ニュース
トヨタ自動車とダイハツ工業、両ブランドで小型車事業強化【トヨタ自動車】
2016年1月29日
トヨタ自動車とダイハツ工業、両ブランドで小型車事業強化
-ダイハツ工業を完全子会社化、グローバル戦略一本化-
トヨタ自動車㈱(社長 : 豊田 章男、以下、トヨタ)と子会社であるダイハツ工業㈱(社長 : 三井 正則、以下、ダイハツ)は、株式交換によるダイハツの完全子会社化(2016年8月予定)について合意した。今回の合意は、トヨタおよびダイハツの更なる持続的成長に向け、同一の戦略のもと、小型車事業においてより選択と集中を進め、両ブランドにおける「もっといいクルマづくり」を一層進化させていくことを狙いとしたものである。
主な合意内容は以下のとおり。
1.目的
トヨタとダイハツは、共通の戦略のもと、両社の技術・ノウハウや事業基盤を融合することで両ブランドの特色を活かした魅力的でグローバルに競争力のある商品を展開する。
2.協業の概要
〈小型車戦略〉
・トヨタブランド、ダイハツブランドの差別化を進め、それぞれのお客様にとって最適な商品ラインナップを拡充
・ダイハツが主体となって、これまで培った現地のお客様目線に立ったクルマづくりや、軽自動車を基盤・基点とした商品企画・技術開発のノウハウ・プロセスをさらに進化させ、小型車領域での両ブランドの商品を開発
〈技術戦略〉
・トヨタとダイハツは、技術戦略を初期構想の段階から共有
・トヨタは環境・安全・安心・快適技術面での技術開発を進め、ダイハツはパッケージング力、低コスト技術、低燃費技術に加え、先進技術の低コスト化・コンパクト化を推進
・ダイハツ独自のクルマづくりのノウハウをトヨタグループ内で共有、上位車種でのコスト競争力にも貢献
〈事業戦略〉
・新興国市場においては、それぞれの事業基盤を活用しあい、ダイハツが主体となって、開発・調達・生産といったモノづくりをスピーディーかつ効率的に推進
・国内事業では、トヨタの販売のノウハウやインフラも相互活用し、ダイハツブランド力向上と収益力の両立を図る
今回の合意を通じて、トヨタとダイハツは、今後もそれぞれの強みを活かすマネジメントの独自性は維持しつつ、戦略を共有し、お互いに切磋琢磨しながら、一体となって高度化する技術革新やスピーディーな事業展開など難易度の高い課題に対応し、両社の企業価値向上に努めていく。
トヨタの豊田社長は、「お互いがこだわりを捨てて、任せるところは任せ、それぞれが得意分野を全力で伸ばしていく、すなわち“選択と集中”、それこそがグローバル競争を勝ち抜いていくための鍵になる。」と語った。
ダイハツの三井社長は、「次の100年に向けた成長の道筋を描く事ができた。トヨタとの関係をより強固にすることで、今後のダイハツの成長、そして『ダイハツブランドの世界基準への進化』に踏み出していきたい。」と語った。
ダイハツ工業完全子会社化の概要
(1)本株式交換の日程
(注1) トヨタ自動車は、会社法第796条第2項の規定に基づく、簡易株式交換の手続きにより、株主総会の承認を受けずに本株式交換を行う予定です。
(注2) 本株式交換の実施予定日(効力発生日)は、両社の合意により変更されることがあります。
(2)本株式交換に係る割当ての内容
(注) ダイハツ工業の普通株式1株に対して、トヨタ自動車の普通株式0.26株を割当て交付いたします。
トヨタ自動車 豊田社長スピーチ
豊田でございます。
本日はお忙しい中、私どもの記者会見にご出席を賜り、誠にありがとうございます。
急なご案内になりましたこと、また、遅い時間の開催となりましたことをお詫び申し上げます。まずは、私から、本件の経緯と思いについて、お話しいたします。
トヨタとダイハツの両社は、持続的成長という共通のテーマについてことあるたびに意見交換をしてまいりました。
昨年の秋、私どもより、「より強固な関係となって、両ブランドで一層『もっといいクルマづくり』をすすめたい」とのお話しを差し上げました。
当初、三井社長は、相当驚かれたようですが、議論を重ねていくうちに、「両社の持続的成長には必要なことだと思う。ダイハツとしても、競争が激化し、新技術や事業の拡大が必要となる中、新たな領域に踏み込むにはリソーセスの限界にきている。ただ、ダイハツらしいクルマづくりは続けていきたい。」といったお話をしてくださいました。
その話からは、自主独立を重んじられてきたダイハツのトップとして、「何としてもグローバル競争に勝ち抜き、持続的に成長し続ける会社にするんだ」という強い意志、経営者としての覚悟がヒシヒシと伝わってまいりました。
今回のご決断にあたって、三井社長は、従業員、仕入先や販売店の方々、お客様や株主様、あらゆるステークホルダーの皆様の顔を思い浮かべられたことと思います。
ダイハツで育てられ、ずっとダイハツで活躍されてきた、身体のすみずみまでダイハツの血がながれた三井社長が、ダイハツの未来のためにくだされた決断を、私は同じ経営者として、大変ありがたく、重く受け止めております。
三井社長が言われた「ダイハツらしいクルマづくりを続けていきたい」という言葉は、これからのトヨタグループの「もっといいクルマづくり」において最も大切にしていかねばならないことのひとつだと思っております。
私自身、トヨタとレクサスのブランドづくりに取り組んできて「ブランドとはお客様の信頼の上に成り立つものであり、一朝一夕にできるものではない。ブランドを築くには“歴史”と“物語”が必要だ」ということを肌で感じております。
ダイハツが誕生して、今年で109年。
そのブランドの重みは誰よりも理解しているつもりでおります。トヨタ、レクサス同様に、ダイハツブランドを大切にしながら、「もっといいクルマづくり」に取り組んでまいります。
一方で、私たちトヨタが持続的に成長していくために乗り越えなければならない課題もたくさんあります。
私たちは、TNGAの取組みを進めるにあたって、あらためて小さいクルマづくりの難しさを痛感いたしました。地球環境問題の高まり、新興国市場の拡大などから従来以上に小型車の重要性は増しております。
私たちは、北米市場向けなどのミドルクラス以上を中心としたクルマづくりや環境技術をはじめとした先端技術開発は、比較的得意としておりますが、小型車においてはそこまでの存在感を示せていないと日々感じております。
小型車のノウハウを今以上に得ていかなければ、将来に向けたブレークスルーができないのではないか、そう痛感しております。
もう1点付け加えますと、ダイハツは独立精神旺盛で、良い意味で泥臭く、現場を重んじられる骨っぽい会社であり、今のトヨタが失ってしまったものを持っておられると思います。そこから、トヨタが学ぶべきことはたくさんあるのではないか、そう感じております。
私たちトヨタには、従来から全てを自分たちでまかないたいといういわゆる“自前主義”のこだわりがあります。「我々にだって、ずっと取り組んできた小型車の歴史と誇りがある」、「でも、こだわりにとらわれていたら、このグローバル競争を勝ち抜いていけない」今回の決断に至るまで、大きな葛藤がありました。
ですが、今回、私たちにとっても大きな決断をくだすことができたのは、私たちのこだわりの一部をお任せする相手が他ならぬダイハツだったからです。
トヨタとダイハツが提携を開始したのは1967年、今から約50年も前のことです。50年という長い年月をかけてトヨタとダイハツは互いに自主性を重んじながらともに手をたずさえ、切磋琢磨し、成長してまいりました。
これがまさにトヨタグループの提携のあり方であり、そうした長い歴史を共にしてきたダイハツにだからこそ、私たちの大切な「小型車事業」をお任せしよう、そう思えたのです。
軽自動車という制約の多いカテゴリーの中で厳しい競争に打ち勝ってきた、まさに「良品廉価」のすばらしい技術がダイハツにはあります。軽自動車は、これからもダイハツの競争力の源泉であることに変わりはありません。
そして、その上で、お互いがこだわりを捨てて、任せるところは任せ、それぞれが得意分野を全力で伸ばしていく、すなわち“選択と集中”、それこそがグローバル競争を勝ち抜いていくための鍵になる・・・このように思っております。
私は、「真の競争力強化による持続的成長」「もっといいクルマをつくろう」と言い続けております。ダイハツ・トヨタそれぞれの未来、そしてトヨタグループの未来に向けて、共に歩んでいくパートナーである三井社長にここでスピーチのタスキをお渡しします。
ダイハツ工業 三井社長スピーチ
皆様、こんばんは。三井でございます。
本日は遅い時間に、また急なご案内にもかかわらず、多くのご出席をたまわり、誠にありがとうございます。
私どもダイハツは、かねてより、軽自動車を中心とするスモールカーに特化したビジネスモデルを追求してまいりました。
特に近年におきましては、低燃費と低価格を追求した「ミラ イース」、お客様の求められる機能や性能に徹底的にこだわった「タント」や「ハイゼット」、そして、この手法を海外にも展開し、「その国のお客様の好みやニーズ」を盛り込んだインドネシアの「アイラ」、マレーシアの「アジア」。
ダイハツは、これらのクルマづくりを通して、「お客様に一番近い会社」を目指してまいりました。と同時に、「『小さいクルマならでは』に拘ったものづくり」を悩みながらも、やり抜いてきたと思っております。
SSC~シンプル-スリム-コンパクト~の概念を初めて導入した、ダイハツ九州 大分第二工場や、海外においては、ものづくりにおける「その国のベスト」を目指し、インドネシアやマレーシアの拠点を競争力ある工場へと鍛え上げてきました。
トヨタ自動車との間でも、1960年代からの受託生産、2004年からの共同開発、さらにOEM供給など、両社のニーズに合った、最適な連携方法を模索してまいりました。
一方、この先を見通しますと、私どもには「グローバルな事業展開力」や、「環境/安全規制への対応」、「電動化や自動運転」、「つながる技術」など、社会的ニーズ、お客様ニーズに応える、次世代技術への対応の必要性が、待ったなしに迫ってきています。
これらは、今後、当社の成長には欠かせませんが、対応を進める過程において、自らの事業規模を超えるリソーセスが必要となるのは明らかです。
目まぐるしく変化する事業環境や、新たな技術開発競争が激化する中、課題を克服し、また、今まで以上に強みを発揮し続けていくには、トヨタ自動車との連携を一層強化し、共通の戦略のもとで「もっといいスモールカーづくり」に取り組んでいく必要性があるとの認識に至りました。
経緯のご説明に続きまして、今後の協業の具体策を3点、ご説明申し上げます。
1点目は、「小型車戦略」です。
これまでダイハツが国内外で手掛けてきました、例えばブーン/パッソ、セニア/アバンザのような姉妹車よりも、デザイン・仕様をもっと差別化することで、それぞれのブランドのお客様の満足につなげてまいります。その実現に向け、ダイハツがこれまで取り組んできた、「それぞれの国や地域のお客様のニーズに合わせたクルマづくり」をさらに進化させてまいります。つまり、小型車については、ダイハツブランド・トヨタブランド、それぞれの個性が際立つ、「もっといいクルマ」をご提供いたします。
2点目は、「技術戦略」です。
その特長は、「次世代技術で世界をリードするトヨタと、技術の小型化・低コスト化が得意なダイハツが、将来の技術戦略を、その初期構想段階から一緒に作り上げる」という点にあります。戦略を共有する事で、小型車や軽にも次世代技術をよりタイムリーに、より低価格で搭載できるようになり、ダイハツ車と、トヨタ車のお客様のメリットにつながるシナジーを、発揮していきたいと思います。
最後3点目は、「事業戦略」です。
新興国においては、ダイハツが主体となって、独自のものづくりのノウハウを活かし、事業を展開・牽引してまいります。そのカギとなるのは、スピードと効率です。この両立のために、ダイハツはトヨタの、トヨタはダイハツのものづくりの基盤を相互に活用し、事業の立案から開発・調達・生産に至るプロセスを、より迅速に、より効率的に進めてまいります。
これらの新たな協業を通じて、ダイハツブランドのお客様には、これまで以上に、よりよい商品・サービスを、どこよりも早く、アフォーダブルにお届けいたします。加えて量的拡大が見込まれる新興国をはじめ、グローバルなダウンサイジング化が進む中で、ダイハツのクルマづくり、ものづくりの強みを発揮してまいります。
ダイハツが、これまで10年をかけて取り組んできた、商品・技術開発・生産といった各分野の改革や、社内組織のスリム化など、事業構造改革に一定の目処がつきつつある今、これを機に、トヨタとの関係をより強固にすることで、今後の「ダイハツの成長」、そして、「ダイハツブランドの世界基準への進化」に踏み出していきたいと考えております。
私どもはこの春、創業から109年を迎えますが、今後の「持続的成長に向けた、確かな(成長の)道筋」を、描く事ができたと思います。
完全子会社化に伴い、上場廃止とはなりますが、今後のダイハツの成長する姿をお見せすることで、株主の皆様にもご理解をいただきたく存じます。
豊田社長には、この10年、ダイハツの構造改革を見守っていただきました。
ダイハツの工場を訪ね、ダイハツのクルマに乗り、ダイハツの強みと課題をご理解頂き、我々と同じ目線で、今後の成長に向けた対話を続けて下さいました。
豊田社長への感謝の気持ちをお伝えして、再びタスキをお渡しします。
トヨタ自動車 豊田社長 結びの挨拶
三井社長、ありがとうございます。
トヨタとダイハツ、これからは、さらにひとつになって新たなチャレンジに向かいます。
そして、一歩踏み出せば課題が見えてきます。両社が力をあわせ、心をあわせて、課題を乗り越えることによって、10年、20年経った時、今回の決断が「正解」だったと振り返っていただけるように努力したいと思っています。
ありがとうございました。
関連コンテンツ
トヨタとダイハツ共同記者会見
トヨタ自動車㈱(本社:愛知県豊田市、社長:豊田 章男)とダイハツ工業㈱(本社:大阪府池田市ダイハツ町、社長:三井 正則)の共同記者会見の模様を動画でご覧いただけます。
詳しくはこちら
http://newsroom.toyota.co.jp/jp/detail/11032382/
トヨタ自動車株式会社ホームページはこちら