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SiCダイオード内蔵IGBT(Hybrid IGBT)「RGWxx65Cシリーズ」を開発【ローム】

2021年7月8日

  

SiCダイオード内蔵IGBT(Hybrid IGBT)「RGWxx65Cシリーズ」を開発
従来品IGBT比67%の低損失化を達成し、コストパフォーマンス良く
車載・産業機器の低消費電力化に貢献

  

<要旨>

ローム株式会社(本社:京都市)は、電気自動車をはじめとする電動化車両(xEV)に搭載される車載充電器(オンボードチャージャー)やDC/DCコンバータのほか、太陽光発電のパワーコンディショナーなど、大電力を扱う車載電装機器・産業機器に向けて、車載信頼性規格「AEC-Q101*1」に準拠した、650V耐圧のSiCショットキーバリアダイオード内蔵IGBT(Hybrid IGBT)「RGWxx65Cシリーズ」( RGW60TS65CHRRGW80TS65CHRRGW00TS65CHR )を開発しました。
「RGWxx65Cシリーズ」は、IGBT*2の帰還部(還流ダイオード)に、ロームの低損失SiCショットキーバリアダイオード(SiC SBD)を採用したHybrid型のIGBTであり、従来品IGBTからON時のスイッチング損失(以下、ターンオン損失*3)を大きく削減することに成功しました。車載充電器に搭載した場合、従来品IGBT比では67%の低損失化、Super Junction MOSFET(SJ-MOSFET)比でも24%の低損失化を達成できるなど、コストパフォーマンス良く車載・産業機器アプリケーションの低消費電力化に貢献します。 新製品は、2021年3月よりサンプル出荷(サンプル価格1,200円/個:税抜)を開始しており、2021年12月から当面月産2万個の体制で量産を開始する予定です。また、評価・導入に必要となる駆動回路の設計手法を記載したアプリケーションノートや、SPICEモデルなど、豊富な設計データをローム公式Web上に無償公開しており、素早い市場導入をサポートします。
今後もロームは、幅広いニーズに応える低損失のパワーデバイスを開発するとともに、設計ツールなども合わせてソリューションで提供し、システムの省エネ・小型化を通じた環境負荷低減に貢献していきます。

  

<背景>

近年、「脱炭素社会」や「カーボンニュートラル」など、環境負荷低減に向けた世界的な取り組みの中で、電動化車両(xEV)の普及が進んでいます。より効率的なシステム構築のために、各種車載機器のインバータ・コンバータ回路に搭載されるパワー半導体にも多様化が求められており、超低損失のSiCパワーデバイス(SiC MOSFET、SiC SBDなど)や従来のSiパワーデバイス(IGBT、SJ-MOSFETなど)で、それぞれ技術革新が進んでいます。
ロームは、幅広いアプリケーションに合わせて効果的なパワーソリューションを提供すべく、業界をリードするSiCパワーデバイスだけでなく、Siパワーデバイスや駆動ICの技術・製品開発にも注力しています。今回は、普及帯の車載・産業機器に適したパフォーマンスを提供できるHybrid IGBTを開発しました。

  

<新製品の特長>

●従来品IGBT比67%の低損失化を実現し、
普及帯の車載電装機器・産業機器に最適なコストパフォーマンスを提供

「RGWxx65Cシリーズ」は、IGBTの帰還部(還流ダイオード)に、ロームの低損失SiC SBDを採用したHybrid型のIGBTです。Siファストリカバリダイオード(Si-FRD)を採用している従来品IGBTより、ターンオン損失を大幅に削減することに成功しており、車載充電器搭載時には、従来品IGBT比で67%の低損失化を実現。一般的にIGBTより損失の少ないSJ-MOSFETよりも24%低損失化が可能です。変換効率においても幅広い動作周波数で97%以上の高効率を確保でき、動作周波数100kHz時にはIGBT比で3%の高効率化を実現するなど、コストパフォーマンス良く車載・産業機器アプリケーションの低消費電力化に貢献します。

●AEC-Q101に準拠で、過酷な環境下で使用可能
新製品は、車載信頼性規格「AEC-Q101」に準拠しており、車載・産業機器の過酷な環境下でも安心して使用することが可能です。

  

<各種設計データについて>

新製品では、評価・導入に必要となる駆動回路の設計手法を記載したアプリケーションノートや、シミュレーション用のモデル(SPICEモデル)など、豊富な設計データをロームの公式Web上に無償公開しており、素早い市場導入をサポートします。詳細は下記URLをご覧ください。
https://www.rohm.co.jp/products/igbt/field-stop-trench-igbt?SearchWord=rgw&PS_BuiltInDiode=SiC-SBD

  

<Hybrid IGBT「RGWxx65Cシリーズ」製品ラインアップ>

☆:開発中               パッケージはJEDEC表記です。()内はROHMパッケージを示します。

※本Hybrid IGBT以外にも、還流ダイオードにSi-FRDを採用した製品、還流ダイオードの無い製品もラインアップしています。詳細は下記URLをご覧ください。
https://www.rohm.co.jp/products/igbt/field-stop-trench-igbt?SearchWord=rgw

<アプリケーション例>
・車載充電器(オンボードチャージャー)
・車載DC/DCコンバータ
・太陽光発電インバータ(パワーコンディショナー)
・無停電電源装置(UPS)

<インターネット販売情報>
販売開始時期: 2021年6月から
販売ネット商社: チップワンストップ、
        コアスタッフオンライン
        それ以外のネット商社からも順次発売予定です。
販売品:RGW60TS65CHR、RGW00TS65CHR

  

1個から購入可能

  

<用語説明>

*1) 車載信頼性規格「AEC-Q101」
AECはAutomotive Electronics Councilの略で、大手自動車メーカーと米国の大手電子部品メーカーが集い、策定した車載電子部品の信頼性規格。Q101は、ディスクリート半導体部品(トランジスタ・ダイオード等)に特化した規格となっている。

*2) IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、
SJ-MOSFET(Super Junction Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)

いずれも一般的にSi基板を使用して生産されるパワー半導体の一種で、デバイス構造が異なる。IGBTは他のパワー半導体より安価に生産できるが、動作に還流ダイオードが必要(2チップ構成で動作)で、ターンオフ損失に課題がある。またSJ-MOSFETは、IGBTと比較すると動作に還流ダイオードが不要(1チップ構成で動作可能)で、ターンオフ損失も少ないが、大電力対応が難しいという課題がある。
一つのブレイクスルーとして、IGBTの還流ダイオードに従来のSi-FRDではなくSiC SBDを採用し、損失を削減するHybrid IGBTが登場した。

*3) ターンオン損失、ターンオフ損失
いずれもトランジスタなどの半導体素子がスイッチする際に生じる損失(スイッチング損失)のこと。ターンオン損失は素子がONする際に生じる損失であり、ターンオフ損失は素子がOFFする際に生じる損失である。
理想的にはこれらの損失はゼロになるべきではあるが、実際にはONとOFFをスイッチする際、構造上どうしても不要な電流が流れてしまい損失が発生するため、パワー半導体ではこれらの損失をいかに小さくするかが重要である。

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