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高効率な直接メタノール形燃料電池を実現する高分子電解質膜を開発【日立製作所】
2012年3月26日
メタノール透過性を1/2に低減することなどで、発電効率を5%向上
㈱日立製作所(執行役社長:中西 宏明/以下、日立)は、このたび、直接メタノール形燃料電池(以下、DMFC)向けに、水素イオンの伝導性を低下させることなく、メタノールの透過性を約1/2(当社比)に低減した高分子電解質膜を開発しました。開発した高分子電解質膜をDMFCに適用することで、発電効率を約5%(当社比)向上する見通しを得ました。今後、日立はポータブル機器用途など小型電源への適用をめざします。
近年、災害時などに使用可能な、既存の電力網とは独立した電源へのニーズが高まっています。また環境配慮の観点から、二酸化炭素排出量が少ない電源が必要とされています。燃料電池はこれらの要求に応えるクリーンな発電システムです。特にDMFCは、液体燃料であるメタノールを燃料電池に直接供給できるため、水素製造のための補機が不要になることから小型化が容易であり、ポータブル機器電源などへの応用が見込まれています。一方で、DMFCは他の水素燃料電池と比較して、酸化反応が遅くなることなどから発電効率が低く、普及のためにはさらなる効率向上が必要です。そこで日立は、材料・システムの研究開発を進め、このたびDMFCの効率向上を実現する高分子電解質膜を開発しました。
燃料電池を構成する主要材料の一つである高分子電解質膜は、電子やガスなどは通さず水素イオンのみを透過させる性質が求められます。しかし従来のDMFCはメタノールが高分子電解質膜を透過してしまうことによる燃料ロス、発電性能の低下が生じていました。また、高分子電解質膜のメタノール透過性を低減させると水素イオンの伝導性も同時に低下し、発電性能が低下するという課題がありました。このような課題に対し日立は、高分子電解質膜の燃料吸収率がメタノール透過性に大きく影響することを見出し、燃料吸収率を低減することで高分子電解質膜の膨張を抑制する技術を開発しました。特長は次の通りです。
1. 高分子電解質膜の分子構造の改良による燃料吸収率の低減
高分子電解質膜の分子構造について最適な組成を検討しました。その結果、従来と比較して分子間相互作用を高めた構造を適用することにより、メタノール水溶液と接触した場合にも電解質膜の膨張が抑制され、燃料吸収率を低減できました。低吸収率の電解質膜を開発したことにより、従来と比較して水素イオンの伝導性を低下させることなくメタノール透過性が低減され、発電性能の低下を防ぎました。
2. 骨格部位の三次元ネットワーク化による燃料吸収率の低減
電解質膜の微細構造に着目し、電解質膜の膨張を抑制する骨格部位と水素イオン伝導部位にそれぞれ三次元ネットワーク構造を導入し、ナノオーダーで制御しました。骨格部位と水素イオン伝導部位がそれぞれ共連続構造となっているため、寸法安定性が高く、かつ効率的な水素イオン伝導が可能となりました。その結果、メタノール透過性が低く、水素イオン伝導性が高い電解質膜が得られました。
日立は、今後も地球環境への負荷を低減するクリーンな発電システムに貢献する新しい技術の開発や、その実用化に向けた取り組みを推進していきます。
なお、本技術の内容は、3月25日から29日にSan Diegoで行われるAmerican Chemical Society Spring 2012 National Meetingで発表予定です。
本開発は独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業の一環として開発された技術をさらに発展させたものです。
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