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世界最高精度0.01%レベルの炭素定量分析装置「FE-EPMA」を開発【NEDO/新構造材料技術研究組合/JFEスチール】

2015年1月14日

世界最高精度0.01%レベルの炭素定量分析装置「FE-EPMA」を開発
―自動車用高強度薄鋼板の開発を促進―

NEDOと新構造材料技術研究組合(ISMA)、およびISMAの組合員であるJFEスチール㈱はこのたび、鉄鋼材料に含まれる炭素の含有量を世界最高精度の0.01%レベルまで定量的に分析できる装置「FE-EPMA」※1を開発しました。従来の「FE-EPMA」装置に改良を加え、分析精度を10倍高めることに成功しました。
本分析装置を活用することで、自動車用高強度薄鋼板(ハイテン)開発の迅速化を図るとともに、さらなる分析精度の向上を目指します。


1.概要

鉄鋼材料の強度は一般的には炭素濃度を高めることにより増加しますが、一方、炭素濃度を高めると伸び特性が低下し、プレス成型時の加工性が低下します。このため、強度と加工性を両立させるためには、鉄鋼材料の中で炭素濃度が高い組織と、炭素濃度が低い組織が微細に分散した複合組織にする必要があります。そして、従来よりも高強度かつ高加工性の鋼板を開発するためには、それぞれの微細組織の炭素濃度とその分布状況を従来よりも厳密に制御することが重要です。
鉄鋼材料に含まれる炭素濃度を定量分析するためには、電子線マイクロアナライザ(EPMA)を使用した電子線分析が一般的です。しかしながら、電子線には炭素を吸い寄せる性質があることから、分析の進行とともに分析装置内や試料表面の炭素が試料表面に徐々に堆積して炭素濃度が増大し、分析面積が狭くかつ炭素濃度が低い組織であるほど分析精度が大幅に低下するという課題がありました。
これを解決するため、「革新的新構造材料等研究開発」プロジェクトにおける「革新鋼板の開発」テーマの中で、NEDOと新構造材料技術研究組合(ISMA)、およびISMAの組合員であるJFEスチール㈱は、鉄鋼材料に含まれる炭素の含有量を高い精度で定量的に分析できる装置「FE-EPMA」の開発に取り組んできました。本開発装置では炭素専用の検出器を3台組み込み高感度化を図るとともに、炭素の堆積を抑制する機能を複数具備させました。これにより、従来は炭素含有量0.1%レベルまでだった定量分析精度を、世界最高精度の0.01%レベルまで10倍高める事に成功しました。
本装置を活用することで、自動車用高強度薄鋼板(ハイテン)を製造する際の各プロセスにおける炭素分布を従来比10倍の精度で分析できます。これにより、焼入れ・焼きなましなど熱処理条件の確立や、サンプル材製造時の複合組織の造り込みの精度向上に高い効果を発揮することで、自動車用高強度鋼板の開発の迅速化が期待できます。

2.今回の成果

本開発装置は、従来の分析装置である「FE-EPMA」を改良したものです。主な改良点は以下の通りです。
高感度化を図るため、炭素専用の検出器を3台搭載
炭素の堆積を抑止するため、クリーナーや加熱装置を搭載
これらにより、従来は炭素含有量0.1%レベルまでだった定量分析精度を、世界最高精度の0.01%レベルまで10倍高める事に成功しました。


【用語解説】
※1 FE-EPMA(Field Emission Electron Probe Micro Analyzer: FE-EPMA)
   輝度を高く絞れる電子銃を搭載した電子線マイクロアナライザー
※2 SEM/EDS (Scanning Electron Microscope/ Energy Dispersive X-ray Spectrometer)
   走査型電子顕微鏡とエネルギー分散型X線検出器(電子線照射で発生するX線による元素分析器)
※3 TEM/EDS (Transmission Electron Microscope/ Energy Dispersive X-ray Spectrometer)
   透過型電子顕微鏡とエネルギー分散型X線検出器

3.今後の予定

今後、開発した装置を活用して革新的な自動車用高強度薄鋼板の開発とともに、本プロジェクトの最終目標であるさらなる高精度(0.003%以下)の分析方法の確立、および鋼中に溶解した状態で含まれる炭素の分析方法の確立を目指します。

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 電子・材料・ナノテクノロジー部 TEL : 044-520-5220
JFEスチール㈱ 総務部広報室 TEL : 03-3597-3166

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 TEL : 044-520-5151  E-mail : nedo_press@ml.nedo.go.jp








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