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業界最小※1 低損失のSiCパワーモジュールを共同開発【パナソニック】
2015年3月4日
業界最小※1 低損失のSiCパワーモジュールを共同開発
~産業用の高耐圧インバータや電源の小型化と長期信頼性向上を実現~
パナソニック㈱(以下、パナソニック)と㈱ 三社電機製作所(以下、三社電機)は、パナソニックのSiC(炭化ケイ素)パワートランジスタ [1]技術と三社電機のパワーモジュール[2]工法により、複数のSiCトランジスタを組み込んだ、業界最小※1のSiCパワーモジュールを共同開発しました。
パワーデバイスは車載や産業応用分野において低電圧から高電圧に至る様々な用途で使用されています。その中でSiCパワーデバイスは、従来のSi(シリコン)パワーデバイスを超える低損失動作を実現できるため大電流・高電圧用途での省エネルギー化のキーデバイスとして注目されています。本開発により、低損失なスイッチング動作が可能となり、機器の省エネルギー化を実現すると共に、パワーデバイスと放熱器を大幅に小型化でき、機器の設計自由度を向上します。本開発のパワーモジュールは、大規模太陽光発電で使用されるパワーコンディショナーや鉄道の動力用インバータ[3]などに適用できます。
本開発のSiCパワーモジュールは、以下の特長を有しています。
1. 新たなSiCパワートランジスタ構造とモジュール工法の採用によりパワーモジュールの小型化とオン抵抗[4]の低減を実現
・ モジュール体積を約2/3※2低減、実装面積を約30%※2低減、オン抵抗を150A時6mΩに低減
2. 多くの通電回数に対して特性変動を抑え、長期信頼性を実現できるパワーモジュール工法を採用
・ パワーサイクル耐量:従来品比約3倍※3
本開発は、以下の技術により実現しました。
(1)ダイオード[5]機能を内蔵することで、従来はトランジスタに並列に接続されていた外付けダイオードを不要にできる、パナソニック独自のDioMOS(Diode integrated MOSFET)トランジスタ技術
(2)はんだを用いた接合金属でトランジスタを挟み込む構造により、トランジスタを接続するためのワイヤボンディング[6]を不要にすることで長期信頼性を実現する、三社電機独自のテクノブロックパッケージ技術
本開発は、2015年3月15日~19日に米国シャーロット市で開催されるThe Applied Power Electronics Conference and Exposition 2015(APEC2015)にてパナソニック、三社電機それぞれのブースで展示されます。
※1 : 耐圧1200Vのパワーモジュールとして。2015年3月4日現在、当社調べ。
※2 : 三社電機従来品(GCA200EA60)と本開発モジュールとの比較。
※3 : 三社電機従来開発品と三社電機のテクノブロック技術採用モジュールとの比較。
【特長の説明】
1. 新たなSiCパワートランジスタ構造とモジュール工法の採用によりパワーモジュールの小型化とオン抵抗の低減を実現
パナソニック独自のSiCパワートランジスタ構造であるDioMOS (Diode integrated MOSFET)はダイオード機能を内蔵しており、従来トランジスタでは並列に外付されていたダイオードを不要にできます。これにより、モジュールの実装面積を約30%※2低減しました。加えて、SiCチップとモジュールの入出力端子を直接接続する三社電機独自のモジュール工法であるテクノブロックパッケージ技術を採用することで、ワイヤボンディングが不要となり低背化を実現、モジュール体積を従来の約1/3※2に低減しました。DioMOS構造を採用することにより、オン抵抗を150A時6mΩに低減し、低損失動作を可能にしました。
2. 多くの通電回数に対して特性変動を抑え、長期信頼性を実現できるパワーモジュール工法を採用
テクノブロックパッケージ技術ではSiCチップとモジュール入出力端子の接合にダメージの少ないはんだ付けを採用しており、長期信頼性を実現しました。
【内容の説明】
1. ダイオード機能を内蔵することで、従来はトランジスタに並列に接続されていた外付けダイオードを不要にできる、パナソニック独自のDioMOSトランジスタ技術
従来のSiCパワートランジスタ構造に、極薄で低抵抗な導電性チャネル層(SiCエピタキシャル層[7])を追加することで、トランジスタ構造において、低電圧で逆方向電流を流すことが可能となりました。従来、SiCパワートランジスタにおいて逆方向電流を流そうとした場合は、立ち上り電圧が2.5V程度と高いために、外付けで立ち上がり電圧の低いダイオードを接続する必要がありましたが、本開発により低電圧で逆方向電流を流すことが可能となり、外付けダイオードが不要となりました。さらに導電性チャネル層の設計を改善することで、オン抵抗を150A時6mΩに低減しました。パワーモジュールに使用するSiCチップ面積を半減できるので、モジュールの実装面積として約30%※2低減できました。
2. はんだを用いた接合金属でトランジスタを挟み込む構造により、トランジスタを接続するためのワイヤボンディングを不要にすることで長期信頼性を実現する、三社電機独自のテクノブロックパッケージ技術
従来のモジュール工法では、トランジスタの表面電極とモジュールの内部配線をワイヤボンディングで結線しており、内部配線が複雑になっていたため、低背化、小型化に限界がありました。テクノブロックパッケージ技術では、トランジスタの表裏面電極にいずれもはんだ接合を採用しており、モジュールの内部配線を簡素化することで、従来比約1/2※2の低背化に成功しました。また、ワイヤボンディング工程を無くすことでワイヤボンディングに起因する機械的ダメージや電流集中のストレスを抑制し、長期信頼性の確保が可能となります。
【暫定仕様】
【用語の説明】
[1] SiCパワートランジスタ :
炭化ケイ素を材料とする半導体素子であって、高耐圧用途に使用される。
[2] パワーモジュール :
複数のパワー半導体素子を一つのパッケージに封止したデバイスを指す。
[3] インバータ :
直流を交流に変換する回路。モータの駆動などに広く使われている。
[4] オン抵抗 :
デバイスをオン状態(導通状態)にした場合の、ソース電極・ドレイン電極間抵抗のこと。オン抵抗が低いパワーデバイスを用いて電力変換すると電力損失が小さくなる。
[5] ダイオード :
電流を一方向に流すことができる半導体素子。モータなどをインバータで駆動する場合、トランジスタに逆並列に接続することで、誘導性負荷に蓄えられたエネルギーによって発生する高電圧からトランジスタを守るためにエネルギーを放出する。
[6] ワイヤボンディング :
半導体素子の配線として、デバイス表面電極と配線パターンとを接続するワイヤのこと。一般的にワイヤを表面電極に押し付けて超音波振動させ、そのエネルギーで接合する。
[7] SiCエピタキシャル層 :
原料ガスの反応によりSiC結晶を成長させて得られた層のことを指す。
プレスリリースの内容は発表時のものです。
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