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HEV/EV用モータ制御向けに40nmマイコン「RH850/C1xシリーズ」を発売【ルネサス エレクトロニクス】
2014年8月27日
~HEV/EV用1モータ/2モータ制御システムの高い安全性と高性能、低コスト化実現に貢献~
ルネサス エレクトロニクス㈱(代表取締役会長兼CEO:作田 久男、以下ルネサス)は、このたびハイブリッド電気自動車や電気自動車(HEV/EV)用モータ制御向けに40nm(ナノメートル、ナノは10億分の1)プロセスを採用した車載用32ビットマイコン「RH850/C1xシリーズ」を2品種開発し、それぞれ「RH850/C1H」、「RH850/C1M」の名称で2015年初頭からサンプル出荷を開始いたします。
新製品は、(1) 最先端40nmプロセス技術に加え、フラッシュメモリに実績ある構造を採用した大容量メモリを搭載、(2) 当社従来品で実績のある要素技術を更に強化したR/Dコンバータ(注1)、モータ制御IP(Intellectual Property)、モータ制御タイマをはじめHEV/EV用モータ制御向け周辺機能を豊富に内蔵、(3) ユーザーがシステム構成に応じて選べる1モータ制御用のRH850/C1Mと2モータ制御用のRH850/C1Hを用意したことに加え、RH850/C1HではメインCPUと独立したプログラムが実行できるパフォーマンスCPUを搭載、(4) メインCPUに「機能安全」実現を目的としたロックステップ方式(注2)を採用し、周辺機能にも機能安全機構を搭載、といった特長を有しております。
新製品は、現在サンプル出荷中のRH850ファミリ用電源管理IC「RAA270000KFT」と組み合わせて使用できます。この電源管理ICはマイコン動作に必要な全ての電源、2つの外部センサ電源用トラッカおよび各種状態監視・回路診断機能を集積しているため、マイコンとの組み合わせによりユーザーの電源設計負担を軽減できます。
ユーザーは新製品の採用により、より高性能かつ安全なHEV/EV用モータ制御システムの開発が可能になります。
新製品の量産は、2016年5月より開始し、月産10万個を計画しております。新製品のサンプル価格はRH850/C1Hが12,000円、RH850/C1Mが10,000円となっております。
地球温暖化対策の一環として自動車のCO2排出量削減要求が高まる中、HEV/EVの普及が急激に進んでいます。今後更なるHEV/EVの普及拡大のためにはシステムコストを低減しつつ、更なる燃費向上のためモータの制御性能を引き上げる必要があります。具体的には、モータの高回転化に対応するため、より厳しい時間制約で処理を完了する、すなわち処理の高速化が求められます。また、きめ細かいモータ制御を行うための処理の追加や、他のECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)の機能を取り込むことによるソフトウェアの大規模化に対応する必要があります。これに加え、近年の車載システムの開発では機能安全への対応、特にHEV/EVのモータ制御では高い安全性が要求されると考えられているため、機能安全の実現を考慮した半導体製品が求められています。
このようなニーズに応える製品として、ルネサスは新製品を開発いたしました。
新製品の特長の詳細は以下のとおりです。
(1)40nmプロセス技術と確立したフラッシュメモリプロセスの採用で大容量メモリの搭載を実現
最先端40nmプロセスに加え、フラッシュメモリには量産実績を多数保有する当社独自のMONOS(Metal-Oxide-Nitride-Oxide-Silicon)構造を採用しているため、高速読み出しかつ低消費電力を実現。RH850/C1Mは2MB(メガバイト)、RH850/C1Hは4MBの大容量メモリを搭載している。
加えて、データ格納用途向けにEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)とほぼ同等機能のフラッシュメモリを32KB(キロバイト)内蔵している。
(2)HEV/EV用モータ制御向け周辺機能を豊富に充実
モータ制御性能を強化するため、従来品「SH72AW」「SH72AY」の開発からR/DコンバータICにおいて圧倒的な高シェアで市場実績のある多摩川精機株式会社とのコラボレーションを継続しており、同社のR/DコンバータIC新製品「AU6805」の技術を導入したR/Dコンバータ機能を内蔵。またSH72AYで実績のあるモータ制御IPの演算ロジックを最適化かつ高速化したモータ制御IP「EMU2(Enhanced Motor control Unit 2、注3)」、当社製マイコンV850ファミリで実績のあるモータ制御用タイマを機能強化した「TSG3(Timer S Generation 3)」を組み合わせることで、モータ制御の3種類の方式(正弦波PWM、過変調、矩形波)を内蔵ハードウェアで実行する。これらを条件に応じて切り替えることにより高効率な制御が可能となっているため、従来よりも高速、高性能なモータ制御をソフトウェアの負荷なく実現可能とした。
(3)システム構成に応じて選べる1モータ制御と2モータ制御に対応した2品種をラインアップ
ユーザーの多様なHEV/EVシステムの構成に対応するため、1モータ制御向けのRH850/C1M、2モータ制御向けのRH850/C1Hの2品種を用意。特にRH850/C1Hでは2系統のモータ制御を独立して処理できる周辺機能に加え、ソフトウェアの処理能力を強化するためパフォーマンスCPUを追加搭載した。これにより、車両の統合制御、エネルギーマネジメント制御、DC/DCコンバータ制御、電池制御など、モータ制御に加えて他のECU機能の取り込みも可能となっている。
(4)機能安全対応(ISO26262)に向け、安全機構を多数搭載
自動車に搭載される電気・電子機器の増加に伴い、機能安全規格への取り組みが重要になっている。新製品では、メインCPUにはロックステップ方式を採用し、フラッシュメモリに代表される各種メモリに対してはECC(Error Check and Correct、注4)機能によるデータの誤り訂正・検出が可能。ECM(Error Control Module、注5)を搭載しており、各モジュールからのエラー信号入力に対してエラー端子出力やリセット発生等の設定が可能であるため、システムの安全性確保に貢献する。また、新製品の特長となる内蔵R/Dコンバータ(RDC2)には診断機能を追加した。
これらマイコン新製品の豊富な診断機能とコア診断ソフトに加え、電源管理IC新製品のウオッチドッグ、電源監視機能、リセット生成機能などを使用し、キット使用でユーザーの機能安全の実現を支援する。
ルネサスは今後、新製品の開発に加え、ユーザーのシステム開発をサポートすべく、パートナー会社と連携して、各種ソリューションを拡充してまいります。デバッガ、コンパイラ、モデルベース開発ツール、シミュレータ、RAMモニタなどの開発環境に加え、各種ソフトウェアも今後提供する計画です。
新製品の主な仕様は別紙をご参照ください。
なおルネサスは、本年9月2日にザ・プリンス パークタワー東京(東京都港区)で開催するプライベート展「Renesas DevCon Japan 2014」で、RH850/C1xシリーズおよびマイクロアイソレータ内蔵ゲートドライバ「R2A25110/112」、第7世代IGBTをキットで用いたHEV/EV駆動モータ用インバータ・ソリューションをご紹介する予定です。
同プライベート展は、当社が国内では初めて開催するもので、ルネサス幹部による基調講演およびルネサスの最新技術をご紹介するソリューションセミナー/ソリューション展示/ワークショップで構成されています。以下のWebページで事前登録の上、ご来場いただけます。
http://japan.renesas.com/event/devconjpn2014
(注1)R/Dコンバータ:レゾルバセンサのアナログ信号からモータ回転軸の角度を算出する機能。
(注2)ロックステップ方式:2つのプロセッサで全く同じ処理を実行し、その差を検出する方式。
(注3)EMU2:モータ電流入力、モータ回転軸角度の入力、電流指令値からモータ制御の演算を行い、モータコントロールタイマを通して出力するハードウェア。
(注4)ECC:メモリに誤った値が記録されていることを検出し、正しい値に訂正すること。
(注5)ECM:様々なエラーソースやモニタ回路で発生するエラー信号に対し、割り込みや内部リセット信号を発生するモジュール。
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