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転覆リスク軽減へ復原力回復装置と搭載RORO船を開発【三菱重工業】
2012年2月8日
転覆リスク軽減へ復原力回復装置と搭載RORO船を開発
日本海運㈱から初受注、エンジニアリング事業も拡大
三菱重工業は、船舶の復原力回復装置および同装置搭載のロールオン・ロールオフ一般貨物船(RORO船)※1を開発し、初号船を日本通運グループの日本海運株式会社(本社:東京都港区)から受注した。海上人命安全条約(SOLAS条約)※2の改正により、2009年1月に航行時の安全性に関する規制が強化されたことを受け、当社独自の工夫により転覆リスクの軽減につなげた。同装置を搭載した高付加価値船舶の受注に力を注ぐほか、当社が保有する環境関連技術の社外供与も強化し、エンジニアリング事業の拡大にも役立てていく。
復原力回復装置(特許取得済み)の搭載対象となるのは同規制が適用される新造船で、RORO船のほか、自動車専用運搬船(PCTC:Pure Car & Truck Carrier)、フェリーの3船種への搭載が想定されている。いずれも多数の車両を搭載できるように船楼※3の上部を大きく確保していることから予備浮力も大きく、高速航行するため喫水線下はシャープな船型を持つ。これらの船種を対象として低コストの装置を目指し開発を行った。
航行中に損傷した際、浸水した海水を船底部の空所(ボイドスペース)に導く設備を設けることにより、重心を素早く下げて損傷により低下した復原性を高めることで転覆リスクが軽減される。
具体的には、海水を導入する空所はフィンスタビライザー室、ダクトキール(ダクト構造を採用した竜骨)、バラストタンクなどの区画で、別の機能を持つ区画と兼用させるかたちで船底部付近に確保する。各区画に対しては、海水の導入孔を設けるほか、必要に応じて空気抜き管などを船内適所に配置することにより、損傷時など非常の場合における迅速かつ確実な注水・重心低下を実現する。
同装置の採用により、船内の車両積載スペースを小区画に分割するなどの措置が不要になるため、積載車両台数の減少もなく規則強化前と同様に船内の車両移動などが円滑に行えるようになる。
受注第1号のRORO船は、船長170mでトレーラーシャーシ約170台、乗用車約100台を積載し、23ノットの船速を誇り、従来の同クラスRORO船に比べ燃費を約10%改善した省エネ船型。当社下関造船所(山口県下関市)で建造し、2013年3月の引き渡しが予定されている。
世界経済危機などの影響で新造船市場が急激に縮小し、需給の乖離傾向が長引くなか、当社は船舶・海洋事業の成長戦略として、高付加価値製品への特化および特許に裏打ちされた保有技術を国内外へ供与するエンジニアリング事業の強化に注力しており、船舶・海洋事業本部内に1月1日付で「エンジニアリング事業推進室」を設置した。
エンジニアリング事業戦略の対象となるコア技術として、泡の力で船底と水との抵抗を減らすことで省エネ・CO2削減を実現する「三菱空気潤滑システム(MALS)」や、バラスト水の無害化に関する国際規制に対応したバラスト水処理装置搭載船舶に関する技術を保有している。これら技術を活用してすでに、新造船ならびに就航船改造エンジニアリングを展開中であり、今回の復原力回復装置も、これに続く期待の差別化技術として、積極的な提案型営業に取り組んでいく。
※1 Roll-On / Roll-Off ship。フェリーのように車両が出入りするランプを備え、トレーラーなどの車両を収納する車両甲板を持つ貨物船。
大型車両もクレーンなどに頼らず、自走で入出庫し、揚陸できる。クレーンなど港湾設備が未整備の港でも迅速な荷役が可能で、日本国内の貨物輸送などで現在、主流となっている船。
※2 正式名称は「海上における人命の安全のための国際条約(The International Convention for the Safety of Life at Sea:SOLAS条約)」で、1974年に国際海事機関(IMO)により施行された。
※3 船舶の上部に船の幅一杯に設置されている、船員の居住空間などとして利用する構造物。
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