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活きたナノ世界を観る 高分解能 走査型プローブ顕微鏡 SPM-8000FMを発売【島津製作所】

2014年1月6日

― 固液界面の構造計測装置としても利用可能に ―


島津製作所は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)のフラッグシップモデルとして、HR-SPM(High Resolution Scanning Probe Microscope)カテゴリに位置づけられる、周波数変調方式(FM方式)を採用した「高分解能走査型プローブ顕微鏡SPM-8000FM」を1月6日より発売します。

SPM-8000FMは、薄膜、結晶、半導体、有機材料等の試料に対し、大気中・液中においても真空中と同様の超高分解能での表面観察を可能にする初の製品です。さらに、固体と液体の界面(固液界面)における水和・溶媒和の観察が初めて可能になり、固液界面の構造計測装置としても応用できます。リチウムイオン電池の電解液と電極の界面で起こる構造変化や、脂質など生体分子の液中での構造観察が可能になるなど、電子デバイス、ナノ材料、触媒、生体材料など多くのナノテクノロジー分野における研究開発の新たな展開につながるものと期待されます。


【開発の背景】
SPMは一般に、微小な板であるカンチレバーを細かく振動させながら試料表面に近づけ、カンチレバー先端に一体成形された探針が受ける相互作用力(原子間力)を検出することで、試料の表面観察を行う仕組みです。その検出法には振幅変調方式(AM方式)と、よりノイズを低減できる周波数変調方式(FM方式)があり、FM方式を採用したSPM はHR-SPMに分類され、AM方式と比べて感度と安定性が高く分解能が良いことが特長です。しかし一方FM方式には、大気中や液中では環境の粘性抵抗や吸着水の影響などによって検出感度が大きく低下するという問題があったため、FM方式はこれまで主に真空中での観察に利用されていました。

最先端のナノテクノロジー分野では、真空中だけでなく、実働状態に近い環境において原子レベルで構造観察と物性計測を行い、試料の特性を精密にとらえたいという強いニーズがあります。当社はこのニーズに対応するため、京都大学などと共同で研究開発を進めてきました。SPM-8000FMは、科学技術振興機構(JST)先端計測分析技術・機器開発プログラムの一環※として得られた開発成果を製品化したものです。


【本製品の特長】
1. 大気中・液中での超高分解能観察が可能に
カンチレバー振動を検出する光集光系の効率化やレーザー光の非干渉化などの技術開発を行うことにより、カンチレバーの変位を検出する光てこ検出系のノイズを従来比1/20に大幅低減することに成功しました。これにより、従来のSPM では困難であった大気中・液中での超高分解能観察を実現しました。例えば、大気中における鉛フタロシアニン結晶薄膜の分子配列構造や、水中における塩化ナトリウム(NaCl)の原子構造といった、従来法では観察することのできなかった顕微像を鮮明に捉えることができます。溶液中で特定の反応を示す有機分子の機能性評価や反応評価を行うことができるため、有機デバイスの開発にも有用です。SPM-8000FMは超高真空という限界を初めて突破したHR-SPMです。

2. 表面観察だけでなく固液界面の局所三次元構造の計測も実現
固液界面は溶質と水(溶媒)の相互作用により複雑な層状に構造化することが知られており、それは水和・溶媒和と呼ばれます。水和・溶媒和は固液界面における化学反応や電荷移動、潤滑、熱伝導などに大きな影響を与えていることが知られていますが、非常に薄い層であるため計測は容易ではなく、とりわけ面に対し水平方向に不均一で三次元の構造を持つ水和・溶媒和はこれまで観察ができませんでした。

SPM-8000FMでは、超高感度な力検出感度により、局所的な水和・溶媒和構造を計測することが可能となりました。固液界面で探針に働く力を探針位置の関数として精密計測することによって、界面での液体構造を観察することができます。さらに、新たな走査方式を採用することにより、二次元だけでなく三次元構造解析も初めて可能になりました。電極、ポリマーや界面活性剤、生体界面の液中での挙動を観察するなど、表面観察だけではなく、固液界面の構造計測装置としても応用が拡がります。


※JST先端計測分析技術・機器開発プログラム 機器開発タイプ
開発課題名 : 「大気中・液中で動作する原子分解能分析顕微鏡」(開発期間 : 平成17~22年度)
チームリーダー : 粉川  良平(㈱島津製作所  分析計測事業部  課長)
サブリーダー : 山田  啓文(京都大学  大学院工学研究科  准教授)
担当開発総括 : 澤田  嗣郎(東京大学  名誉教授)




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