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ミリ波レーダーの高精度・広視野角化技術を開発【パナソニック】
2013年10月15日
夜間や濃霧など視界不良な環境下でも歩行者や自転車を0.1秒で検知
ミリ波レーダーの高精度・広視野角化技術を開発
交差点における安全支援システムの進化と普及を加速
要旨
パナソニック㈱は、40m先にある自動車や歩行者、自転車を20cm離れれば、0.1秒以下でそれぞれを個別に分離し検知する、ミリ波レーダーの高精度・広視野角化技術を開発しました。この技術を79GHzレーダー[1]に適用し、交差点内の事故を未然に防ぐ検知センサーなどに応用することで、安全支援システムの進化と普及を加速します。
効果
ミリ波レーダーは、夜間や悪天候時でも、歩行者や自動車を検知できるという特長があります。本技術は、レーダーの検知精度を高める事により、自動車だけでなく、20cm離れた歩行者や自転車を0.1秒以下で分離・検知することが出来ます。また複数のミリ波レーダーを同時に動作させて広視野角化にも対応可能です。この結果、交差点などへの設置の自由度が向上します。
特長
本開発のレーダー技術は以下の特長を有しています。
1. 独自の符号化技術を適用することで、ミリ波レーダーをデータ更新周期0.1秒以下で、高速走査し検知することにより、40m先の自動車や低速の歩行者、自転車を20cmの距離精度(当社従来比2.5倍の高精度)で分離・検知が可能
2. 複数のミリ波レーダーの干渉を制御することで同時検出を実現。主要交差点[2]をカバーできる広視野角化が可能。
内容
本開発のレーダー技術は以下の新規要素技術により実現しました。
1. 金属製の自動車からの大きな反射ノイズの影響を抑圧することで、歩行者の高感度検出を維持し、高速な物体測位を実現する多次元電子走査技術
2. 同一周波数の複数レーダー構成でも、お互いに干渉することなく分離性能を高めることで、高分解能と広視野角の両立を実現する直交化相補符号変調技術
従来例
ミリ波帯のレーダーシステムは移動物体の検知に優れた特徴を示しますが、視野角を保ったまま測位精度を高めるためには、より高いダイナミックレンジが必要でした。また、交差点の全面監視を可能とする、検知エリアもこれまで実現されていませんでした。
備考
本研究開発は、総務省平成23、24年度「79GHz帯レーダーシステムの高度化に関する研究開発」の成果の一環です。本成果の一部は、「第20回ITS世界会議 東京2013」(10月15日~18日、東京ビッグサイト)で展示されます。
特許
国内 27件、 海外 14件 (出願中含む)
お問い合わせ先
R&D本部 広報担当
E-mail : crdpress@ml.jp.panasonic.com
内容の詳細説明
1. 自動車からの大きな反射ノイズの影響を抑圧することで、歩行者の高感度検出を維持し、高速な物体測位を実現する多次元電子走査技術:
相補符号[3]を用いた符号化パルス変調技術を、1GHz超の広帯域を使用できる79GHzレーダーへ適用しました。これによりマイクロ波帯と比較してドップラー周波数のシフト量が大きくなるミリ波の物理特性も最大活用できるようになります。具体的には、広帯域化により従来比2.5倍の性能となる距離の分解能20cm以下を達成すると同時に、ドップラー周波数シフトに基づいて測定される速度の分解能1km/h以下を実現しました。また今回は、40m先の歩行者検知に必要となる高感度化と車両からの反射ノイズを-40dB以下とする高ダイナミックレンジな反射強度の測定技術に加えて、距離、角度、速度を各々独立に且つ高分解能に測定する電子走査技術を開発しました。このように4次元空間の高分解能なレーダー走査が可能となったことで、車両などの極近傍にいる歩行者や自転車に対して、より安定した分離検出ができるようになりました。
2. 同一周波数の複数レーダー構成でも、お互いに干渉することなく分離性能を高めることで、高分解能と広視野角の両立を実現する直交化相補符号変調技術:
ペア符号である相補符号を用いた符号変調のレーダー方式は、強い反射波によるノイズレベル上昇の要因となるレンジサイドローブ[4]を、原理的にゼロにできるという特徴があります。一方で、複数のレーダーを同時動作させた場合には、アンテナビーム方向が互いに近接する角度領域でも車両などの強反射波が相互干渉の要因となっていました。今回は、相補符号の系列に対して重畳するように直交符号化[5]した符号多重ビームの形成技術により、複数のパルスレーダー間で生じる相互干渉を40dB以上抑圧することに成功しました。これにより、複数のミリ波レーダーを角度領域でセクタ化して同時に動作させることが可能となり、120度以上の視野角と0.1秒以下のデータ更新周期を実現しました。
用語の説明
[1] 79GHzレーダー
日本では電波法の施行規則第6条第4項第2号に基づく特定小電力無線局として定められているもので、高分解能なレーダーとして規格(ARIB標準規格T111)が策定されている。
[2] 主要交差点
およそ20m幅(片側三車線)の道路が直角に交差する交差点をモデルケースとしている。
[3] 相補符号
無線LANなどにも利用されている自己相関特性に優れたデジタル符号の一種で、2つの符号列を並べて比較した場合に一致するものとないものが同数となる性質をもつ。
[4] レンジサイドローブ
符号の自己相関特性によって生じる時間領域のメインローブとサイドローブの内、サイドローブの特性を示し、レーダーでは光速より時間を距離に換算できるため距離領域のサイドローブと見なされる。
[5] 直交符号化
第3世代セルラ通信などでも利用されている符号化方式であり、符号化された無線信号間の干渉抑圧性能を左右する相互相関特性に優れた符号系列を用いることで実現される。
プレスリリースの内容は発表時のものです。
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