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温度特性に優れた車載用ソフトフェライトコア材料を新たに開発【日立金属】
2016年4月11日
日立金属㈱(以下 当社)は、このたび、広い温度範囲下で優れた低損失特性を示す車載用ソフトフェライトコア材料「ML29D」を開発し、量産体制を整えました。新材料「ML29D」の使用により、自動車電装部品に用いられるトランス、インダクター等の電子部品のさらなる高効率化、高信頼性化、小型軽量化が期待されます。
1.背景
当社は、自動車電装部品をはじめとするさまざまな電気回路に搭載される軟質磁性材料の一つとして、ソフトフェライトを製造・販売しています。磁心(コア)材料として安定した品質を高く評価いただいており、多くのお客様に採用されています。
近年、自動車の電装化がますます進展するとともに、搭載される電子部品の高効率化と高信頼性への要求が高まっています。また、省スペース化の要求に伴い、高密度に搭載される各電子部品は、これまで以上に小型軽量化が求められています。加えて、エンジンルーム近傍での使用も予測されることから、これまで以上に広い温度範囲での性能や信頼性の向上が望まれています。
トランス、インダクター部品などに使用されるコア材料は、磁心損失*1 があります。この損失は熱に変換され、熱源として周囲の温度を上昇させる要因となることがあります。このような温度上昇は電子部品の信頼性を損なう要因となりうるため、高温環境下でも磁心損失が低いコア材料が求められています。
2.概要
このたび当社が開発したソフトフェライトコア材料「ML29D」は、車載用途を考慮した広い温度範囲下で優れた低損失特性を示すMn-Zn系フェライト材料です。
当社独自の粉末配合技術と粉末加工・熱処理技術により、従来材に比べ高温域(140℃)での磁心損失を大幅に低減しました。低温から高温環境下にわたって優れた磁心損失をもつことから、さまざまな使用環境のもとで電源回路の消費電力と発熱量を抑えることが可能です。本製品の使用により、トランスやインダクター部品の高効率化、高信頼性化、小型軽量化がこれまで以上に期待されます。
このように、車載用フェライトコア材料のラインアップに新たに「ML29D」が加わることで、お客様の幅広いニーズに対応していくことが可能となります。
当社では、今後も素材の特性を引き出す材料開発に注力するとともに、電子部品のさらなる高効率化、信頼性向上、小型軽量化にも貢献していきます。
■ 「ML29D」の特長
(1)高温環境下(140℃)での磁心損失を15%超改善(当社従来品「ML33D」比)
(2)高温環境下(140℃)での飽和磁束密度*2を20%向上(当社従来品「ML33D」比)
3.生産状況
量産体制 : 整備済み
生産拠点 : 日立フェライト電子㈱、日立金属(香港)有限公司番禺工場
4.特許
出願済み
【お客様からのお問い合わせ】
日立金属㈱ 高級金属カンパニー TEL 03-6774-3471
<補足説明>
■ 車載トランス用フェライトコア材料「ML29D」の特性一覧(Typical)
<用語解説>
*1 磁心損失とは、磁心(コア)を特定の周波数の磁界の中に置いた時に失われるエネルギー損失のことです。磁心損
失が大きくなるとエネルギー損失が大きくなります。
*2 飽和磁束密度とは、材料が持つ磁力の強さを表す物理量で磁性材料の性能の基本となる尺度のひとつです。材料を
磁化した時の磁化の程度を磁束密度と呼び、値が大きいほどコアの小型化、および大電流下での使用が可能となり
ます。材料を磁化するに伴いそれ以上磁化しない限度を飽和磁束密度と呼びます。
*3 キュリー温度とは、強磁性体が常磁性体に、もしくは強誘電体が常誘電体に変化する転移温度のことです。
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