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HEV/EV向け世界最小クラスのインバータ・キット・ソリューションを開発【ルネサス エレクトロニクス】

2017年4月10日

HEV/EV向け世界最小クラスのインバータ・キット・ソリューションを開発
〜同梱のキャリブレーション・ツールでモータの性能を最大限に引き出し、すぐに実車で評価可能〜


ルネサス エレクトロニクス㈱(代表取締役社長兼CEO:呉 文精、以下ルネサス)は、このたび、中型〜大型・SUVなどのHEV(Hybrid Electric Vehicle)および中・小型EV(Electric Vehicle)など、100kW(キロワット)級のモータ向けでは世界最小クラスとなる容積3.9Lの省スペースを実現する「100kWクラス・インバータ・ソリューション」を開発しました。

新ソリューションは、マイコン、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)/FRD(Fast Recovery Diode)などのパワー半導体をはじめとするハードウェアに加え、モータの性能を最大限に引き出すソフトウェアをキットとして同梱するもので、(1)世界最小クラスとなる3.9L(リットル)のインバータにより狭い空間にも搭載可能、(2)モータの性能を最大限に引き出すキャリブレーション・ツール(ソフトウェア)により、試作したインバータ・システムをすぐに実車で評価可能、(3)HEV/EVモータに特化した各種デバイスの搭載により、インバータ損失を当社従来品と比べ10%改善させ燃費向上に貢献、といった特長を有しております。
新ソリューションを使うことでユーザは、インバータ・システムの仕様検討、ハードウェア/ソフトウェア開発、モータ特性の合わせ込みまで、一例として2〜3年かかる試作開発を1年へ半分以上短縮し、開発工数・費用を大幅に削減することが可能となります。

近年、地球温暖化による異常気象や、大気汚染の深刻化に伴い、自動車分野では、CO₂排出量を削減できるHEV/EVなど電動化システムの普及拡大が早期に求められています。電動化システムにおいては、バッテリからの直流電流を交流電流に変換し、運転状況によって回転数が変化するモータへ適切な電流を流すインバータという部品が不可欠です。そのため、より燃費または電費効率の高いインバータ・システムの実現に向けてモータ駆動の高精度化・高効率化に加え、あらゆる車種でエンジンルームの狭い空間に電動ユニットを搭載するためにインバータの小型化が求められています。
当社はこれまで、様々な容量のインバータ・ソリューションキットを開発しており、2014年には50kWクラスで2.9Lのサイズを実現したソリューションを開発しました。新ソリューションは、大きい車両への搭載ニーズに応えて、100kWクラスの大出力モータに対応したラインアップを拡充し、さらにモータのキャリブレーション・ツールも同梱したものです。
新ソリューションの特長の詳細は以下の通りです。

(1)世界最小クラスとなる3.9Lのインバータにより狭い空間にも搭載可能
IGBTに温度センサを内蔵することで高応答性・高精度な温度管理を実現し、インバータ・システムに搭載するヒートシンクのサイズを小型・軽量化できる。また、搭載するマイコンには、モータ制御をCPUの代わりに専用回路で実行できるEMU(Enhanced Motor control Unit)機能を内蔵している。これにより、DC/DC変換器やセカンドモータ、冷却ポンプをはじめ外部の車載制御ユニット(Electronic Control Unit、以下ECU)のCPU処理を取り込むことができるため、車載ECUの統合、つまりエンジンルームの狭い空間の有効活用が可能。

(2)すぐに実車で評価可能なソフトウェアをキットに同梱しており、開発期間の半減が可能
インバータ・ソリューションは、ハードウェアだけでなく、モータの性能を最大限に引き出すキャリブレーション・ツールもキットに同梱。これを活用することで、モータ制御におけるシステムレベルでの高効率を容易に構築できる。ユーザは、試作したインバータ・システムをすぐに実車で評価することができるため、例えば2〜3年かかる試作開発を1年へ半分以上短縮することが可能。

(3)HEV/EVに特化した各種デバイスによる高効率化で、燃費または電費向上に貢献
低オン損失および低スイッチング損失を改良したルネサス製IGBT/FRDの搭載により、電流の損失を約12%低減(当社従来比)できる。また市場で実績のある、モータの回転角度をアナログからデジタルへ変換するRDC機能(Resolver to Digital Converter)を内蔵したマイコン「RH850/C1H」は最大12ビットから16ビットの高精度でモータを制御し、マイクロアイソレータ技術(注)を内蔵したドライバIC「R2A25110」は高速スイッチングが可能。新ソリューションは、これらHEV/EVに特化した車載品質のルネサス主要デバイスの搭載により、インバータの損失を約10%改善(当社従来比)している。これにより、インバータ効率が上がり、HEV/EVの燃費および電費向上に貢献する。

従来、ルネサスはユーザへマイコン、パワー半導体などを個別に提案しておりましたが、新ソリューションによりこれまでの経験値を盛り込んだシステムレベルのキットとして提案できるようになります。
当社は新ソリューションを、HEV/EV市場へのシェア拡大に大きく貢献するものと位置づけ、今後も積極的にソリューションのラインアップを展開する計画です。また同時に、HEV/EVの普及と低CO₂排出社会の実現に貢献してまいります。

なお、ルネサスは、本年4月11日(火)にザ・プリンス パークタワー東京(東京都港区)で開催する当社最大のプライベート総合展「Renesas DevCon Japan 2017」で100kWクラス・インバータ・ソリューションを紹介する予定です。
新ソリューションの主な仕様は、別紙をご参照ください。


(注)マイクロアイソレータとは、半導体チップ上に、配線層を利用して形成したトランスを利用した信号伝達と絶縁機能を兼ね備えた回路のこと。小型・集積化に適しており、IGBTの駆動回路などとの一体化が可能。
*本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。


<別紙>
■「100kWクラス・インバータ・ソリューション」の主な仕様

※本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。








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