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鉛フリー圧電薄膜を用いた3軸角速度センサーの開発に成功【日立金属】
2014年10月21日
日立金属㈱(本社:東京都港区、会長:小西 和幸、以下 日立金属)と㈱ワコー(本社:埼玉県上尾市、社長:岡田 和廣、以下 ワコー)は、このたび、鉛フリー圧電薄膜を用いた3軸角速度センサーの開発に成功いたしました。地球環境保全に向け、デジタルカメラの手振れ検知や自動車の姿勢検知などに用いられる角速度センサーの鉛フリー化の進展が期待されます。
1. 背景
圧電薄膜は、加えられた圧力を電圧に、また加えられた電圧を圧力に変換する圧電効果を持つ圧電体を薄く形成したもので、一般的にチタン酸ジルコン酸鉛※1(以下、PZT)という鉛を含んだ材料が使われております。現在、自動車の姿勢検知やデジタルカメラの手振れ検知に利用される角速度センサーやインクジェットプリンタヘッドに広く使われており、今後は、プロジェクタやヘッドアップディスプレイに利用されるMEMSミラー素子※2やエナジーハーベスタ※3など用途拡大が見込まれています。
近年、地球環境保全への意識の高まりから鉛フリー対応が求められております。しかしながら、鉛フリーの材料を用いた圧電薄膜では、充分な圧電特性※4を満たすことは難しく、また微細加工が難しいことが課題となっておりました。
2. 概要
このたび日立金属とワコーは、鉛フリー圧電薄膜を用いた3軸角速度センサーの開発に成功しました。鉛フリーの圧電材料として、環境親和性に優れたニオブ酸カリウムナトリウム※5(以下、KNN)を選定しており、PZT薄膜センサーと同等レベルの角速度検知特性を実現しております。今回の開発では、日立金属が圧電薄膜製膜からセンサー素子作製までの工程を担い、ワコーが素子設計およびセンサー特性評価を実施しております。
日立金属は、2010年(当時は日立電線株式会社)に実用可能レベルの圧電特性100pm/V以上を持った鉛フリーKNN圧電薄膜の開発に成功しております。今回、「6インチサイズでの製膜技術」「薄膜微細加工技術」「電極形成技術」などの角速度センサー素子作製に必要となる各種要素技術の開発を進め、それらの成果を用いて3軸角速度センサーの開発を実現しました。
また、既存のPZT薄膜センサーでは素子作製工程で260℃以上の温度が加わると脱分極が起こり、素子特性が劣化するという問題がありますが、開発した鉛フリーKNN圧電薄膜センサーは温度耐性に優れており、400℃の温度を加えても特性が劣化しないことが確認できております。これにより、半田リフロー工程においても環境親和性の高い半田材料の選定が可能になると思われます。
なお、日立金属は、10月28日(火)から29日(水)まで神戸大学ポートアイランドキャンパスにて開催される国際学会「PiezoMEMS 2014 」において、本開発に関して報告(当社講演番号:I-8)を予定しております。
【お客様からのお問い合わせ】
日立金属㈱ 電線材料カンパニー
TEL 029-826-7654
■㈱ワコーについて
㈱ワコーは、創業以来「センサー開発」のスペシャリスト、特に「3軸センサー」をはじめとする独創的かつ画期的な技術によって、あらゆる分野に応用できるセンサー技術の雄として歩んでまいりました。さらに近年、次世代携帯端末や最新ロボット技術などにおける重要なコアとしてのセンサー技術「6軸モーションセンサー」を発表することにより、世界的なレベルで「ハイテク産業」と呼ばれる分野の牽引役になりうると自負しております。これまでの開発の流れの中で取得した特許は日本、米国、欧州において、150件余にもなり、これらの基盤の上でさらなる新技術&応用製品の開発・生産化に邁進し、広く社会に貢献してまいります。
㈱ワコー Webサイト
http://wacoh.co.jp/index.html
<用語説明>
*1 チタン酸ジルコン酸鉛[PZT]とは、Pb(Zr,Ti)O3というペロブスカイト構造を有する結晶のことです。
*2 MEMSミラーとは、電気を流すことにより、反射角度を動かすことの出来る鏡を持つ微細な部品のことです。
*3 エナジーハーベスタ(振動発電素子)とは、圧力を電力に変換する素子のことです。
*4 圧電特性とは、素子に電圧を印加した際にどれだけ変形するかを示す特性のことです。
*5 ニオブ酸カリウムナトリウム[KNN]とは、(K,Na)NbO3というペロブスカイト構造を有する結晶のことです。
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