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ZF、乗用車用9速オートマチック・トランスミッションの量産を開始【ZF・ジャパン】

2013年11月21日

-  世界初の乗用車用9速オートマチック・トランスミッション
-  10~16%の燃料消費削減
-  ストップ-スタート(アイドリングストップ)機能、4輪駆動にも対応
-  最初の量産はランドローバーとジープの車種に搭載

ゼット・エフ・フリードリヒスハーフェン社は、エンジンを車両前部に横置きするレイアウトに対応し、乗用車に搭載されるものとしては世界初の9速オートマチック・トランスミッション (9HP) の量産を開始しました。コンパクトで革新的なこのトランスミッションは2つのモデルレンジが準備されていて、エンジンの最大トルクが200~480Nmという幅広い範囲に対応します。またモジュール構成を採用したことで、基本となるトランスミッションを車両企画の要求に応じてアップグレードすることができます。つまり複数の発進用デバイス、4輪駆動仕様などを、前輪駆動の乗用車における横置きパワーパッケージの搭載スペースの制約の中で、高い費用対効果とともに提供することができます。

ゼット・エフ社の新しい9速オートマチック・トランスミッションは、燃料消費を、ということはCO2排出量を削減するポテンシャルにおいて傑出した特質を備えて生み出されました。例えば120km/hで巡航している状況では、エンジンとトランスミッションで構成されるパワーパッケージを車両前部に横置きする車両で今日一般的な6速オートマチック・トランスミッションと比べて、燃料消費は16%以上も低くなります。この「9HP」が本質的なところで高い効率を具備しているのは、まずその変速幅(最大変速比と最小変速比の比率。レシオ・スプレッドともいう)が9.81と非常に大きいことにあります。しかもその中に9つの変速段があることで、変速比のステップを極端に小さくすることができました。それはクルマを走らせている中で快適性を高めるだけでなく、エンジンをいつも燃料消費にとって最良の回転速度で使うことを可能にします。9HPの標準的な仕様では、9速で120km/hで走行している時のエンジン回転は毎分2170回転にすぎません。これに対して6速のトランスミッションでは毎分2890回転で回っています。また多様なアプリケーション(技術仕様の展開)はトランスミッションの技術革新の証明でもあります。その一方で、今日、世界全体で乗用車のおよそ75%はエンジンをフロントに横置きする形態になっていて、その数は急速に増えています。したがって9HPは、最も小さなサブコンパクトカーからコンパクトSUVまで、様々なセグメントの車両にとって理想的な存在となります。先駆的な自動車メーカーがこの利点を受け入れることに疑いの余地はありません。ランドローバー社は2013年には9HPをレンジローバー・イヴォークに搭載します。クライスラー・グループも今年、この9速オートマチック・トランスミッションのライセンス生産を開始し、新型ジープ・チェロキーと組み合わせで市場に送り出します。

革命的なトランスミッション・コンセプト

ゼット・エフ社は9HPの多くの変速段を、4セットのそれぞれ独立した遊星歯車と6つのシフトエレメントの組み合わせによって実現しました。トランスミッションにこれらの要素を組み込み、しかも乗用車においてパワーパッケージを車両前部に横置きすることによる車幅方向の、トランスミッションにとっては軸方向の長さに対するシビアな制約の中で成立させることは大きな挑戦に他なりません。この理由から、ギアセットはその回転軸上に単純にひとつずつ次々に並ぶ配置ではなく、知的な思索から生まれた複合した構成になっています。ゼット・エフ社は油圧作動のドグクラッチという、トランスミッションの長さを大きく増すことなく高い効率を実現する変速要素を組み込むことで、このコンセプトの追求をさらに深めました。摩擦多板方式の変速要素は、それが開放状態(伝達・断)状態にあっても引きずりトルクを発生しますが、ドグクラッチであればこの損失は非常に小さいのです。この視点は、9HPの多段変速コンセプトとの関連において、特段に重要なものです。こうして、複雑な設計を採用しながらも、内部抵抗の増大によって伝達効率の追求が損なわれることはありませんでした。

動力性能の向上と燃料消費の削減

9HPにおいて標準となる発進デバイスとして、トルクコンバーターが採用されています。とくにアメリカとアジアの市場における顧客層が、トルクを増幅して力強く発進し、しかし滑らかに動作することを重視しているからです。ここで油圧機械であるトルクコンバーターのエネルギー損失を最小にするため、回転変動を吸収する複数段のダンパーが組み込まれ、トルクコンバーター・クラッチを発進後に素早く低速から締結することを可能にしています。こうしてエンジンとトランスミッションを直結することで、燃料消費を削減し、快適性を高め、もちろんドライビング・ダイナミクスも引き上げられます。さらによりいっそうダイレクトな運転体験をもたらすために、ゼット・エフ社は変速制御に関わる全ての部品を、人間が感知できる限界よりも短い変速時間と応答時間が実現できるように設計しました。

9HPにおいては複数の変速段を「飛ばしシフト」することももちろん可能で、このオートマチック・トランスミッションにスポーティな資質を与えています。そしてトランスミッションの制御ユニットは自動車メーカーの要求にも、そしてエンドユーザーの運転の仕方にも対応することができます。変速点の設定や応答性の設定自由度は高く、快適性の強化や燃料消費の最適化とともに、非常にスポーティな特性を持つようにチューンすることができるのです。

モジュール化されたキット

この新しい9速オートマチック・トランスミッションは、可能なかぎり多くの車種に適用することができるように、モジュール化されたキットの形で作られています。その一例が、4輪駆動にするために追加する後輪への動力を分岐するトランスファーケースです。ゼット・エフ社は、ここから後輪に動力を伝える中で伝達機構を開放することもできる全輪駆動システムECOnnectも開発しました。これは後車軸における駆動を、それが必要とされる時だけ作動させるもので、その結果、4輪への駆動機構が常に機能しているシステムに比べて燃料消費を5%も改善します。9速オートマチック・トランスミッションの標準仕様はまた、エンジンとトランスミッションの回転が停止している時に油圧を供給するためのオイルポンプを追加することなく、スタート-ストップ(アイドリングストップ)機能にも対応しています。クルマを再発進させる時に締結する必要がある摩擦要素 (クラッチ) はひとつだけなので、きわめて自然で速い反応が得られています。そして最後に、オープンな構成のソフトウェア、インターフェイスの構造、そして高性能な電子制御ユニットによって、様々に異なる車両コンセプトにもこのユニットは柔軟に対応して組み込むことができるものになっています。9HPのこの多様性は、オプションで用意されているシフト・バイ・ワイヤの変速システムも含めて、自動車メーカーとしても開発効率がきわめて高いトランスミッションを生み出します。

地域の中で、地域のために

ゼット・エフ社にとって2012年、世界で最も大きな成長を実現した地域は北米であり、新しい9速オートマチック・トランスミッションにとってもここに大きなマーケット・ポテンシャルがあると見ています。それはまた、この技術革新がトランスミッション工場としても最新の存在であるアメリカのサウスカロライナ州グレイコートの製造ラインから送り出される理由でもあります。ゼット・エフ USA社はこの地に対して現在まで4億3000万ドル(3億3000万ユーロ)を投資しました。ゼット・エフ社はこの工場から、まずアメリカの自動車メーカーに、そしてアメリカに生産拠点を持つ国際的な乗用車メーカーに、9速オートマチック・トランスミッションを供給します。





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