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世界初、28nmマイコンに内蔵するフラッシュメモリ技術を開発【ルネサス エレクトロニクス】
2014年2月18日
~自動車用マイコン内蔵フラッシュメモリの大容量化を実現する28nmプロセス技術を確立~
ルネサス エレクトロニクス㈱(代表取締役会長兼CEO:作田 久男、以下ルネサス)はこのたび、回路線幅に28nm(ナノメートル:10億分の1メートル)プロセスを採用したマイコン内蔵用フラッシュメモリIP(Intellectual Property)を世界で初めて開発しました。
内蔵用フラッシュメモリは今後、マイコンによる制御の高度化により当社の40nmプロセス技術で実現可能な最大容量8MB(メガバイト)を超える10MBクラスが必要になることが予想されています。
ルネサスはこのような大容量化ニーズにお応えできるように、従来の40nmプロセスから、さらに微細化を進めた28nmプロセスでの試作を進めてまいりましたが、このたび試作チップにより160MHzの高速読み出しと20年のデータ保持時間、25万回の書き換え回数(データ保存用の場合)を確認いたしました。微細化において内蔵用フラッシュメモリの性能・信頼性を維持することは加速度的に困難となってきていますが、当社は既に40nmプロセスまでの世代に採用し、高い実績を有するMONOS構造(注)フラッシュメモリのスケーラビリティを生かすことにより試作成功に至りました。
ルネサスは今後、高速読み出し・高信頼性と大容量(最大容量は16MB以上)に対応した28nm車載用フラッシュメモリ内蔵マイコン(以下フラッシュマイコン)の製品化に向け開発を加速していきます。
40nmから28nmへプロセスを微細化することで、マイコンに内蔵されるフラッシュメモリの大容量化と処理性能の向上が可能になります。これによりADAS(Advanced Driving Assistant System:先進運転支援システム)分野では3次元レーダーへの対応が可能となるため、自動車の安全性の向上を図ることができます。また、パワートレイン分野では燃料噴射に必要なマッピングデータ増加とデータ処理能力向上による細やかな燃料噴射と点火が可能となるため、自動車の燃費向上だけでなく環境やエネルギー問題にも貢献できます。さらに、28nmプロセスを採用することで、低消費電力化も可能となります。
しかしながら、内蔵用フラッシュメモリの品質や信頼性を落とさずに28nm クラスにまで微細化することは一般的に難しいため、大きな課題となっています。
当社はフラッシュマイコンを世界に先駆けて量産し、自動車、民生、産業等の幅広い分野でフラッシュマイコンの普及に貢献してまいりました。また、早くから信頼性、高集積化といったニーズを見通し、微細化が比較的容易なMONOS構造のフラッシュメモリを2004年、150nmマイコンに採用し、2007年に90nm、2012年に40nmへと展開、プロセスのスケーリングを実現しながら、90nm以降フラッシュマイコンのサンプル出荷を世界で初めて開始してまいりました。
そして今回、長年培ったノウハウと40nmへの微細化対応の経験をもとに、世界で初めて28nmのマイコン内蔵用フラッシュメモリIPを開発完了いたしました。これにより、いち早く28nmの車載用フラッシュマイコンを製品化することが可能となるため、フラッシュメモリ以外のロジック部分の微細化効果と併せてメモリの大容量化と処理性能向上を提供できるようになります。
今回開発したマイコン内蔵用フラッシュメモリIPの主な特長は、以下の通りです。
(1)高速読み出しを確認
試作チップにおいて、プログラム保存用フラッシュメモリで160MHz(当社40nmでは120MHz)の読み出し速度を実現しました。エンジン制御等の複雑なリアルタイム処理が実現可能です。
(2)高信頼性を確認
車載マイコンで重視されるデータ保持時間は従来通り20年を維持し、書き換え回数もデータ保存用フラッシュメモリで従来通り25万回を実現しています。
(3)メモリの大容量化が可能
新技術により28nmプロセスでフラッシュマイコンを製品化した場合、最大容量が16MB以上のフラッシュメモリを1チップに搭載可能となります。
微細化効果により、ロジック部分は高速かつ低消費電力なトランジスタを当社40 nm比で約2倍内蔵できる上、マルチCPUコア対応、機能安全対応や、セキュリティ、複数規格のインタフェースを搭載したマイコンなどが開発可能となり、自動車の電子制御ユニット(Electronic Control Unit: ECU)の統合までも可能となります。
今後のエンジンの低燃費化では、ダウンサイジングに伴う更なるシステム進化や新燃焼方式の導入に向け、新たな制御技術が必要になっています。例えば、各種センサーからのフィードバックに応じて、複雑な制御アルゴリズムを負荷に応じ動的に切り替える等、高速リアルタイム処理が必要となり、従来性能比3~5倍の性能が必要となります。しかも、ECU数が増える一方で、アイドリングストップ等の電力供給の制約を考えると、性能向上に反して低消費電力化が必要となります。
また、複数のマイコンの統合や制御アルゴリズム自体の複雑化等により、フラッシュメモリも従来の3倍程度の大容量化が必要となります。一方、車載制御の安全・安心を高めることが極めて重要になる中、車載マイコンに対する要求も、高度な機能安全が重要となり、ロックステップデュアルの複数搭載や、様々な機能を統合するために、新たなメニーコアのアーキテクチャも必要となります。低燃費エンジンでは高精度な燃焼制御やノック制御に必要な噴射パルス生成/信号処理のためのアクセラレータや、自動運転に向けた運転支援システムとの協調制御も必要となり、車載制御マイコンの高集積化、すなわち微細化が必須となります。
ルネサスでは、今回の開発成果をもとに28nmの車載用フラッシュマイコンの開発を加速し、いち早くニーズに対応した製品を市場に投入することで、安心・安全・快適なクルマ社会を実現するユーザーの先端商品開発に貢献していきます。
(注)MONOSは、Metal Oxide Nitride Oxide Siliconの略。ルネサスでは、EEPROM製品・セキュアマイコン等に20年以上適用し、量産実績を有するMONOS技術をマイコン内蔵用のフラッシュメモリに適用している。また、その際、独自のトランジスタ構造を開発している。
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