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SerDes IC「BU18xMxx-C」及びカメラ向けPMIC「BD86852MUF-C」を開発【ローム】
2021年6月3日
車載カメラモジュールに最適!
SerDes IC「BU18xMxx-C」及びカメラ向けPMIC「BD86852MUF-C」を開発
高度化するADASの低消費電力化、低EMI化に貢献するソリューションを提供
<要旨>
ローム株式会社(本社:京都市)は、ADAS(先進運転支援システム)の車載カメラモジュールに最適なSerDes IC※1「BU18xMxx-C」及びカメラ向けPMIC※2「BD86852MUF-C」を開発しました。モジュールの小型化や低消費電力化という課題を解決するだけではなく、放出する電磁ノイズが少ない(低EMI)という特長により、開発工数削減にも貢献します。
映像の伝送を行うSerDes IC「BU18xMxx-C」は、解像度に合わせた伝送レートの最適化ができるため、一般品に比べ27%の低消費電力化が可能です。また、伝送レート最適化の応用とスペクトラム拡散機能※3により、EMIピークを20dB程度低減します。さらに、画像のフリーズ状態を検出する固着検出機能も搭載しており、ADASのシステム全体における信頼性向上も実現します。
カメラ向けPMIC(パワーマネジメントIC)「BD86852MUF-C」は、主要メーカー各社のCMOSイメージセンサに最適な電源系統を管理できます。電圧設定及びシーケンス制御がIC単体で可能なため、実装面積を約41%削減でき、車載カメラモジュールの小型化に寄与します。また、カメラ向けPMICへの熱集中を分散する回路構成が可能なため、発熱を抑制することで、78.6%という高い変換効率を実現しており、低消費電力化に貢献します。
なお、SerDes IC「BU18xMxx-C」は、2021年2月よりサンプル出荷(サンプル価格1,000円~/個:税抜)を開始しており、2021年6月から当面月産20万個の体制で量産を開始する予定です。また、カメラ向けPMIC「BD86852MUF-C」は、2021年1月から月産50万個の体制で量産(サンプル価格500円/個:税抜)を開始しています。
今後もロームは、低消費電力化やシステムの高信頼化に寄与する製品を開発し、自動車の進化に貢献していきます。
<背景>
ADASは、LiDARやソナー、カメラなど、センシング方法・距離の異なるデバイスを組み合わることで、システムを構築しています。その中でも、車載カメラは駐車支援システムなど、近接時の死角を補完する際に重要な役割を果たしており、最新の自動車では、1台あたり10個程度搭載されています。また、ADASの高度化に伴い、その個数はさらに増加し、各カメラにも性能向上が求められています。一方、搭載数の増加に対して、バッテリから供給できる電力量やカメラ搭載スペースには限りがあるため、車載カメラモジュールでは基板の小型化及び低消費電力化への要求が高まっています。
ロームは、SerDes ICとカメラ向けPMICの新製品を組み合わせることにより、これらの課題を解決します。また、両製品ともスペクトラム拡散機能等により、低EMIを実現。車載アプリケーションの設計において大きな負荷を必要とするEMI対策の工数削減にも貢献します。
White Paper : ADAS カメラシステム向け「低消費」「低ノイズ」の通信・電源ソリューション(2MB)
<特長の詳細>
車載カメラモジュールに最適な、SerDes IC「BU18xMxx-C」及びカメラ向けPMIC「BD86852MUF-C」は、どちらも車載信頼性規格AEC-Q100に対応しているため、車載アプリケーションに必要な信頼性を確保しています。加えて、カメラ向けPMICは、現在さらに厳しいISO 26262※4のプロセス認証に対応する新製品を開発中であり、2021年度中に同規格の安全度水準「ASIL-B」に対応可能な製品のサンプル出荷を予定しています。
■ SerDes IC「BU18xMxx-C」の特長
1. 車載カメラモジュールの低消費電力化に貢献する伝送レート最適化
一般的なSerDes ICでは、帯域ごとに固定伝送レートを設定しています。しかし、同方式は、細かい伝送レート設定ができないため、消費電力のロスが発生します。一方、「BU18xMxx-C」は、帯域ではなく、解像度に応じて伝送レートを最適化する機能を搭載。一般品よりも細かい伝送レート設定が可能なため、高効率動作を実現し、車載カメラモジュールの低消費電力化に貢献します。これにより、4つのカメラモジュールを使用するアプリケーションに本製品を搭載した場合、一般品に比べて約27%の低消費電力化が可能になります。
2. 伝送レート最適化の応用とスペクトラム拡散機能により、EMI対策の工数削減に貢献
本製品は、上述の伝送レート最適化の応用により、各経路の伝送レートを少しずつずらすことでEMIピークを分散し、10dB程度EMIを低減します(下図①)。加えて、シリアライザとデシリアライザ、両ICにスペクトラム拡散機能を搭載することで、さらに10dB程度のEMI低減が可能です(下図②)。これにより、車載アプリケーションの設計において大きな負荷となるEMI対策の工数削減に貢献します。
3. 信頼性向上に貢献する固着検出機能
本製品は、画像のフリーズ状態を検出する機能も搭載しています。CMOSイメージセンサからデシリアライザまでMIPI CRC値を比較することで、画像が正しく伝送されていることを確認する基本機能に加え、シリアライザ内でカメラ画像のフレームCRC値を常時前後の値と比較することで、画像固着を監視することが可能です。フレームCRC値の一致が続いた場合、エラーフラグを出力することで、画像固着が発生したことを後段のICに知らせることが可能なため、ADASシステムの信頼性向上に貢献します。
4. SoC、CMOSイメージセンサを選ばないラインアップを完備
本製品はシリアライザ1品番、デシリアライザ2品番の計3品番をラインアップ。3品番ともに主要な3つのケーブルに対応しているため、様々なCMOSイメージセンサ、SoCに対応することが可能です。
■ カメラ向けPMIC「BD86852MUF-C」の特長
1. CMOSイメージセンサに最適化された機能で基板面積を削減
車載カメラの主要部品であるCMOSイメージセンサは、メーカーによって異なる駆動電圧設定、シーケンス制御が必要で、多くの外付け部品を用いて構成されています。「BD86852MUF-C」は、主要なCMOSイメージセンサの駆動電圧とシーケンス制御を設定できるピンを備えており、駆動電圧設定及びシーケンス制御用の外付け部品が不要です。これにより、従来品と比較して、部品点数と実装面積を大幅に削減でき、車載カメラモジュールの小型化に貢献します。
2.低消費電力化に貢献する高い変換効率
本製品は、CMOSイメージセンサへの電源供給用LDO※5を外付けにすることで、ICへの熱集中を分散。回路全体の発熱を抑制することで、一般品よりも約4%高い変換効率78.6%を実現しており、車載カメラモジュールの低消費電力化に貢献します。また、CMOSイメージセンサとLDOの距離も短くできるため、電源ラインへの外乱ノイズも低減。CMOSイメージセンサに安定した電源供給が可能です。
3.スペクトラム拡散機能搭載により、EMI対策の工数削減に貢献
本製品は、内蔵するスイッチングレギュレータ(DC/DCコンバータ)※5にスペクトラム拡散機能を搭載しており、スイッチングによるEMIノイズピークを約10dB程度低減します。基板変更なくノイズ低減を実現できるため、EMI対策の工数削減に貢献します。
4.カメラモジュールに最適な電源系統を内蔵し、高い信頼性を確保
本製品は、カメラモジュールに必要な電源系統として3つのDC/DCコンバータを内蔵しています。また、外付け部品を削減するシーケンス制御に加えて、電圧状態を監視するパワーグッド機能など、各種保護機能も搭載。高信頼性を確保しながら、低EMI、高効率なカメラモジュール用電源回路を実現可能です。
<用語説明>
※1)SerDes IC
データの高速伝送を目的として、通信方式の変換を行うために、対で使う2つのICの総称。シリアライザ(Serializer)でデータを高速で伝送しやすい形に変換(パラレルバスをシリアルバスに変換)し、デシリアライザ(Deserializer)は伝送されてきたデータを元の形に変換(シリアルバスをパラレルバスに変換)する。
※2)PMIC(パワーマネジメントIC)
複数の電源系統を内包し、電源管理、シーケンス制御等を行う機能をワンチップに搭載したIC。DC/DCやLDO、ディスクリート部品などを、個々に使って回路構成することに比べて、スペースや開発工数等を大幅に削減できるため、近年では、車載機器、民生機器を問わず、複数の電源系統を持つアプリケーションで一般的なデバイスとなっている。
※3)スペクトラム拡散機能
スイッチング周波数を固定ではなく、ある幅を持たせて揺らすことで、幅を持つ周波数にノイズエネルギーを拡散する機能。ノイズのピーク値を下げることにより、EMIノイズを軽減する。
※4)ISO 26262
2011年11月に正式発行された車載電子制御の機能安全に関する国際規格。車載電子制御において故障のリスクを算出し、そのリスクを軽減する仕組みを機能の1つとしてあらかじめシステムに組み込む「機能安全」を実現するための開発プロセスを標準化したもの。車両の構想からシステム、ECU、組み込みソフトウェア、デバイス開発、およびそれらの生産・保守・廃棄に至るまで、車両の開発ライフサイクル全体が対象となる。
※5)LDO(Low Drop Out レギュレータ / 低飽和レギュレータ)、DC/DCコンバータ(スイッチングレギュレータ)
どちらも電源ICの一種で直流(DC)から直流へ電圧を変換する機能を持つ。
DC/DCコンバータは、スイッチングレギュータとも呼ばれ、スイッチングにより出力電圧を生成する。一般的に電力変換効率に優れ、電圧を下げる“降圧”、電圧を上げる“昇圧”が存在する。
一方LDOは、リニアレギュレータと言われる区分に該当し、抵抗の分圧により出力電圧を生成する。DC/DCコンバータなどのスイッチングレギュレータと比較して、降圧のみだが回路構成が簡単でノイズが少ないなどの特徴を持つ。
・「Clockless LinkTM」は、ローム株式会社の商標または登録商標です。
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