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世界初 熱硬化性と熱可塑性の長所を両立した新材料「NS-TEPreg™」発売【新日鉄住金マテリアルズ】

2016年7月12日

世界初 熱硬化性と熱可塑性の長所を両立した新材料「NS-TEPreg™」発売
~常識を覆し、炭素繊維の新たな市場開拓に挑む新商品~


新日鉄住金マテリアルズ㈱(代表取締役社長:山田健司、以下「当社」)は現場重合(硬化)型新規フェノキシ樹脂を用いた炭素繊維熱可塑性プリプレグ「NS-TEPreg™(エヌエス テプレグ)」の開発に、世界で初めて成功しました。

近年需要が高まる炭素繊維強化プラスチックは、一般的にプリプレグを積層し、加熱・加圧・冷却して成形します。炭素繊維強化プラスチックは、大きく熱硬化性タイプ(CFRP※1)と熱可塑性タイプ(CFRTP※2)の2つに分類されます。
CFRP用の熱硬化性プリプレグは粘着性・柔軟性がある(半硬化)ので作業性が良いという特徴があります。その成形品であるCFRPは優れた強度・剛性を有す反面、加熱しても鉄やプラスチックのように変形しないため、二次加工性や量産性に課題があります。また、耐衝撃性も高くありません。
一方、これまでのCFRTP用の熱可塑性プリプレグは、粘着性・柔軟性がなく(完全硬化)作業性がよくありません。その成形品であるCFRTPは耐衝撃性が高く、加熱すると柔らかくなるため変形しやすく、二次加工性は優れますが、強度・剛性の面ではCFRPよりも劣ります。
そこで、近年、良好な作業性を有し、成形しCFRTPとなっても、CFRP同等の優れた強度・剛性を実現する熱可塑性プリプレグの開発が求められてきました。
今回当社が開発に成功した「NS-TEPreg™」(熱可塑性プリプレグ)は、従来の熱硬化性プリプレグの良好な作業性を有し、成形しCFRTPとなってもCFRPと同等の優れた強度・剛性を実現し、熱可塑性の耐衝撃性、二次加工性も有するという両方の長所を両立した、これまでの常識を覆す画期的な新材料です。




1.「NS-TEPreg™」とは
「NS-TEPreg™」は、新規フェノキシ樹脂を用いたプリプレグです。今回開発した新規フェノキシ樹脂は、通常のエポキシ樹脂と同様に未硬化の状態では液状でありながら、硬化が完了した後はプラスチック同様の熱可塑性を示すという特殊な樹脂です。本新規フェノキシ樹脂に加え、さらに、この樹脂の硬化反応を半硬化状態にコントロールする製造技術も開発することで、世界で初めて高品質の“半硬化状態の熱可塑性プリプレグ”「NS-TEPreg™」の量産化に成功しました。
「NS-TEPreg™」は、熱硬化性プリプレグ同様に半硬化状態なので、その成形に、一般的なCFRPの成形設備がそのまま適用出来るので、お客様にとっては、新たな設備投資が不要というメリットもあります。


2.「NS-TEPreg™」を用いた成形品(CFRTP)の優れた性能
さらに、「NS-TEPreg™」により作られたCFRTPは優れた性能を発揮します。従来の熱可塑性プリプレグを用いて作られたCFRTPは、炭素繊維と樹脂との接着力が低く、炭素繊維が持つ高強度・高弾性といった優れた性能を十分に発揮できませんでした。一方「NS-TEPreg™」を用いて作られたCFRTPは、炭素繊維と樹脂との接着力が高いため、CFRPと同等の高強度・高弾性といった性能を発現します。
さらに、「NS-TEPreg™」に用いられる新規フェノキシ樹脂は、靭性(粘り強さ)が高いことから、一般的なCFRPに比べて、成形品の層間強度が高く剥離しにくい特徴があります。
これらの接着力、強度、樹脂の靭性により、優れた耐衝撃特性も示します。また、樹脂の特殊な構造から、熱可塑性の樹脂でありながら、耐水性に優れ、湿気にも強く、吸湿による寸法変化や性能低下が小さいという特徴もあります。


3.ピッチ系炭素繊維を用いた「NS-TEPreg™」の成形品の特徴
炭素繊維には、PAN 系とピッチ系がありますが、PAN系がアクリル繊維を原料とするのに対して、当社の子会社である日本グラファイトファイバー㈱(以下NGF)が提供するピッチ系炭素繊維(商品名GRANOCOR=グラノック)は製鉄プロセスから副生するコールタールピッチを原料とし、独自の技術を使って精製・改質した後、独自の製造技術により炭素繊維としたものです。ピッチ系炭素繊維は、PAN系炭素繊維では実現できない、高剛性(たわまない)、高熱伝導性(熱が逃げやすい)、低熱膨張(温度による伸び縮みがない)、高振動減衰性(振動が直ぐ止まる)、といった特性があります。
従来は主に剛性や振動減衰が要求される軽量ロールや製造装置のロボットアーム、宇宙空間の構造材等に利用されてきました。
最近の電子機器は、高性能化に伴い機器内部での発熱量が大きくなり、さらに、電子機器の薄型化・小型化による冷却デバイス等の省スペースが求められています。これらの熱対策の為に電子機器の放熱特性の向上が一段と要求されるようになってきています。NGF製の優れた熱伝導性を有するピッチ系炭素繊維を用いた「NS-TEPreg™」での成形品は、高剛性、低熱膨張、高振動減衰性といった優れた性能に加え、電子機器・機械部品などの熱源付近での蓄熱(ヒートスポット)を抑え、遠くまで熱を拡散させる放熱特性も有し、熱対策に非常に有効な、画期的な新材料です。


4.「NS-TEPreg™」の今後の展開
「NS-TEPreg™」は、優れた物性(強度・剛性・耐衝撃性)と加工性を有することから、例えば、義足、義肢などの医療用装具や、スポーツ用プロテクター・自転車といったスポーツ用具等、多様な個人の体型や好みといった一品一様の「カスタマイズ」を低コストで可能とします。
近年、ハイブリッド車(HV)、電気自動車(AV)、燃料電池自動車(FCV)の出現にも見られるように、自動車の環境問題への対応は、自動車メーカーの直面する喫緊な課題となっています。
これら課題解決の一助としてメイド・イン・ジャパン技術である炭素繊維も既に自動車へ適用されつつあり、特に量産性・リサイクル性に優れる熱可塑性樹脂についても様々な研究・開発が行われていますが、実用化には至っていないのが現状です。今回の「NS-TEPreg™」は、従来の熱可塑の課題が克服でき、自動車用途への展望が大きく開けました。
さらに、新日鉄住金グループの強みを活かし、鉄と炭素繊維の融合(マルチマテリアル)により、自動車の軽量化・燃費向上への貢献、ひいては地球温暖化やエネルギー問題といった環境問題の解決の一助を目指して参ります。



< 語句解説 >
*1,2 CFRP,CFRTP
熱硬化性炭素繊維強化複合材(Carbon-Fiber-Reinforced Plastic)、熱可塑性炭素繊維強化複合材(Carbon-Fiber-Reinforced ThermoPlastic)。母材に熱硬化エポキシ樹脂か熱可塑性樹脂(汎用プラスチックなど)を用いられた炭素繊維強化プラスチック。


<本件に関する問い合わせ先>
新日鉄住金マテリアルズ㈱ 広報
(日本グラファイトファイバー㈱へのお問い合わせも承ります。)
電話 080-4601-7899(直通)  E-mail kawai.p8s.kayoko@nsmat.nssmc.com








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