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高性能「微多孔アラミドフィルム」の開発【東レ】

2012年2月20日

-高分子技術とナノテクの融合により、世界最高レベルの耐熱性を実現-

東レ㈱(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、このたび、独自の高耐熱ポリマーであるアラミド*1ポリマーの分子設計技術とナノ相分離構造制御技術を追求することにより、200℃の高温下でも形状や寸法の変化がない世界最高レベルの耐熱性と高い難燃性を達成するとともに、空孔率が高く、均一な孔構造を持つ「微多孔アラミドフィルム」の開発に成功しました。
東レは本開発品を、電気自動車やハイブリッド車用のリチウムイオン二次電池のセパレータをはじめとするエネルギー分野を中心に、用途開拓を進めてまいります。

リチウムイオン二次電池は高容量・高出力が特長で、パソコンや携帯電話などのモバイル機器に広く使用されています。今後はハイブリッド車や電気自動車のほか、定置用電源など様々な分野への適用拡大が見込まれています。セパレータは、リチウムイオン二次電池の正極と負極の電気的短絡を防ぐ重要な機能を担っており、大きな電気エネルギーを安全に充放電するためのキーマテリアルです。

現在セパレータには、主にポリエチレンなどの多孔質プラスチックが用いられており、電池温度が上がるとプラスチックが溶けて孔がふさがり、電流を遮断する安全機構を有しています。しかし、電池の大型化・高容量化で異常発生時に放出される熱エネルギーが大きくなると、電池内の温度上昇が大きくなるため、高温下でも寸法変化が小さく、正極と負極の絶縁性を保つことができる高耐熱セパレータ材料の開発が求められています。

これに対して東レは、以下の研究成果により、世界最高レベルの耐熱性と高い難燃性を有する「微多孔アラミドフィルム」の創出に成功しました。

1. 独自ポリマーによるナノ相分離構造制御技術

東レ独自のアラミドポリマーをベースに、高分子設計技術とナノアロイ®*2技術を駆使し、微多孔形成能の高いポリマーを新たに設計しました。また、溶液製膜技術を深化させることで、アラミド自身の特性を損なうことなく微多孔化することに成功しました。具体的には、アラミド膜の中にナノレベルの相分離構造を形成し、それを特定の孔構造に成長させました。
これによって得られたアラミドの微多孔膜は均一でバラツキの小さい網目状構造を形成しており、空孔率が高く経路長が短いため、リチウムイオン二次電池のセパレータとして用いた場合に高出力が期待できます。また、200℃の高温下でも形状や寸法、孔構造ともに変化がない高い耐熱性と難燃性を実現したことで、セパレータの変形・収縮による電気ショートを防ぎ、安全性の確保が可能となります。

2. 高速均質孔形成プロセス

ナノ相分離構造の形成と特定の孔構造の成長プロセスに長時間を要する課題に対し、相分離速度と構造の支配因子の解明、および溶液製膜プロセスのブレークスルーに成功しました。この結果、孔の形成時間を当社従来技術比で1/10以下に短縮し、量産化に向けたプロセス技術が大きく進展しました。

今回開発した「微多孔アラミドフィルム」は、リチウムイオン電池やリチウムイオンキャパシタ等のセパレータをはじめ、高耐熱、耐薬品性フィルターなど、幅広い用途展開が期待されます。東レは今後、早期の技術確立に向けて研究開発を加速してまいります。

なお、東レは本開発品を、2月29日(水)~3月2日(金)に東京ビッグサイトで開催される「第3回 国際二次電池展」に出展します。

補足説明

*1 : アラミド
アラミド(芳香族ポリアミド)は優れた耐熱性と剛性を有する高機能ポリマーで、フィルム分野においては東レが世界で唯一、ミクトロン®ブランドで製品化しています。量産フィルムで最高の剛性を活かしてデータ保存テープとして広く使用されている他、ポリイミドに次ぐ耐熱性を有することから薄膜の回路材料にも採用されています

*2 : ナノアロイ®は東レ株式会社の登録商標です。


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