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大王製紙がCNF複合樹脂「ELLEX-R67」の商用プラント設置を決定【NEDO】
2024年5月8日
大王製紙がCNF複合樹脂「ELLEX-R67」の商用プラント設置を決定
―CNFの事業拡大を目指し、2025年度に年産2000トンの設備を稼働へ―
NEDOの「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発」(以下、本事業)で、大王製紙株式会社は、セルロースナノファイバー(CNF)の社会実装課題の一つである製造コスト低減を目的に、2020年度から2022年度にかけて、CNFの前処理プロセスや複合樹脂の生産性を飛躍的に改善する製造プロセスを開発しました。
そして、本製造プロセスを用いたCNF複合樹脂「ELLEX-R67」は2024年4月、日常生活の身近な製品の一つである回覧板の材料に初めて採用されました。このような状況を踏まえ大王製紙は「ELLEX-R67」の商用プラントの設置を決定し、2025年度に年産2000トン規模の設備を構築します。これにより、自動車部材や家電製品など、さまざまな用途展開に対応できる品質、供給量、コスト水準でCNF複合樹脂の供給が可能となり、市場の期待への対応、CNF事業の拡大が見込まれます。
図1 「ELLEX-R67」の商用プラントのプロセスイメージ |
1.概要
植物素材であるCNF※1は、自然界に存在する再生可能な資源です。CNF複合樹脂は、CNFの軽くて強い特性を生かすことができ、自動車部材や家電製品への用途展開が期待されています。一方で、実用化、社会実装までには、より一層の低コスト化、物性の向上、用途拡大などが求められています。本事業※2において大王製紙は、複合樹脂中のセルロース高濃度化へのニーズが非常に高いことから、2020年3月に稼働させたパイロットプラントを活用し、実証を進めてきました。原料からCNF複合樹脂ペレットまでを一貫生産するとともに、複合樹脂中のセルロース高濃度化技術を向上させ、CNF複合樹脂のセルロース濃度をこれまでの55%から67%へ高めました。こうして課題となっている生産性を改善し、大幅に製造コストを削減するとともに、業界に先行して大量製造する技術開発に成功しました。また、用途開発においては、2022年11月より「ELLEX-R67」のサンプル供給を開始し、実用化開発を加速させてきました。2024年4月には「ELLEX-R67」が初めて日常生活の身近な製品として愛媛県四国中央市の回覧板に採用されました。そして2024年5月に大王製紙は「ELLEX-R67」の商用プラント設置を発表し、さらに事業化を促進していきます。各事項の詳細は以下のとおりです。
(1)CNF複合樹脂製造プロセスの開発
大王製紙は、CNFの社会実装課題の一つである製造コスト低減を目的に、2020年度から2022年度に取り組んだ本事業において、CNFの前処理プロセスや複合樹脂の生産性を飛躍的に改善する製造プロセスを開発しました。CNF前処理プロセスでは、大王製紙がこれまで培ってきた抄紙技術を駆使し、尿素によるカルバメート化変性セルロースの量産技術を確立し、複合樹脂の生産性改善では、芝浦機械株式会社と共同で高効率なCNFと樹脂の複合化技術を開発しました。
(2)CNF複合樹脂「ELLEX-R67」
CNF複合樹脂は、CNFの軽くて強い特徴を生かし、自動車部材、家電製品、建材、日用品、容器・包装などの分野への用途展開が期待されています。
「ELLEX-R67」は、品質とコストの観点から解繊度について検討を深め、部分的にCNF化したセルロースを67%含む高濃度ペレットであり、樹脂材料設計の自由度が高く、ユーザーが混練・成形加工しやすい仕様です。また、CNFが植物由来であることや繊維が破断しにくいことから、減プラスチックやマテリアルリサイクルも期待できる素材です。
図2 CNF複合樹脂「ELLEX-R67」(セルロース67%) |
(3)採用事例
愛媛県四国中央市は、2004年の発足以降、総務省および経済産業省公表の「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」の「パルプ・紙・紙加工品製造業」の製造品出荷額において、最新の統計では、2022年まで18年連続で全国1位の”日本一の紙のまち”であり、大王製紙基幹工場の三島工場も同市に立地しています。
2024年度に市発足20周年を迎えるにあたって、この記念事業として、製紙業界において次世代新素材として期待されているCNFを用いて、市民にとって日常生活で身近に感じられる製品の製作が企画されました。大王製紙とさまざまな用途について協議を重ねた結果、「ELLEX-R67」を用いて回覧板を製作することを決定し、採用に至りました。
図3 CNF複合樹脂「ELLEX-R67」製の回覧板(愛媛県四国中央市) |
(4)商用プラント設置
大王製紙は、2013年にCNF水分散液のサンプル提供を開始して以降、多様なユーザーニーズに対応できるラインアップの拡充とコスト低減のためのパイロットプラントによる製造プロセス開発を進めてきました。中でも、CNFの特徴を生かせる複合樹脂へ市場の期待は大きく、製紙会社が有するポテンシャルを最大限活用してパイロットプラントでの製造プロセス開発を進めてきました。この成果を基盤として、さまざまな用途展開に対応できる品質、供給量、コスト水準でCNF複合樹脂を供給するために、2024年5月、商用プラント設置を発表しました。
【設備概要】
(1)生産品種 CNF複合樹脂「ELLEX-R67」
(2)生産能力 年産2000トン
(3)設置工場 大王製紙三島工場
(4)設備投資額 約40億円
(5)営業運転開始 2025年度中(予定)
2.今後の予定
CNF複合樹脂はCNFの軽くて強いという特徴を生かせる素材です。本事業の成果をもとに、大王製紙は、軽量化、マテリアルリサイクル、植物由来などのCNFの優位性を生かせる自動車部材としての利用拡大を目指して、素材供給量を増大し、ユーザーと連携して大型部材試作などの評価を進めていく計画です。今後、このような取り組みにより自動車部材、家電製品、建材、容器・包装などの分野での用途展開を積極的に進めていきます。
図4 CNF材料の実用化時期と市場規模(2021年7月作成NEDO資料) |
【注釈】
※1 CNF
パルプなどの植物繊維をナノレベルまでほぐすと得られる、繊維径が3ナノメートル~100ナノメートルのセルロース繊維です。
※2 本事業
事業名 :炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発
事業期間:2020年度~2024年度
事業概要:https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100169.html
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