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様々なドローン機能を支援する超音波センサ【日本テキサス・インスツルメンツ】

2017年12月22日

最近、商用ドローンの人気が高まりつつあり、目を見張るような映像の撮影や、救援物資の輸送、レースにも使用されています。ほとんどのドローンでは、自動飛行、衝突検知など様々な機能を実現するために多様なセンシング技術が用いられています。その中でも超音波センシングはドローンの着陸、ホバリング、地上追跡の支援に利用されています。

ドローンに備わる着陸支援は、ドローンの最下面から地上までの距離を検知し、その場所が着陸できる安全な場所であるかを確認し、ゆっくりとドローンを下降させる機能です。GPSモニタリングや気圧検知向けのセンシング技術が着陸プロセスを支援する一方、超音波センシングはこのプロセスにおける最も重要で正確な情報源となります。また多くのドローンにはビデオ撮影や地上ナビゲーション向けにホバーや地上追跡モードが搭載されていますが、その際に超音波センシングはドローンを地上から一定の高さに保つために用いられています。このブログでは、ドローン・アプリケーションで超音波センシングが使用される理由について解説していきます。

超音波の原理

超音波は人間の聴覚の上限を超える高周波の音波と定義されます(図1参照)。

図1:超音波の範囲


超音波は広範な媒介を伝播し、不適正の音響インピーダンスを持つ対象を検知します。弾性媒体伝播することから、音の速度は1音波のユニット時間あたりの距離とされます。例えば、摂氏20度の乾燥した空気での音速は、1秒あたり343メートルです。空気中における超音波の減衰は、周波数と湿度の作用で増加するため、空気結合超音波は通常、過度の経路損失/吸収により500kHz以下の周波数に限定されます。

超音波ToF
多くの超音波センシング搭載アプリケーションと同様に、ドローンの着陸支援にはToF(Time of Flight)方式が用いられます。ToFとは、センサから対象物に発せられ、対象物にあたりセンサに戻ってきた超音波の往復時間の概算(図2参照)を指します。

図2:ドローン着陸時の超音波ToFの説明


図2と図3の1の時点では、ドローンの超音波トランスデューサが音を発し、戻ってくる信号処理経路の飽和データを示します。その後、対象に反射してエコーがセンサに戻ってくる(図2と図3の3)まで信号処理経路は無音(図2と図3の2)となります。

図3:超音波ToFの段階


方程式1は、ドローンから地上まで、またはドローンから別の対象までの距離を計算します。

distance(d)は、ドローンの超音波センサから地上または対象物までの距離で、ToF(t)は先ほど定義したToFです。SpeedOfSound(v)は、ToFが対象物に向かい戻ってきた超音波エコーの往復時間であることから2で割ります。

ドローン着陸に超音波センシングを使用する理由
対象物の近接を検知できるセンシング技術は多数ある中、超音波センシングは見地範囲、ソリューションのコスト、様々な表面に対する検知能力の高い信頼性からドローンの着陸において最適なソリューションとなっています。

ドローンの地上追跡および着陸には一般的に、最大5メートル離れた地上を検知できる能力が求められます。40-60kHzの範囲を持つ超音波センサは、この範囲に適合し、正確な信号条件と処理を得ることができます。

TIの『PGA460』は、ドローンなど空気結合アプリケーションの超音波センシング向けに設計された超音波信号プロセッサおよびトランスデューサ・ドライバで、この5メートル要件以上の能力を提供します。しかし、超音波センシングには、対象物の近接検知に限界があるというデメリットがあります。空気結合アプリケーション向けの超音波トランスデューサでは、圧電膜が反響し、超音波エネルギーを発する減衰時間またはリンギング時間と呼ばれる励起期間が発生するため、戻ってくるエコーの検知が困難になります。

リンギング時間中に対象物を効果的に計測するために、多くのドローン開発者はトランスミッタとレシーバに個別のトランスデューサを組み込んでいます。レシーバを切り分けることで、トランスミッタの励起期間中でも対象物の検知が可能になるのです。『PGA460』を使用することで、5センチメートル以下の優れた近接検知が実現します。

また、超音波センシングは特に、必要とされるほとんどのシリコンを搭載する『PGA460』のような統合ソリューションを使用する場合にコスト競争力に優れた技術です。『PGA460』は半ブリッジまたはHブリッジを使用するトランスデューサを直接稼働できる他、変圧器を使用するトランスデューサを稼働させることもできます。また、超音波エコーを受信し、調整するフルアナログのフロントエンドも搭載します。さらに、デバイス上でデジタル信号処理によりToFを演算(図4参照)することも可能です。

図4:『PGA460』の機能ブロック図


最後に、他の技術だと誤検知の恐れがある表面も超音波センシングは検知できます。例えば、ドローンを使用する際は、窓ガラスやその他のガラス表面、ビルなどに遭遇するケースが多くあります。光を用いたセンシング技術では、ガラスやその他の透明な物体を透過してしまう危険があり、窓ガラスで覆われたビル周辺でドローンを飛ばす際に問題となります。一方、超音波はガラス表面に確実に反射します。

現在、超音波センシングは主にドローンの着陸やホバリング支援に用いられていますが、その優れた対費用効果から、ドローン開発者の間でこの技術の別な応用方法が模索され始めています。急速に進化するドローン市場において、その可能性は無限に広がっています。


参考情報
+評価モジュール『PGA460-Q1
+トレーニングビデオ

※上記の記事はこちらのBlog記事(2017年10月31日)より翻訳転載されました。


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