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優れた力学特性と3次元成形性を両立する新規プリプレグシートを開発【東レ】

2015年3月4日

東レ㈱(本社:東京都中央区、社長:日覺 昭廣、以下「東レ」)は、この度、従来の一方向連続繊維を用いたプリプレグ(UDプリプレグ)と同等の力学特性を維持しながら、複雑形状への優れた成形性を達成した新規プリプレグシート UACS(Unidirectionally Arrayed Chopped Strands)を開発しました。本開発品は、UDプリプレグに特定のパターンで切込を挿入することで、一方向に所定の繊維長の繊維束が制御されて配列したシートです。板金加工では実現できない急激な凹凸変化を有する3次元形状を成形できることから、幅広い用途への展開が期待されます。今後、早期の量産化技術確立に向けて開発を加速してまいります。

UDプリプレグは、炭素繊維を一方向に配列させ、最小限の熱硬化性樹脂を含浸して一体化した材料です。炭素繊維の“軽い、強い、錆びない”といった特徴を最大限に発揮できることから、既に航空機をはじめ、自動車や自転車、スポーツ用品、電気機器など、様々な用途において高機能構造材として採用が広がっています。一方で、UDプリプレグを用いて3次元の複雑な形状をした部材を成形する場合、繊維が角部で突っ張るため、シートの形状が追従せずにシワや空隙、樹脂溜りといった不具合が発生しやすく、成形できる形状に制約がありました。
形状追従性を高めるには炭素繊維を織物に加工する方法がありますが、UDプリプレグに比べると物性や表面の平滑性に限界がありました。また、急激な凹凸変化に対応できる材料として、射出成形に用いられるペレットや、繊維束をランダムに分散させて樹脂を含浸させたSMC(Sheet Molding Compound)が知られていますが、UDプリプレグよりも繊維含有率が低く、あらかじめ切断した繊維を用いるため、強度や弾性率などの力学特性が十分に得られない傾向にあります。

これに対して東レは、従来トレードオフの関係にあった力学特性と成形性の両立を目指し、UDプリプレグに特定のパターンで切込を挿入することで、一方向に所定の繊維長の炭素繊維束が制御されて配列した新規プリプレグシート UACSを創出しました。本開発品は、成形時に繊維束が規則正しく流動することによって均質な積層構造を保ったまま、リブや深絞りなどの複雑形状にも追従できる伸長性を有します。同時に、特殊な切込パターン設計によって成形品とした際の表面品位および弾性率は従来のUDプリプレグ対比で同等、強度は80%以上を達成しました。
本開発品は従来プリプレグと同様に、適切な形状に裁断、積層した後、成形することで炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製品とすることが可能です。また1枚1枚型に沿わせながら積層する必要はなく、あらかじめ平板状に積層したシートを型に押し付けるだけで、3次元の複雑な形状を高効率に成形できます。
炭素繊維の優れた力学特性と、デザイン自由度の高い製品にも対応できる成形性を兼ね備えた革新素材として、航空機をはじめとする幅広い用途に向けて提案してまいります。

東レは、炭素繊維の世界トップメーカーとして、高性能・高品位なPAN系炭素繊維 トレカ®ならびに炭素繊維樹脂含浸シート トレカ®プリプレグを長期継続研究、グローバル展開しています。今後もコーポレートスローガンである“Innovation by Chemistry”のもと、お客様に新しい価値を提供する革新素材の開発を推進してまいります。








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