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日本唯一のショーファーカー「センチュリー」と匠の技【トヨタ自動車】

2019年5月15日

歴代センチュリーの生産を担うトヨタ自動車東日本 東富士工場。新型センチュリー生産の現場で、その匠の技に迫った。

日本唯一のショーファーカー(専属の運転手がいるオーナー向けの車)である「センチュリー」。2018年6月のフルモデルチェンジにより、3代目センチュリーが誕生した。歴代センチュリーは、トヨタ自動車東日本(旧 関東自動車工業)の東富士工場において1台ずつ手作業でつくられてきた。そこで生産を担う作業者たちの、「匠の技」の一端を垣間見た――。

センチュリーの工場は、ほかの車の工場とは大きく異なる。車を次々と送る長い生産ラインもなく、設備や機械の発する大きな音も聞こえない。静かで広々とした空間において、「クラフトマン(職人)」と呼ばれる少数精鋭・熟練の作業者により、まるで作品を創るかのように車がつくられていく。生産工程は、「プレス」「ボデー」「塗装」「組立」「検査」の5つだ。各工程において、センチュリーらしい匠の技が随所に織り込まれている。

センチュリーと「几帳面」

新型センチュリーのエクステリアデザインにおける注目点のひとつは、サイドボディのキャラクターラインに施された「几帳面」だ。「几帳」とは平安時代の貴族が自身の姿を隠すために使用した間仕切りのことだが、几帳の柱に使われた、角を丸め両側に刻み目を入れる特徴的な面取り(角を滑らかにする仕上げ)から、几帳面と呼ばれるようになった。緻密さが求められる細工であったことから、「几帳面だ」という、物事を正確に行うさまを意味する形容詞が生まれたと言われている。 センチュリーのボディでは、熟練の作業者の手で、わずかな面の歪みを修正しながらこの几帳面が仕上げられている。

 

 

 

プレス機で加工されたボディパネル上の凹凸を微調整しながら、滑らかで精度の高いラインを生み出す。面を平らに仕上げていくサンダー掛けは、作業者の息継ぎさえも力の伝わり方に影響するほど、繊細な調整が求められる作業だ。

あえて「ずらす」職人技
ボディを仕上げるうえでは、几帳面のラインがフロントからリヤまで段差なく合っていなければならない。しかし高級車ゆえにドアが非常に重く厚いため、後の組立工程で内装品の重量が加わると、ドア後端が下がり段差が生じてしまう。そのため、まずは「戸上げ」と呼ばれる技法を使う。下がることを見込み、あえて段差を付けた状態で取り付けることで、完成時に美しく見えるように調整するのだ。

最後に、ボディが寸分の狂いなく仕上がっているかどうか、すべてのボディパネル面に対して横から目視で確認する「透かし見」で品質確認を行う。

伝統とお客様が映える「鏡」
新型センチュリーの外板色設定は4色展開だが、なかでも代表的な色は新規開発のエターナルブラック「神威(かむい)」だ。センチュリー独自のプロセスにより、奥深い艶と輝きをもつ漆黒を追求した。

一つ目は、塗膜層の多さ。一般的な車が4層構成であるのに対し、センチュリーは黒染料入りのカラークリアなど7層を重ねて奥深い色味をつくり出す。二つ目は、「水研ぎ」と呼ばれる工程。塗装と塗装の間で3回、塗装面の微細な凹凸を流水の中で研ぎ、滑らかで均一な表面に整えていく。下地を丁寧につくることが綺麗な仕上がりの要だ。最後に「鏡面磨き」により、一点のくもりも残さないように仕上げていく。

ちなみに、新型センチュリーの生産開始前に、作業者たちは石川県にある輪島塗の工房を訪れ、日本伝統工芸の漆塗りを学んだ。最高品質の漆黒を実現するうえで、平滑で艶やかな漆黒を生み出す漆塗りの技術を参考にするためだ。

鏡面磨きのデモンストレーション

 

センチュリー 匠の技

 

また、センチュリーのお客様の多くはVIPの方々だ。後部座席から降りるときに、センチュリーのボディが上質な鏡となり、さりげなく身だしなみを確認できる。鏡面仕上げにはセンチュリーならではの心遣いも込められている。

研ぎ澄まされた感覚
フロントシートの間に設置するタワーコンソールの取り付けも手作業で精密に行われている。カギはシートとの隙間を均等にすることだが、熟練の作業者は、左右への傾き度合いを感じ取り、タワーコンソールの傾きを調整するボルトを回していく。数値化できるものではなく、トヨタで「カン・コツ」と呼ばれる、人の感覚や熟練度への信頼で成り立つ作業だ。

最高品質の検査
センチュリーの最高品質を保証するために、最終検査は非常に重要だ。なかでも、こだわりの塗装面は2種類の照明を使い分けて品質を検査する。

まずは蛍光灯を使い、塗装面に反射する蛍光灯の映り方を見ながら、面の歪みやキャラクターラインの通り方を確認する。

次に使うのは人工太陽灯だ。新型センチュリーでは、屋外などお客様の使用環境により近い状態で念入りに評価をするために、すべての生産車両に対して人工太陽灯による検査を行っている。時間と手間を惜しまずに1台ずつ最高品質をつくり込むセンチュリーならではの検査だ。

センチュリーの生産工場内には、「ヒストリーブック」が保管されている。生産されるすべての車両に対し、各工程を終えるたびに、担当した作業者の名前や日時とともに検査結果を記録している。手作業で時間をかけて丁寧につくり上げられるセンチュリーだからこそ、1台が誕生するまでの軌跡が大切に刻まれている。

伝統と品格の番人
「クラフトマン」と呼ばれる熟練の作業者たちは、50年を越えるその歴史を誇りに思い、その技能にこだわりを持つ。機械的な作業ではセンチュリーは完成しない。受け継がれた伝統の重みを受け止め、生産を許されるまで修行を重ねてきた作業者たちだからこそ、お客様のために丹精込めた1台をつくることができる。センチュリーの伝統と品格は、こうしたモノづくりの現場でも形づくられ、今後も受け継がれていくのだ。








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