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SiC・GaNなどの低損失パワー半導体を用いた両面冷却パワーモジュールの実装技術を開発【日立製作所】
2014年6月26日
片面冷却パワーモジュールに比べ電力容量を200%に拡大
㈱日立製作所(執行役社長兼COO:東原 敏昭/以下、日立)は、このたび、インフラ市場用電源システムや、電気・ハイブリッド自動車のインバーターシステムに向けて、高速に動作し低損失なパワー半導体*1を多数並列接続し、大容量化が可能な両面冷却パワーモジュールの実装技術を開発しました。これにより従来の片面冷却パワーモジュールに比べ、電力容量を200%にすることができます。
近年、環境への配慮やエネルギー問題を背景に、社会インフラを支える電源システムでは、従来のシリコン(Si)を用いたパワー半導体に比べて、低損失なSiC・GaNなどのパワー半導体を用いた電力変換モジュール(パワーモジュール)の実現が期待されています。また、自動車システムにおいても、燃費向上や居住空間拡大の要請からパワーモジュールの小型化が急務となっており、低損失なパワー半導体の採用が検討されています。今回、小型で高効率なパワーモジュールを実現するために、日立が2011年に開発した直接水冷型両面冷却パワーモジュール*2を低損失なパワー半導体で実現するための実装技術を開発しました。現在主流であるシリコン基板のウエハサイズ(8インチ)に比べ、低損失パワー半導体は市販されているウエハサイズが小さい(3~4インチ)ために、小面積のパワー半導体を複数並列に配置して、高速にスイッチングが可能な実装技術を開発する必要があります。しかし、各パワー半導体の配線にばらつきがあると、最も配線抵抗が小さい半導体に電流が集中して流れるため、パワー半導体の損傷や性能の不均一が生じ、これが実用化の課題となっていました。並列接続した多数の小さなパワー半導体を高信頼で動作させるためには、各パワー半導体の発熱をできる限り等しくし、劣化や最大動作電流を目標値内に収める必要があります。
このような背景から、今回日立は、両面冷却パワーモジュール内のパワー半導体を多並列に接続する配線の抵抗特性*3を等しくすることで、各パワー半導体に流れる電流を均一化する実装技術を開発しました。今回開発した技術の特長は以下の通りです。
(1)パワー半導体の制御信号用配線の長さを均一化
各パワー半導体がON・OFF動作するタイミングをそろえるために、各パワー半導体の制御信号用配線の長さを等しくし、配線抵抗をそろえる設計にしました。従来の片面冷却パワーモジュールでは、構造上の制限により、制御信号用配線の長さにばらつきがあったため、全てのパワー半導体を同じタイミングで動作させることが困難でした。これに対し、本技術では配線レイアウトにトーナメント方式を採用することで、制御信号用端子から各パワー半導体までの配線の長さを均一化でき、全てのパワー半導体がほぼ同じタイミングで動作するようになりました(図1参照)。
(2)パワー半導体の主配線の長さを均一化
各パワー半導体の動作電流が流れる主配線の長さを等しくし、各パワー半導体に流れる電流と発熱量を均一にしました。従来の片面冷却パワーモジュールでは、設計の問題上、入出力端子と各パワー半導体をつなぐ主配線の長さを均一にすることができなかったため、各主配線の抵抗にばらつきができ、各パワー半導体に流れる電流と発熱量を均一化することができませんでした。しかし、両面冷却パワーモジュールでは、パワー半導体へ流れる電流の経路となる導体でパワー半導体の上下を挟み込む設計のため、主配線の入出力端子からパワー半導体までの長さをそろえることができました。
本技術をもとに、スイッチング素子16個×2とダイオード素子4個×2の計40個のパワー半導体を並列接続可能な両面冷却パワーモジュールを作成した結果、従来の片面冷却のパワーモジュールと比べ電力容量を200%まで拡大でき、低損失(損失値Si比57%低減)で小型・高信頼なパワーモジュールの開発に成功しました。
今後も日立は、一般産業用機器などで用いられる電力変換システムや、電気・ハイブリッド自動車向けインバータの低損失・小型化に向け、直接水冷型両面冷却パワーモジュールなどのキーテクノロジーを活用することで性能向上に貢献する革新的な技術を開発していきます。
*1 パワー半導体 : 直流を交流に変換してモータを駆動したり、マイコンやLSIを動作させたりする電源(電力)の制御や供給を行うシステムに使用される半導体。
*2 2011年11月リリース。シリコンパワー半導体を両面から冷却するパワーモジュールを試作し、放熱性能を35%向上するとともにパワーモジュール床面積を50%削減した。
*3 抵抗特性 : 直流電流や交流電流が流れる電気配線の、電流の流れにくさを表す特性。
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