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水処理で培った包接技術を活かし、エネルギー分野の事業を強化 ~新素材の開発に成功し、リチウムイオン電池分野に参入~【栗田工業】
2014年9月4日
栗田工業㈱(本社:東京都中野区 社長:中井 稔之)は、水処理分野で培ってきた化学物質の包接技術(*)を活かし、リチウムイオン電池の安全性を向上させる新素材の開発に成功し、同電池向けの高機能部材として商品化(商品名:イプシガードKC)しました。そして、このたび海外の大手電池メーカーより量産受注を獲得し、供給を開始しました。今後、この新素材を核として、エネルギー分野の事業展開をさらに強化していきます。
電気自動車や蓄電デバイスの普及拡大に伴い、高出力・高容量化が進むリチウムイオン電池は主に電極(正極・負極)と電解液、セパレーターで構成され、リチウムイオンが電解液を介して正極から負極間を移動することで充放電が行われます。充放電に伴い電解液から発生する炭酸ガスによって、密閉された電池内の圧力が上昇しすぎると、電池の発熱や破裂につながるだけでなく、熱や酸素との反応により電解液が引火し電池の発火を引き起こすリスクがあるほか、充電容量や放電出力といった電池性能にも悪影響を及ぼします。このように電池内圧の上昇は、電池メーカーのお客様の重要課題であり、その対策となる安全性向上技術が求められていました。
今回開発した「イプシガードKC」は、当社が20年以上にわたり、水処理薬品をはじめとする様々な分野で活用してきた包接技術を応用し、リチウムイオン電池向けに初めて商品化したもので、電池の安全性を高める新素材です。特に、炭酸ガスの吸収に優れた性能(従来の一般的なガス吸収材と比べて吸収能力は3倍以上)を有し、発生した炭酸ガスを瞬時に包接して吸収し、ガス発生による電池内圧の上昇を防止します。また、イプシガードKCにはあらかじめ一定の水分を包接させており、電池内の温度上昇も抑えることができます。
このように電池内圧と温度の上昇を抑えることで、電池の発熱や膨れ・破裂、電解液による発火リスクの低減を実現するとともに、電池性能低下の抑制にも有効です。また、お客様では従来、電池の製造段階において初期充電に伴い発生する炭酸ガスを出荷前に引き抜く工程が必要でしたが、イプシガードKCの適用により不要となり、製造時間の短縮とコストダウンも図れます。
リチウムイオン電池はモバイル用の小型電池から自動車用の大型電池まで幅広く用いられ、普及の拡大が見込まれます。このたび量産受注を獲得した海外の大手電池メーカーでは、イプシガードKCの優れた機能を評価頂き、採用に至りました。当社では今後さらに量産体制を強化し、国内外の電池メーカーに幅広く供給することで、リチウムイオン電池市場での事業拡大を図っていきます。
(*) 包接技術
分子の集合体、または空孔を持つ分子(ホスト)の中に、他の分子(ゲスト)が一定の組成比で組み込まれ、特定の結晶構造を形成している包接化合物をつくる技術。ホスト分子の組み合わせによって、危険物の安定化や物質の効力を長期持続させる効果を持つ。格子状の結晶構造を持つ物質が、他の物質をその結晶格子の透間に取り込み、安定的に保持させることで、温度、湿度、圧力、酸素、光などに不安定な物質を安定化させたり、溶解度の低い物質を溶けやすくすることが可能となる。
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