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高温環境下でも劣化しにくい耐熱性に優れたFPCを開発【住友電気工業】
2013年10月7日
~新しい接着材料を開発し150℃での長期信頼性を実現~
当社は、 FPC(フレキシブルプリント回路)を構成する接着材料を改良することで、150℃以上(上限:175℃)での環境下での長期信頼性(絶縁フィルム密着性・回路間絶縁性)を大幅に向上させたFPCを開発し、お客様向けにサンプル供給を開始しました。
FPCは主に携帯機器をはじめとする電子機器に使用されていますが、近年はその薄さや柔軟性、ファインピッチ回路や部品搭載可能なプリント配線板といった特長を生かし、LED照明や車載用途など、幅広い分野に採用が広がっています。電子機器用途での使用温度はほとんどが100℃以下に対し、照明や車載用途ではFPCに100℃以上の高い耐熱性が求められるケースが少なくありません。
従来のFPCでは、150℃以上の高温環境下で使用した場合、構成材料が経年劣化するため、絶縁フィルムの密着性が大きく損なわれる問題がありました。当社が開発したFPCは、構成材料である接着剤の耐熱性を改良することで、高温下での基本性能(耐熱性・高温高湿下での耐久性)を大幅に向上させることに成功しました。
使用分野は、高温での信頼性が要求される、車載パワートレイン*1やLED照明機器の中継ケーブル、部品搭載基板としての用途を想定しています。今後、これらの分野でも拡販を進めることで、配線材としての設計の自由度が高まるだけでなく、電子部品の小型・軽量化、および信頼性・耐久性向上に寄与できるものと考えております。
FPC(フレキシブルプリント回路)について
FPCは、柔軟かつ折り曲げ、部品搭載可能なプリント配線板です。特に、小スペースでの立体配線が可能なため、小型電子機器(携帯端末・HDD・DVD・ゲーム機等)を中心に採用が進んでおります。
FPCの構造には、片面板(導体を1層のみ使用)、両面板(導体を2層使用)があります(図1)。 FPCでは、導体(銅箔+銅めっき)を電気的に絶縁するために、絶縁フィルム(ベースフィルム:ポリイミドフィルム、カバーレイ:ポリイミドフィルムと接着剤を貼り合わせたもの)を使用しておりますが、今回開発したFPCでは、カバーレイ接着剤を改良することで、高温下における長期信頼性を向上させることに成功しました
今回開発したFPCの特長について
電子機器用途では使用環境が150℃以下のため、従来のFPCでは、カバーレイフィルム接着剤には、エポキシやアクリル系樹脂をベースとした接着材料が使用されてきました。しかし、150℃以上の環境下では、接着材料の劣化が進行し、接着性・絶縁性が大きく損なわれる問題がありました(表1)。
今回、新たに開発した接着材料は、耐熱性のあるポリイミド系の樹脂を配合することで、高温環境下での劣化を抑制でき、FPCの基本性能を大幅に向上させ、絶縁フィルムの性能低下を抑制できました。
高温環境下での耐久試験*2として、①大気中150℃での高温放置(表1)、②高温高湿中85℃・85%RH*3での湿熱放置、③オイル中150℃での浸漬放置について評価し、いずれも初期および3000時間放置後において、FPCに求められるカバーレイの接着強度(JPCA規格、3.4N/cm以上)を満たすことを確認しました。
従来品と開発品 150℃耐熱試験後の外観比較
*1 パワートレイン :
エンジンなどの動力源からギア、シャフトなどを介して末端部分に動力を伝える機構。
*2 高温環境下での耐久試験 :
自動車用の電線規格(ISO6722)では、ClassAからClassHまでの耐熱規格があり、150℃はClassDに相当します。長期熱老化試験では、「定格温度環境下にて3000時間放置し、巻き付け試験後に、絶縁層の破壊有無を確認する」となっております。FPCではこのような耐熱規格はありませんが、上記のClassDに準じた耐久試験として、150℃×3000時間をひとつの目安にしています。
*3 RH :
相対湿度(Relative Humidity)のことで、その温度における飽和水蒸気量に対するその時の空気中の水蒸気量の比率。
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