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Chemicals Informaticsとマテリアルズ・インフォマティクスの活用により金属薄膜材料の開発効率化に貢献【日立ハイテク】
2024年2月8日
Chemicals Informaticsとマテリアルズ・インフォマティクスの活用により
金属薄膜材料の開発効率化に貢献
株式会社日立ハイテク(以下、日立ハイテク)は、電子デバイスなどに用いられる金属薄膜材料の開発において「Chemicals Informatics(以下、CI)」と「マテリアルズ・インフォマティクス(以下、MI)」を用いた開発効率化に関する検証実験(以下、本実験)を行いました。これにより、新材料の開発においても全体の開発工数を8割以上削減し、業務効率化できることを実証しました。
【概要図】 |
近年、材料開発においてはMIの活用が広がっています。MIとは、過去に蓄積した実験データからAI技術を活用して素材の配合率や組成などを導き出す技術です。またCIは、特許などの公開データをもとにした独自のデータベースを用いることで開発に最適な材料の選定が可能な、日立ハイテク独自のサービスです。いずれも活用することで、開発の効率化に貢献します。
本実験では、日立ハイテクが提供するMIとCIを組み合わせることで、過去に実験データの蓄積がない新たな材料の開発においても、開発業務の効率化が可能になることを実証しました。文献の調査や実験計画法*1による総当たり実験を大幅に削減することができ、新材料開発の効率化を実現します。
今後、日立ハイテクは、開発の高度化・効率化への要求が加速する化学メーカーや素材メーカーを中心としたお客さまに、本実験のプロセスをサービスとして提供し、お客さまの材料開発の効率化に加え、実験回数の削減による環境負荷低減にも貢献していきます。
*1実験計画法:複数の条件を組み合わせて実験を行う際、統計学によって漏れのないように条件を組み合わせて必要な実験を導き、その結果を分析する方法
■本実験の背景・課題
材料開発においては、機能性だけでなく、カーボンニュートラル・脱炭素社会の実現など社会課題の解決にも貢献する、これまで以上に高度化した材料の開発が求められています。また、研究開発基盤強化や業務効率化の一環としてDX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)へのニーズが高まっており、AIを活用した材料開発の手法としてMIの導入が活発になっています。MIは、これまで開発を行ってきた分野には効果を発揮しやすい傾向にあるものの、新材料開発の場面では、素材の選定段階において、これまでに蓄積されたデータがないためMIだけでは効率的な開発業務を実現できず、新たな手法が求められていました。
■本実験の詳細
本実験では、電子デバイスなどに用いられる金属薄膜材料の開発において、検証を行いました。
電子デバイスは、シリコンやガラスなどの基板上に、金属元素を堆積させた膜(以下、金属薄膜)を生成し、その金属薄膜を積層して製造します。基板と金属薄膜の接着力が弱いと、はがれを起こし、正しい性能が発揮できないため、接着力を高める接着層を設計することが重要です。しかし、接着層の設計には多くの開発工程数を要します。
本実験において、基板と金属薄膜との間の接着層に最適な素材である金属元素をCIによって発見し、MIによって金属元素の配合比率や製造プロセスの最適条件を探索することで、開発工程数を従来の方法と比較して8割以上削減し、効率的な研究開発業務の遂行が可能であることを実証しました。
1.CIによる特許データからの最適な素材の選定
従来は開発にあたり最適な素材を選定するため、まず多数の参考文献を読み込んで必要情報を入手し、次に、候補となる全ての素材に対して実験計画法による総当たり実験を実施することで、最適な素材を選定していました。
本実験では、ガラス基板と白金膜の両方に対し強い接着力を持つ接着層の開発において、CIによる探索を行いました。CIに必要な情報として、被着体であるガラス・白金の2種類と、30種類の金属元素を入力し、60万通りの組合せの候補から、ガラスおよび白金の両方に対して高い接着強度データが示されている材料として、クロム・チタン・コバルト・イットリウムを抽出しました。この4種類の中から、コスト面を考慮し、高価なコバルトとイットリウムを除いたクロム・チタンの2種類に絞り込み、2種類の金属元素のみに対して接着層の接着強度の実験を実施することで、素材を選定できました。これにより、素材選定において参考文献からの必要情報入手にかかる時間や実験の回数を合わせて、工程数の9割以上削減を実証しました。
2.MIを用いた素材の配合比率や製造プロセスなどの最適条件の探索
開発に用いる素材の配合比率や量、温度などの最適条件について、従来は多くの実験を繰り返すことで導き出しており、多くの時間を要していました。MIを用いることで過去の実験データから必要な実験の候補が予め提示されるため、効率的に条件を導き出すことが可能です。本実験においては、接着層の設計に必要な下表の通り4つの最適条件の探索にMIを活用することで、従来手法と比較し、実験回数を約8割削減できました。
なお、以上の実験結果を基に、ガラス基板上に246℃でクロム・チタン合金の接着層を挟んで白金膜を形成し、室温においても、800℃の高温においても、はがれが起こらないことを確認しています。
3.二酸化炭素排出量の削減
CIとMIの活用で実験回数の削減を実現したことにより、材料選定から最適条件探索までの一連の開発工程で発生する二酸化炭素の排出量を、従来の1.77tから、0.35tへと1.42t削減*2しました。CIやMIを開発現場に提供することで、カーボンニュートラルおよび脱炭素社会の実現にも大きく貢献します。
*2 WBCSD(World Business Council for Sustainable Development:持続可能な開発のための世界経済人会議)が発行する「削減貢献量(Avoided Emission)の算出・報告に関するガイダンス」に基づき算出したもの。削減量の値は、評価条件や評価モデルにより異なる。
また本リリースの内容については、2024年3月13日(水)東京理科大学野田キャンパスで開催される「第38回エレクトロニクス実装学会春季講演大会」において発表を行う予定です。
日立ハイテクは、モノづくり企業の課題解決に貢献するソリューションを提供するとともに社会・環境価値の創出に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
■CIについて
https://www.hitachi-hightech.com/jp/ja/products/ict-solution/randd/ci/
日立ハイテクが提供する化合物探索支援のためのクラウドサービスです。4,300万件の英文特許などの公開データを基にした独自のデータベースや探索AIにより、お客さまの化合物探索を支援します。
■MIについて
https://www.hitachi-hightech.com/jp/ja/products/ict-solution/randd/mi/
日立ハイテクおよび日立製作所が提供しているサービス、分析プラットフォームです。AIを活用して材料特性を最大化する上で最適な配合比や製造条件などを導出し、お客様の開発業務の効率化に貢献します。
※ご参考:広告映像(https://www.hitachi-hightech.com/jp/ja/company/change/ )
■日立ハイテクについて
日立ハイテクは、2001年、株式会社日立製作所 計測器グループ、同半導体製造装置グループと、先端産業分野における専門商社である日製産業株式会社が統合し、誕生しました。2020年、日立製作所の完全子会社となり連携を強化していくことで、社会課題の解決に貢献し、持続可能な社会の実現をめざしています。
医用分析装置、バイオ関連製品、半導体製造装置、分析機器、解析装置の製造・販売に加え、社会・産業インフラ、モビリティなどの分野における高付加価値ソリューションの提供を通して、グローバルな事業展開を行っています(2023年3月期日立ハイテクグループ連結売上収益は6,742億円)。
詳しくは、日立ハイテクのウェブサイト(https://www.hitachi-hightech.com/jp/ja/ )をご覧ください。
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