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車載コミュニケーションゲートウェイ用SoCに求められる、高性能と低消費電力の両立、高速起動やセキュリティなどの技術を開発【ルネサス エレクトロニクス】

2023年2月22日

  

車載コミュニケーションゲートウェイ用SoCに求められる、高性能と低消費電力の両立、
高速起動やセキュリティなどの技術を開発

~4つのキー技術をISSCC 2023にて発表~

  


車載用コミュニケーションゲートウェイSoCのテストチップ

 ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長兼CEO:柴田 英利、以下ルネサス)は、このたび、次世代の車載E/E(電気/電子)アーキテクチャの中核であるコミュニケーションゲートウェイ用SoC(System on Chip)を実現する4つの技術を開発しました。

 車載コミュニケーションゲートウェイ用SoCには、クラウドサービスなどの新しいアプリケーションを実現するための高性能化と待機時における低消費電力化の両立が求められます。また、瞬時に起動できるようCANの高速応答性能が必要です。さらに、ゲートウェイとしてのネットワーク機能を限られた電力で実現するために電力効率の高い通信技術や、車外と安全に通信できるセキュリティ技術も求められています。そこでルネサスは、(1)車の状態に応じて動作させる回路をダイナミックに変更し、車の状態に最適な性能と電力を実現するアーキテクチャ、(2)必要なプログラムだけを分割起動させることにより高速起動する技術、(3)10 Gbps/W(ギガビット毎秒/ワット)の電力効率を実現するネットワークアクセラレータ、(4)高信頼が要求される車体制御に関わる車内通信を認識し、通信への干渉を防ぐセキュリティ技術を開発しました。

 ルネサスは今回の成果を、2023年2月19日から23日まで米国サンフランシスコで開催中の「国際固体素子回路会議 ISSCC 2023(International Solid-State Circuits Conference 2023)」にて発表しました。

 ルネサスが新たに開発した技術は以下の通りです。

(1)車の状態に応じて最適な処理性能と電力に可変するアーキテクチャ
 コミュニケーションゲートウェイ用SoCには、走行時には30k DMIPSを超える処理性能が求められる一方、待機時にはバッテリ維持のため2mW以下に消費電力を抑える必要があります。一般的に高性能なSoCは待機消費電力が大きく、待機消費電力の小さいSoCは性能が出ない点が課題となっています。そこでルネサスは、高性能を実現するアプリケーションシステムと、待機電力を極少化できるコントロールシステムを1チップに統合しました。そして、この2つのサブシステムの電源を制御して、動作させる回路をダイナミックに変更することにより、最適な性能と電力に合わせこむことができるアーキテクチャを開発しました。これにより、動作時の高性能化と待機時の低消費電力化を両立しました。

(2)外部フラッシュを使用して内蔵フラッシュ並みに高速起動できる技術
 コミュニケーションゲートウェイ用SoCには、車体制御に関わる重要な処理に対応するため、起動から50ms(ミリ秒)以内にCANが応答することが求められています。しかし、内蔵フラッシュメモリを搭載しないSoCのプロセスでは、起動プログラムを暗号化して外部のフラッシュメモリに配置する必要があり、起動時にそのプログラムの読み込みや復号などで70ms程度かかります。そこでルネサスは、プログラムを分割して配置し、最初に最低限のプログラムのみを読み込んで起動させ、並行して残りのプログラムも起動を進める技術を開発しました。これにより外部フラッシュを使用した場合でも50ms以内でのCAN応答を実現しました。

(3)10Gbps/Wの通信効率を実現するネットワークアクセラレータ
 ECUを空冷で放熱するためには、コミュニケーションゲートウェイ用SoCは消費電力を7W以下に抑えることが求められています。30k DMIPS以上の処理を実現するためには約6Wの電力が必要となるため、通信処理に使用できる電力は約1Wです。必要とされる合計約10Gbpsの通信を1Wで実現する必要がありますが、CPUで処理する場合、3Gbps/Wほどの効率しか実現できません。そこでルネサスはまず、専用のネットワークアクセラレータを用意し、CPU処理をオフロードすることにより、9.4Gbps/Wまで効率を向上しました。さらに、電力を多く消費するTCAMを、ハッシュを使用したSRAMテーブルに置き換えることで11.5Gbps/Wまで効率を引き上げました。

(4)高信頼性が要求される通信が干渉を受けないセキュリティ技術
 コミュニケーションゲートウェイ用SoCには、車体制御に関わる高信頼性が要求される通信と、クラウドサービスなどのような不特定多数との通信が入り混じります。車体制御の安全性を確保するためには、高信頼性が要求される通信は隔離される必要があります。しかし、双方は同じ車内ネットワークでつながっているため、必ず物理的に交わる箇所が存在し、そこがセキュリティ上の課題になります。そこでルネサスは、SoCに入ってきたパケットを解析して、高信頼性が要求される通信かどうかを認識することにより、必要に応じてネットワークアクセラレータ内での経路や制御を分断するセキュリティ技術を開発しました。これにより、高信頼性が要求される通信は干渉を受けることがないため、様々なセキュリティ上の脅威から車内通信を守ることができます。

 なお、これらの技術はルネサスの車載コミュニケーションゲートウェイ用SoC「R-Car S4」に採用されています。ユーザは、R-Car S4を使用することにより、E/Eアーキテクチャの進化を加速させ、クラウドサービスへの安全な接続と、車体制御を安全に確実に行うことの両立が可能になります。

  

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