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DLPテクノロジを用いた高解像度アダプティブ・ヘッドライトの開発【日本テキサス・インスツルメンツ】

2019年1月23日

今ヘッドランプでまぶしさを抑えたハイビームを実現するために、設計者は、ピクセル・レベルのデジタル制御を使用できるようになりました。

従来では、一般的な自動車のヘッドライトは、暗い状況や悪天候でのドライバーの視認性を高めるため、自動車の前にある物体のみを照射していました。ハイビームは長距離で幅広いアングルに照射し、ロービームは車両前面の近距離の道路を照射します。しばらくはそのような方法でしたが、ヘッドライト・システムには新しい技術進歩による大きな変革がもたらされています。

1950年代の米国では、自動車メーカーは車両前面に2つのシールドビームを採用し始め、最終的にハイビームとロービームの両方を備えた自動車に進化しました。そして2018年には、さらに複雑なヘッドライト・システムが自動車に採用されています。発光ダイオード(LED)の光源が従来のハロゲンやキセノンの電球に取って代わっています。自動車メーカーが、進歩のない白熱電球からダイナミックでスタイリッシュなLED照明に移行したように、LEDは近い将来キセノンに取って代わり、ゆくゆくはハロゲンに取って代わるでしょう。

残念ながら、数十年の進化にもかかわらず、米国国家道路交通安全局(NHTSA)のレポートによると、2015年に米国で発生した全事故の約30%は夜間に起きました。IHS Markitのレポートでは、米国での全事故の50%は視力の低下によるもので、この数値は人口の高齢化につれて増加が報告されています。

ドイツのダルムシュタット工科大学によると、視覚機能において、高齢のドライバーは視力の低下、年齢に関係する瞳孔の縮小、暗反応の低下など、さまざまなタイプの機能低下を体験しています。25歳のドライバーと比較して、60歳から65歳のドライバーは、同じレベルの視覚機能を実現するためには2倍の照度とコントラスト、および、まぶしさを半減することが必要です。

ヘッドランプの歴史を通じて、ハイビームからのまぶしさによって集中が乱されたり、一時的に視力が失われたりする可能性があるにもかかわらず、まぶしさを防ぐことは常にドライバーに委ねられ、唯一の制御方法はハイビームとロービームを切り替えることでした。その結果、ドライバーはヘッドライトの操作レバーに指を添えて、他のクルマが走行していないときはハイビームをオンにし、他のクルマが見え始めるとハイビームをオフにしています。しかし、どうすればハイビームのままにして運転中の視認性を高めることができるでしょうか?

図1:アダプティブ・ドライビング・ビーム(ADB)技術の使用事例

この機能は、先進運転支援システム(ADAS)と外部の照明システムを組み合わせたアダプティブ・ドライビング・ビーム(ADB)ヘッドライト技術(図1)によって可能になります。ADAS技術に加えて、TIではDLP®チップセットを提供しています。このDLPチップセットではADB技術による自動車のヘッドライトの細かな制御が可能で、自動車メーカーやティア1サプライヤはそれぞれのヘッドライトで100万以上のピクセルを個別に制御できるようになります。この技術により、他のドライバーや歩行者が見えなくなる範囲でヘッドライトを消灯できます。また、車線境界線やルート案内のような道路上の塗装された情報に対してプログラミングすることもできます。

マイクロミラー
すべてのDLPチップセットの中心は、アルミニウム製のマイクロミラーの配列です。デジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)としても知られています。DMDには、設定に応じて数十万または数百万の個別に制御されたマイクロミラーが格納されています。各マイクロミラーは下層のCMOSメモリセル上に構築されています。

それぞれの反射ミラーには柔軟なメカニカル構造があり、ミラーを2つのアドレス電極に取り付けることができます。これらの電極はメモリセルに接続され、ミラーを2つの安定した状態のいずれかに配置するために補完的な静電気を生成します。

光学システムに統合した場合、DMDは、それぞれの取り付けられたミラーの位置によって入射光の反射方向が決まる、対称でバイステートな光学機械エレメントになります。DMDは動作周波数が高いピクセルサイズが小さいため、高速な調節と低いシステムレイテンシーが可能になります。この結果、自動車メーカーは道路を照射する光をさらに細かく制御でき、ドライバーの視認性が高まります。

DLPテクノロジに対応しているシステムでは、LEDやレーザー/蛍光体、レーザーによる直接光源など、あらゆる光源と連携でき、既存のADBソリューションよりも消費電力の少ない、小型でスタイリッシュなレンズを使用するように設計できます。また、DLPテクノロジは効率的かつ拡張可能で、同時に、暗い状況での観察距離や視認性を高めるための光線を高度に制御できます。

競合するまぶしさを抑えたハイビーム・ヘッドライト・ソリューションは、ランプの個々のLEDを暗くするか、光線を対向車線に対して下向きや横向きに変更します。一部のソリューションはハイビームとロービームを切り替えます。他のソリューションでは自動車が曲がるときに光線を回転させます。実際には、これらのシステムで行っていることは、まぶしさを防ぐためにヘッドライトを消灯するか、ヘッドライトの光をブロックして対向車や先行車を隠すことです。一般的に、LEDのマトリックス型ソリューションでは、LEDの一部を消灯することによって対向車のドライバーのまぶしさを軽減できます。

事前に定義された個別のビームのパターンを使用する基本的なオートオン/オフ機能は適切な方向ではありますが、このような機能では、完全なリアルタイムの適応性を備えた光線を開発するために必要な制御レベルは得られません。解像度と適応性が魅力的である理由は、道路標識の照射と道路標識の認識といったADAS機能を有効にできるためです。この機能は、業界が半自律運転や自律運転を目指しているため、自動車に必要なものです。

図2:ADB技術を利用して道路標識の視認性を高めることができます。

高解像度ヘッドライト・システム向けのTIのDLPテクノロジの利点として、歩行者(図2)や対向車のドライバーなど、物体に対して同時にまぶしさを軽減できます。視野角ごとに多くのピクセルを使用することにより、センサーによって情報が提供されるタイミングから、ヘッドライトが反応するタイミングまでの時間(システム・レイテンシ)を短縮することで、高い精度を実現できます。その結果、システム上のライトのスループットが向上し、道路での制御と表示に使用できるライトが増えます。低レイテンシにより、複雑な人工知能ベースの予測アルゴリズムで物体の次の移動先を判断する必要性がなくなります。

DLPテクノロジをベースにしたシステムでは、追加のセンサーの入力データを使用して、対向車のフロントガラスに照射されるヘッドライトの一部を消灯します。このライトはまぶしさの原因となり、他のドライバーに不快感を与え、集中力を低下させます。ヘッドライト・システムにDLPを使用すると、ピクセル化されたヘッドライトの光を非常に細かく制御して、夜間の運転中の視認性と快適性を高めるためにアダプティブ・ハイ・ビーム機能を有効化できます。図3は、DLPチップセットがヘッドライト・システムで使用されているシステム・ブロック図の例を示しています。

図3:DLPチップセットが使用されているシステム・ブロック図

高解像度ヘッドライト・システム向け『DLP5531-Q1』チップセット(図4)を使用すると、エンジニアは小型システムでのカスタマイズが可能なビーム・パターンを通じて、道路上でより精度の高い配光を制御できます。また、このシステムでは個々のピクセルの一部または全体の消灯が可能で、他のドライバーに影響を与えずに安定的にハイビームを利用できます。

図4:TIの『DLP5531-Q1』チップセットは高解像度ヘッドライト・システム向けにTIによって開発されました。

ヘッドライト技術の将来的な利用
多くの自動車メーカーやティア1サプライヤが、視認性強化の利点に注目しています。また、DLPテクノロジはプログラミングが可能です。その結果、半自律運転車や自律運転車で必要とされる新機能を設定できます。 ヘッドライト・システム向けのDLPテクノロジでは、ADASとともに使用して、ドライバーが標識をはっきりと確認できるように、交通標識などの特定の場所に適切な光を照射できます。車線や案内表示など、道路の前方のイメージや標識を照射できる機能により、ドライバー、歩行者、他の車両との間のコミュニケーションが強化されます。この機能は、業界が目標としており、重要性を増しています。

この技術を用いたヘッドライト・システムは、歩行者に信号やサインを送り、自動車が次に行うことを伝えて自動車と歩行者のコミュニケーションを強化するようにプログラミングできます。また、ドライバーに対する関連情報(ナビゲーションのサポート、自動車の軌道など)のシンボルの投影や表示のような、専用レーンのマークや自動車とドライバーの機能の強化は、将来の自動車の重要な検討事項です。

その他の仕様
DLP5531-Q1』チップセットは、ヘッドライトあたり100万以上のアドレス可能なピクセルをサポートしています。(LEDやレーザーなど)あらゆる光源とともに使用して、-40°Cから105°Cの間で動作し、温度や偏光に関係なくクリアなイメージの視認性を実現できます。

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※上記の記事はこちらのBlog記事(2018年11月20日)より翻訳転載されました。

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