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新しい鉛フリー快削鋼と高疲労強度ステンレス鋼板の開発で日本金属学会「技術開発賞」をダブル受賞しました【住友金属工業】

2001年11月9日

住友金属工業㈱(以下、住友金属)、㈱住友金属小倉(以下、住金小倉)および㈱住友金属直江津(以下、住金直江津)は、11月8日(火)、第34回社団法人日本金属学会「技術開発賞」(*1)を二件受賞しました。
(1) 低炭素鉛フリー快削鋼「スミグリーンCS」の開発
(2) 微細析出物分散ステンレス鋼板「NAR-301L HSX)の開発
なお、スミグリーンCSの開発は大阪大学殿、NAR-301L HSXの開発は㈱本田技術研究所殿および日本リークレス工業株式会社殿との共同受賞です。住友金属と住友金属直江津の共同開発としては4年連続の受賞です。

受賞技術の概要

1. 被削性に優れた低炭素鉛フリー快削鋼「スミグリーンCS」の開発(住友金属、住金小倉、大阪大学殿)
快削鋼は、(1)寸法や表面粗さなどの面で高い精度での切削加工を可能とし、(2)切削工具(刃先)の損耗が少なく、(3)切屑の形状が一定なので高度化、自動化が進んでいる加工工程への負担を最小化できる、という優れた鉄鋼材料で、従来は鉛などを添加することによって、そのような特性を引き出すのが一般的でした。しかし鉛は環境負荷物質なので、近年は鉛を添加しない(鉛フリー)快削鋼が求められています。
当社は鋼中の化合物が切削加工中にどのように働くかという切削メカニズムの解析まで踏み込んで研究を続け、鉛を含まなくても良く削れる鉛フリー快削鋼(商品名:スミグリーン)の開発に成功しました。当社の鉛フリー快削鋼の特徴は、その削り易さに加えて、マンガン系硫化物(*2)の形態を最適化した鋼や、環境に無害な特殊元素を添加した鋼というように、部品それぞれの切削加工性にマッチするような造り込みを行っていることです。幅広い種類のスミグリーンを取り揃えることで、さまざまな業界のお客さまからご好評をいただいています。
今回受賞した低炭素鉛フリー快削鋼「スミグリーンCS」は、マンガン系硫化物の添加量を増加し、独自の造り込み技術により最適化した切削加工のしやすい鉛フリー快削鋼です。

2. 高燃焼圧シリンダヘッドガスケット用微細析出物分散ステンレス鋼板「NAR-301L HSX」の開発(住友金属、住金直江津、㈱本田技術研究所殿、日本リークレス工業㈱殿)
シリンダヘッドガスケット(以下、ガスケット)はエンジンのシリンダヘッド(上部)とブロック(下部)の間に挿入され、エンジン内の燃焼ガスがシリンダヘッドとブロックの隙間から外に漏れるのを防ぐシール部品です。エンジン内でガソリンが爆発燃焼すると、その圧力で、シリンダヘッドはかすかに浮き上がります。シリンダーブロックとの間に隙間を生じ、燃焼ガスが漏れる危険があります。これを防ぐのがガスケットで、薄鋼板数枚を貼り合わせ、ビードと呼ばれる凸部を付けています(イラスト参照)。ビードのばねのような弾力でシリンダヘッドの浮き上がりに追従して燃焼ガスや潤滑油の漏れを防ぐのです。そのため、その素材には、シリンダヘッドの繰り返しの動きに耐える疲労強度と耐食性などが求められ、一般に高強度ステンレス鋼が使用されています。
近年、環境負荷低減の観点から、燃費の向上とCO2ガスや環境汚染物質の排出量削減を目指してエンジンの軽量化と燃焼圧の高圧化が進んでいます。これらの対策はいずれも燃焼時のシリンダヘッドの変形を増大させることから、シリンダヘッドガスケットには従来以上のばね特性と優れた疲労特性(繰り返しの負荷に対する耐久性)が要求されています。
当社グループは、2008年度の本賞を受賞した「NAR-301L HS1」をベースに、鋼板表面の結晶粒をさらに微細化し、ビード成形加工による金属の性質の変化(時効硬化(*3))も活用して「NAR-301L HSX」を開発しました。その特長は次のとおりです。
(1) 焼鈍と熱処理を使って微細なクロム-窒素化合物を析出させ、鋼板表面の結晶粒をさらに微細化したこと
(2) 鋼板をガスケットに加工する際の焼き付け処理の熱を利用した時効硬化により、工程を増やさずに高強度化して、燃焼ガスシール性を30%向上させたこと

「NAR-301L HSX」は、2008年度より欧州向けアコードディーゼルに搭載されており、ディーゼルエンジン車の増加による地球環境保護の動きに貢献しています。

受賞者





















































(*1) 日本金属学会は、1937年に、「金属に関する理論および工業の進歩発達をはかること」を目的として発足し、月間学術論文誌の発行やシンポジウム、セミナー等の事業を行っています。
技術開発賞は、金属工学並びにこれらに関連する新技術・新製品などの独創的な技術開発に携わった技術者に対し授与される賞です。
(*2) 鋼材の切削性を高めるために鋼の中に含まれている、硫黄SとマンガンMnの化合物MnS
(*3) 熱処理の効果が、冷却した後であらわれて、金属材料が強度を増すことを時効硬化と言います。熱処理後時間がたってから金属の結晶組織が変化し、もとの材料より強度が上がります。


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