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90ºCのお湯で3kW級の発電が可能な 高効率可搬型小型発電システムの研究開発成果【アルバック理工】

アルバック理工株式会社(本社 神奈川県横浜市、代表取締役社長 石井芳一)は、90ºCのお湯により3kW級(100V、30A)の発電ができる高効率可搬型小型発電システムの研究開発を行い、これが達成できましたので、開発の成果を報告します。

研究開発の背景

地球温暖化防止や石油資源枯渇の観点から、急速に再生可能エネルギー利用の技術開発の必要性が高まっています。さらに東日本大震災の影響で、火力発電所、原子力発電所の停止などによりエネルギー電力需給のバランスが大きく崩れ、省エネルギー技術の開発と未利用エネルギーによる発電技術の早急の実用化が強く望まれています。
特に150ºC以下の低温の熱源は、工場廃熱、温泉熱、太陽熱など多く存在しますが、未利用もしくは熱としての利用に限られています。一方、低温熱源を利用した発電システムの実用化が検討されていますが、いずれのシステムも発電規模が50kW以上のものです。またこれらのシステムは、大量の熱が必要であり、設置場所、工事費など初期コストもかかるため、導入先に限りがあります。

研究開発の成果概要

アルバック理工はこのほど、150ºC以下の低温熱源で、3〜12 kWの小規模発電を行うシステムを開発しました。本発電システムは軽トラックで運搬可能なサイズで、騒音も少なく、熱が出る場所の空きスペースに手軽に設置して電気を取り出すことができます。また本システムで発電した3〜12kWの電力は一般家庭の5〜20世帯分の消費電力に相当します。このように熱エネルギーをとことん電気エネルギーに変換できますので、未利用エネルギーの利用というニーズに大きく貢献していく技術の一つになると考えられます。
本発電システム開発では、ランキンサイクル1) (図1)からなる、3kW級の可搬型小型発電システムを製作し(図2)、お湯と冷却水を用いて発電試験を行いました(図3)。一例として、湯温91ºC、湯量431/min、温度差69ºCで、エネルギー回生効率2) 7.2%、発電出力3.8kWを達成し(表1)、実用化レベルの発電効率と発電出力を実現しました。
本発電システムを実現する上で欠かせないのが、発電機一体型スクロール膨張機 3)(エコスクロール膨張機 4))です。アルバック理工は、独自技術に基づき開発を行い、低機械損失、高密閉膨張室、低騒音を実現しました。本技術は、発電システムのほかに、ハイブリッド車、電気自動車用電動コンプレッサー、燃料電池用空気ブロア 5)、真空ポンプ等、多方面での利用が可能です。
なお、本研究開発の一部は、平成21、22年度の関東経済産業局の地域イノベーション創出研究開発委託事業を受けて、株式会社リッチストーン、独立行政法人産業技術総合研究所との共同開発を行った成果も含まれています。

特長

1)  75〜100ºCのお湯を高効率に電気に変えることが可能です
2)  可搬型なので、軽トラックで運搬可能で、かつ簡易工事で設置が可能です
3)  低騒音で小型なので、設置場所の制約を受けにくいです
4)  3kW級のエコスクロール膨張機を1ユニットとして、熱源の規模に応じて、3〜12 kWまでの発電システムが可能です

応用可能な低温熱源

1)  工場廃熱
2)  大型自動車、船舶の廃熱
3)  廃蒸気
4)  燃料電池の廃熱
5)  温泉熱
6) 太陽熱

仕様

3〜6kWの発電システムの場合
1)  外形寸法:W1100mm × D800mm × H1400mm(試作機)
2) 装置重量:約200kg

今後の予定

本発電システムは、実用化に耐えうる目標性能を達成しましたので、今後は現場でのフィールド試験および耐久試験を行い、製品化のための基盤技術を蓄積し、順次市場に投入していく予定です。

用語の説明

1)  ランキンサイクル : 液体と気体の二相で存在する作動媒体を用い、
熱エネルギーを機械的エネルギーに変換するプロセスの一つ。(例)火力発電、原子力発電
2)  エネルギー回生効率 : 投入エネルギーから取り出せる動力の割合
3)  スクロール膨張機 : 一対の同一形状の渦巻き体を、一方を固定し、
もう一方を円運動(相対的には揺動運動)させることにより、膨張室の体積を大きくし、膨張させるもの
4)  エコスクロール膨張機 : 偏心旋回駆動方式のスクロール膨張機 [Eccentric Orbiting Scroll Expander]
5)  空気ブロア : 送風機と圧縮機との中間の圧力を吐出する機械


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