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世界初、イオン注入ドーピングを用いた縦型酸化ガリウム(Ga2O3)トランジスタ開発に成功【情報通信研究機構】

2018年12月12日

世界初、イオン注入ドーピングを用いた縦型酸化ガリウム(Ga2O3)トランジスタ開発に成功
~汎用性の高いデバイスプロセスを採用、低コストGa2O3パワーデバイス量産への道筋~

【ポイント】
■ 高性能縦型酸化ガリウム(Ga2O3)トランジスタ作製技術の開発に成功
■ 独自開発したシリコン、窒素をそれぞれ用いたn, p型イオン注入ドーピング技術を採用
■ 低コスト量産が可能、新半導体産業の創出、世界的規模での省エネ実現に期待

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸) 未来ICT研究所 グリーンICTデバイス先端開発センター 東脇 正高 センター長らは、国立大学法人東京農工大学(学長: 大野 弘幸) 大学院工学研究院応用化学部門 熊谷 義直 教授、村上 尚 准教授らとの共同研究により、イオン注入ドーピング技術を用いた縦型酸化ガリウム(Ga2O3) トランジスタの開発に成功しました。今回採用したイオン注入ドーピングをベースとするデバイス作製技術は、量産に適し、汎用性も高く、低コスト製造が可能であるため、今後電機、自動車メーカー等民間企業におけるGa2O3パワーデバイス開発の本格化につながることが予想されます。また、本開発により、これまでに報告されている同様の縦型Ga2O3トランジスタを上回るデバイス特性を実現しました。現代の省エネ課題に直接貢献可能な新半導体デバイス分野における大きな技術的ブレークスルーであると同時に、近い将来の新半導体産業の創出につながることを期待させる成果です。

 本研究成果は、2018年12月3日(月)付けで、米国電気電子学会(IEEE)誌 『IEEE Electron Device Letters』にEarly Access版がオンライン公開されております。正式版は、同誌2019年1月号(12月27日頃発行)に掲載されます。

 本研究の一部は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「次世代パワーエレクトロニクス」[管理法人: 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)]によって実施されました。

【背景】
 現在、世界規模での革新的な省エネ技術開発が急務となっています。中でも、電力変換に用いるパワースイッチングデバイスは、その用途も多岐にわたることから、個々の機器における損失低減の積み重ねが、社会全体に大きな省エネ効果をもたらします。そのため、日本はもとより米国、欧州においても、近年半導体パワーデバイス開発が活発化しています。Ga2O3は、その非常に大きなバンドギャップに代表される物性から、パワースイッチングデバイス材料として用いた場合、既存の半導体デバイスを上回る高耐圧・大電力・低損失特性が期待できます。また、融液成長法により簡便かつ安価に高品質・大口径単結晶ウェハーが製造可能という産業上重要な特徴も有します。これらの魅力的な材料特性から、現在Ga2O3パワートランジスタ、ダイオード開発が世界的に活発化しています。

【今回の成果】
 今回、NICT・東京農工大共同研究チームは、n, p両型領域をイオン注入ドーピングプロセスで形成した縦型Ga2O3トランジスタの作製、動作実証に成功しました。イオン注入ドーピング技術は、面内でのデバイス構造の作り込みが容易にでき、かつ汎用性が高い低コストプロセスであるため、量産に適しており、実際の半導体デバイス製造現場で広く用いられています。我々が大きなブレークスルーと位置づける本デバイス開発に当たっては、以前開発したシリコン(Si)を用いたn型イオン注入ドーピング技術に加え、新たに世界に先駆けて開発に成功した窒素(N)を用いたp型イオン注入ドーピング技術が鍵となりました。なお、今回開発した縦型Ga2O3トランジスタは、これまでに報告されている同様の構造のデバイスを上回る特性を示しています。

縦型Ga2O3トランジスタの光学顕微鏡写真

【今後の展望】
 今後、本共同研究チームは、パワースイッチングデバイスとして求められるノーマリーオフ化、デバイス耐圧の向上などの残された課題を解決するための開発を継続します。近い将来、縦型Ga2O3トランジスタを実際の機器に応用した場合、既存の半導体トランジスタと比べて、スイッチング動作時の大幅な損失低減が期待されます。また、イオン注入プロセスを採用することで製造コストの大幅な削減が可能となるため、企業におけるGa2O3デバイス開発の本格化につながる起爆剤となることが予想されます。高性能Ga2O3パワーデバイスは、グローバル課題である省エネ問題に対して直接貢献するとともに、日本発の新半導体産業の創出という経済面での貢献も併せて期待されます。

本プレスリリースは発表元が入力した原稿をそのまま掲載しております。また、プレスリリースへのお問い合わせは発表元に直接お願いいたします。








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