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金属軟磁性材料を用いた新材料「メタルパウダーコア」を開発【日立金属】

2014年9月19日

日立金属㈱(本社:東京都港区、会長:小西 和幸、以下 当社)は、このたび、当社の粉末冶金技術と粉末加工技術によって金属軟磁性材料を用いた新材料「メタルパウダーコア」を開発しましたので、お知らせいたします。高性能化と高信頼性を両立し、自動車電装部品やスマートフォンのさらなる小型・薄型化、信頼性向上に貢献いたします。

1.背景

当社は、自動車の電装部やスマートフォンなどの電気回路に搭載される軟磁性材料のひとつとしてソフトフェライトを製造・販売しております。安定した品質を高く評価いただいており、多くのお客様にご採用いただいております。
近年、自動車電装部品やスマートフォンなどの高性能化に伴い、用いられる各電子部品は大電流化対応への要求が高まっています。さらに省スペース化の要求に伴い、電気回路上に高密度に搭載される各電子部品は、これまで以上に小型・薄型化が求められています。特にこれら電子部品の中でも比較的占有面積の大きいインダクター*1には小型・薄型化が強く望まれています。一方で、インダクターの大電流化対応と小型・薄型化の実現を両立するには、性能を左右する磁心(コア)に用いられる材料の磁気特性や強度など各種特性・物性を向上させる必要がありました。

2.概要

このたび開発した金属軟磁性材料を用いたメタルパウダーコアは、当社が有する粉末冶金技術と粉末加工技術によって生み出した新たなコアです。ソフトフェライトと比較して大幅に飽和磁束密度を向上出来ただけではなく、広い温度領域でも安定な磁気特性を有します。また、機械的強度も優れた特長を実現した。さらにはほかの鉄合金系軟磁性材料と比較して、耐食性*2も大きく改善しました。
インダクターなどのコアとして使用することで、自動車やスマートフォンに搭載される電気回路基板のさらなる小型・薄型化、動作安定性の向上、長期信頼性の向上が期待されます。
また、当社の軟磁性材料のラインナップに新たにメタルパウダーコアが加わることで、お客様の幅広いニーズに対応していくことが可能となります。

写真:メタルパウダーコア

■メタルパウダーコアの特長
(1)高い飽和磁束密度*3により大電流領域での小型化(最小サイズ2.0mm×1.6mm)と大電流印加時のインダクタンス*4低下抑制に大きな効果を発揮
(当社従来品のソフトフェライトに比べ飽和磁束密度が約3倍*5
(2)温度変化に対して安定した磁気特性を示し、高温環境下にも対応可能
(3)機械的強度に優れ、薄型化を実現(最薄0.8mm)に対応可能
(4)電気抵抗率が高く、高周波領域での渦電流損失を低減
(5)防錆性が高く、長期信頼性を確保

3.量産

開始:2014年下期(予定)
生産拠点:日立フェライト電子㈱(本社:鳥取県鳥取市)

4.販売目標

2018年度売上高 20億円/年

  

【お客様からのお問い合わせ】
日立金属株式会社    磁性材料カンパニー
担当    渡辺    TEL 03-5765-4044

金属軟磁性材料を用いた新材料「メタルパウダーコア」を開発(PDF:148KB)

<補足説明>
*1    インダクターとは、電気回路において抵抗器やコンデンサーと共に使用される主要部品で、電気エネルギーを一時的に磁気エネルギーに変換して貯蔵・放出を繰り返すことにより、電圧変換や電流の平滑化、ノイズ除去などを目的として広く使用されています。
*2    耐食性とは、高温・高湿度条件下(85℃/85RH%)、1000時間以上の放置試験における磁気特性や外観の変化の有無のことです。
*3    飽和磁束密度とは、材料が持つ磁力の強さを表す物理量で磁性材料の性能の基本になる尺度のひとつです。材料を磁化した時の磁化の程度を磁束密度と呼び、値が大きいほどコアを小型化できます。材料を磁化するに伴いそれ以上磁化しない限度を飽和磁束密度と呼びます。
*4    インダクタンスとは、コイル部品において、コイルに流す電流と、その電流を流したコイルに発生する磁束との比を示した値を指します。
*5    当社従来品(ソフトフェライト)との比較において。

本開発品とソフトフェライトの特性は、以下の通りです。

*透磁率とは、軟磁性の評価指標のひとつで、外から与えた磁界に対する磁化のしやすさを示します。
*キュリー温度とは、強磁性体が常磁性体に、もしくは強誘電体が常誘電体に変化する転移温度のことです。
*圧環強度とは、環状のコアを圧縮した際に破壊する荷重のことです。






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