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次世代車載ネットワークの通信方式 CAN FDにおけるデータ通信の信号を劣化させるリンギングを低減する技術を開発【日立オートモティブシステムズ】
2017年5月24日
日立オートモティブシステムズ㈱(社長執行役員&CEO:関 秀明/以下、日立オートモティブシステムズ)は、次世代高速車載ネットワークの通信方式として期待されるCAN FD(CAN with Flexible Data rate)の課題だった、データ通信の信号を劣化させる、リンギングといわれる現象を低減する技術を開発しました。2020年以降の実用化をめざします。
現在、自動車の電子制御化の動きはますます進んでおり、今後はさらに電動車両の普及や、ADAS(Advanced Driver Assistance System)などの運転支援機能の充実により、搭載される電子機器は増加していきます。それに伴い、車載ネットワーク上のECU (Electronic Control Unit:電子制御ユニット)間で行われるデータ通信量も増加していきます。車載ネットワークのデータ通信方式として、CAN(Controller Area Network)*が広く用いられていますが、データ通信速度が500Kbps程度であり、一層の高度化が見込まれる運転支援システムや、開発が進められている自動運転車両などの制御には限界があるといわれています。
CANを改良したCAN FDは、最大8Mbpsの速さでデータ通信することが可能であり、次世代車載ネットワークのデータ通信方式として期待されています。しかし、データ通信の高速化に伴い、信号の品質を劣化させるリンギングといわれる現象が課題でした。データ通信をする際、ECU間でデータを電気信号にして通信しますが、ECU間のネットワーク上には信号の流れやすさを示すインピーダンスが違うところが存在します。インピーダンスが違うところでは電気信号が反射し、反射ノイズが発生し、それにより信号が歪み、信号の品質が劣化する現象がリンギングです。リンギングは従来のCANの通信でも存在しましたが、CANのデータ通信速度である500Kbps程度では、データ通信が困難になることはありませんでした。しかし、CAN FDでデータ通信速度が高速になると、リンギングの影響によりデータ通信が正しくできなくなり、対策が求められていました。
当社では、リンギングを低減するため、通信速度に応じ最適な経路で電気信号を送信する独自の技術、中継回路方式を開発しました。この方式では、中継回路が通信速度の速い電気信号と遅い信号を別の経路で送信できるように、ネットワークの構成を切り変えることができます。その結果、反射ノイズの影響を低減し、リンギングを従来の方式より約37%低減することができました。この技術により、CAN FDによる車載ネットワークのデータ通信を、より高速なものとすることができます。
なお、本技術の詳細は、自動車技術会主催の「2017年春季大会」のなかで下記の通り発表を予定しています。
日時:5月25日(木)9:30~11:35 セッション番号44
「自動運転の時代におけるマルチメディア技術」の中で以下の演題で発表されます
演題:CAN FDのリンギングを低減する中継回路
場所:パシフィコ横浜 会議センターメインホール /3F
日立オートモティブシステムズは、今後ますますデータ通信量が増えることが見込まれる、高度化する自動車の制御を支え、自動車メーカーが進める先進安全運転技術の搭載車両や自動運転車両の開発、普及に貢献していきます。
*Bosch社が1985年に車載ネットワーク用に開発した通信方式。1993年にはISO 11898という国際規格として標準化され自動車をはじめ工業用通信の標準にもなっている通信方式。
会社概要
日立オートモティブシステムズ㈱
本社 :東京都千代田区大手町二丁目2番1号 新大手町ビル
事業内容:自動車部品および産業用機械器具・システムの開発、製造、販売およびサービス
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