが可能だが、酸化鉄が溶出しないことによって希土類元素と酸の接触面積が減少するため、希土類元素の回収率は低下する。
抽出のために酸を使用し、廃水はアルカリで中和処理するため、酸・アルカリを多く使用する。また、希土類元素の分離過程で酸化鉄が廃棄物として発生し、さらに有害物質であるホウ素を含有する廃液も排出される。

※4 世界で初めて開発
日立金属の調査に基づく。炭素熱還元法を用いた希土類磁石スラッジのリサイクル方法について特許取得済み。








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