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舶用低速2ストローク デュアルフュエルエンジン「UEC-LSGi」の開発に着手【三菱重工業】
2012年7月5日
三菱重工業は、従来の重油に加え、天然ガスも燃料として使用できる舶用低速デュアルフュエルエンジン「UEC-LSGi」の開発に着手する。舶用低速2ストローク機関「三菱UE機関」の新ラインアップとして開発を進めるもので、経済性と環境対応の両面で船舶運航者の負担軽減を実現するのが狙い。2015年度の市場投入を目指す。
具体的には、デュアルフュエルエンジンの構成要素である新たな燃料噴射系、ガス燃料供給系、制御系などの開発に取り組み、2013年度内に単筒試験機での先行試験を完了する方針。その後、デュアルフュエル仕様のフルスケール機での実証試験を経て、シリンダ径600mm、出力1万1,000~1万8,000kWクラスのUEC-LSGiを市場投入する。
舶用低速2ストローク機関の燃料である重油は今後も高騰することが見込まれている。その一方で、天然ガスは価格変動が比較的小さく、また、非在来型ガスであるシェールガスも、採掘技術の高度化により安定した量の供給が可能になっていることから、天然ガスを燃料とした舶用低速2ストロークの開発には、市場関係者の期待と注目が集まっている。
また、IMO(国際海事機関)は、船舶の排ガス中に含まれるSOxを低減させるため、燃料油の硫黄分規制を段階的に強化する方針で、最終的には2020年に全海域を対象に硫黄分0.5%以下(現状規制3.5%以下)とする規制が適用されることとなっている。このため、船舶運航者は、高価な低硫黄分燃料を使用するか、主機関に排ガス処理装置を装着するなどの対応が必要となっているが、天然ガスを燃料として使用可能な舶用低速機関が開発されれば、天然ガスは硫黄分を含まないことから、そのような対応を不要とすることができる。
当社が開発するUEC-LSGiは、このような市場の期待に応えるもの。シリンダで圧縮した空気中に300bar程度の高圧ガスを噴射し、少量の燃料油によるパイロット火炎によって着火する拡散燃焼方式を採用することで、低圧ガスを予め空気と混ぜてから圧縮する予混合方式と比べ、ガス燃料組成の変動や機関負荷急変時の追随性に優れ、燃焼安定性が高い仕様としていく方針。
また、UEC-LSGiは、重油燃料のみでも機関出力100%までの運転を可能として、多様なオペレーションニーズに対応できる設計とする。排ガス中のNOxについては、燃料に天然ガスを使用したほうが従来の重油より若干低下する見込みだが、さらに、当社が並行して開発中の排ガス再循環(EGR)技術などと組み合わせることで、IMO規制をクリアしていく考え。
当社は国内唯一の舶用低速2ストローク機関のライセンサー。現在、社内に保有する幅広い舶用機械製品・技術を機能的に組み合わせて、環境規制強化や省エネ要請に対応するソリューションを提案する「プロジェクト MEET(Mitsubishi Marine Energy & Environmental Technical Solution System)」を推進中。この中核を担うUE機関についても、その筆頭となる今回のUEC-LSGiの開発に精力的に取り組むことで、世界の舶用ディーゼル機関業界をリードする省エネ技術の更なる開発を推し進めるとともに、顧客ニーズに徹底的にマッチした製品の開発とサービスの一層の拡充をはかっていく。
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