ニュース

洗練されたロボットのための超音波式検出の利用【日本テキサス・インスツルメンツ】

2019年8月8日

現在、人間が行っている作業の多くをロボットが行うようになる日は、遠い先のことではありません。私たちはすでに、ロボット掃除機に部屋の掃除をさせたり、ロボット芝刈機に庭の草刈りをさせたりしています。工場では、歯ブラシから自動車まで、私たちが使用する多くの製品をロボットが製造しています。中国や日本ではロボットが料理を運び、ドローンによる肥料の散布や商品の配送も行われています。ですから、ロボットが家を建てたり、道路を敷いたり、クルマを運転したりする日も近いことでしょう。しかし、そのような未来を現実にするための重要な要件の1つは、ロボットが人間と同じような感覚を持つことです。

ロボット機器の最大の課題の1つは、壁や家具、設備、人間、他のロボットなどに衝突することのない移動経路をどのように見つけるかです。障害物を避けて効果的に作業を行うために、ロボットは数センチから数メートル先の障害物を検出し、別の場所に移動する時間を確保する必要があります。

障害物を検出する一般的なテクノロジには、次のようなものがあります。

・ 超音波センシング: 超音波を送信し、障害物から反射されて戻ってくる
  エコーを探知します。
・ 光学式ToF(Time-of-Flight)センサ: フォトダイオードを使用して、
  障害物から反射された光波を検出します。
・ レーダ・センサ: 無線周波数の電波を使用し、物体から戻ってくるエコーにより、
  移動する物体の方向と距離を測定します。

この記事では、超音波センシングに焦点を当てます。この方法は、家庭や工場でロボットが高速で動作する必要がないため、レーダよりも低速ですが低コストな方法と言えます。超音波センシングは、障害物から反射される光の量(明暗)に影響されないため、障害物の回避に関して光学式ToFよりも信頼性が高くなります。超音波センシングのもう1つのメリットは、物体の検出に光ではなく音波を使用するため、ガラスなどの透明な面も検知できることです。

最先端のロボット掃除機を作るためのリファレンス・デザインをチェックしましょう。

サービス用ロボットの詳細

多くのロボット用アプリケーション
ロボット掃除機は、命令を受けたり、設定されたスケジュールに従ったりして、ホームベースを離れ、室内を動き回って床を掃除します。このシステムを設計するためのよい方法は、掃除機の両側に埋め込まれた超音波センサを使用して、360度全体をカバーすることです。センサの間隔や個数は、掃除機の形状と超音波センサの視野(Field of View: FOV)に依存します。

ロボット掃除機が動き回る間、超音波センサのネットワークが障害物をマッピングし、障害物からの距離を計算し、この情報をCPUに提供することで、障害物を回避します。統合された超音波センサによる同様なアプローチが、ロボット芝刈機、対話型のロボット玩具、レストランや小売店のサービス用ロボットなどにも使用されます(図1を参照)。

図1:サービス用ロボットの例

2番目の例として、組み立てラインのロボットや、工場のフロア内や倉庫内、またはそれらの間で原料や完成品を運搬するロボットを考えます。

現代の工場では、図2に示すように、ロボット・アームが部品をつまみ上げて適切な位置に置き、ナットやボルトを取り付けることで、製品を組み立てます。工場の所有者やロボット・システム・メーカーが抱く主な懸念の1つは、フロア上の複数のロボット間で衝突が起こらないようにロボット・アームを設置することです。ロボット・アームや移動ロボット車両内の適切な位置に取り付けられた超音波センサによって、近くの物体の知覚と距離情報が得られ、ロボット・システムのCPUがそれらの情報を利用して衝突を回避することができます。

図2:組み立てライン用ロボット・システム構成要素

ロボットで使用される超音波による障害物回避システムには、以下のような構成要素が含まれます。

・ 超音波トランスデューサ:これは、AC電圧が印加されると振動して超音波を発生させる圧電性結晶であり、反射波を受けると逆の動作を行います。トランスデューサには2つの種類があり、クローズド・トップ型は圧電性結晶が密封されて外部の環境から保護されています。オープン・トップ型は結晶が露出しているか、スピーカーのメッシュのようなもので覆われています。クローズド・トップ型のトランスデューサには高い駆動電圧が必要であるため、システム内に追加の部品としてトランスが必要になります。

・ トランス:シングルエンド型またはセンタータップ付きトランスによって、クローズド・トップ型トランスデューサの駆動に必要な高電圧を生成します。

・ 超音波信号プロセッサおよびトランスデューサ・ドライバ:例として、TIの『PGA 460』は、トランスを駆動し、反射波により発生する電気信号を処理し、関連するエコーのそれぞれについてToFデータをリアルタイムで計算します。

・ CPU:ロボット・システムのCPUは、ロボットの周囲に取り付けられた複数の超音波センサからのToF情報を使用して、障害物をマッピングし、プログラミングにしたがって、ロボットを停止させたり、障害物を避けて動かしたりします。

超音波トランスデューサとTIの『PGA 460』超音波信号プロセッサおよびドライバICを組み合わせた超音波トランシーバ・モジュールの例を、図3に示します。このモジュールのデザイン・ファイルは、TIからユーザー向け参考資料として提供されています。

図3:超音波トランシーバ・モジュールの例

超音波センシングの導入 超音波センシングは、家庭用および工場用ロボット・システムのための、信頼性、実用性、およびコスト効果の高いソリューションです。TIでは、さまざまなアプリケーションのニーズに応えるために、いくつかの異なるデバイスを提供しています。

また、このテクノロジを特定の製品向けに迅速に開発できるように、テクノロジ評価モジュール、トランスデューサ選択ガイド、個別のトランスデューサ用のプロセッサ調整、EMIに対する最適な基板レイアウト、小型モジュール用のデザイン・ファイルなど、幅広い範囲の資料を用意しています。

参考情報
+ 超音波センサ概要
+ ホワイト・ペーパー ”Achieving increased functionality and efficiency in vacuum robots.
+ 技術記事「超音波テクノロジによってホーム・オートメーションの利便性と性能を向上させる方法
+ 技術資料『PGA 460
+ 産業アプリケーション向け概要

※上記の記事はこちらの技術記事(2017年11月20日)より翻訳転載され、2019年3月に更新されました。
※ ご質問はE2E Support Forumにお願い致します。








日本テキサス・インスツルメンツ株式会社ホームページはこちら

キーワードをクリックして関連ニュースを検索

#日本テキサス・インスツルメンツ
#ロボット
#2019年8月8日