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半導体材料メーカーで国内初、仮想現実(VR)を製品開発に活用【レゾナック・ホールディングス】
2023年2月15日
半導体材料メーカーで国内初、仮想現実(VR)を製品開発に活用
株式会社レゾナック(社長:髙橋秀仁)は、仮想現実(VR)技術*1を半導体の材料開発に活用することに成功しました。VR技術は分子レベルの世界を3次元表示するもので、半導体材料開発の分野で導入されるのは国内初*2です。
従来、材料の分子レベルの相互作用については、分子動力学計算*3(分子シミュレーション)を用いて計算し、結果の解析は計算科学の専門家の経験に頼っていた面が少なくありませんでした。VR技術を活用することで、現場で材料開発を担当している技術者など、より多くの技術者が解析できるようにして、スピーディーな材料開発を実現し、さらに新たな材料・素材の発見を進めていきます。
分子レベルの解析のためのVR技術活用は、第1弾として、CMPスラリー(研磨材料)*4をはじめとした半導体材料や電子材料分野などの“無機基板と有機分子の相互作用メカニズム解析”に使われています。
従来の2次元的に表現した画像と、VR活用時の3次元的に表現した画像の対比 注:こちらは、シリカ(SiO2)基板上のイノシン酸(C10H13N4O8P)の分子動力学計算結果による例示で、半導体材料・電子材料分野の実例ではありません。 注:VR活用時の画像は、3次元的に表現されたものを、便宜的に画像として2次元で表しています。ヘッドマウントディスプレイで見る場合は、空間的な位置関係をより分かりやすく体感できます。 また、VR活用時の動画は、こちらからご覧いただけます: https://www.youtube.com/watch?v=yvuEgF1LjOg |
無機基板と有機分子の吸着性や接着性など、異なる材料の界面に対する相互作用については、分子動力学計算を実施し、計算結果はグラフソフトなどを用い、パソコンのディスプレイ上に2次元的に映し出して解析を行います。しかし、結合などの挙動メカニズム解明は、熟練の計算科学の専門家にとっても、統計的な解析にとどまることが多く、材料開発につながるレベルの直接的な解析は非常に困難でした。
このように複雑で困難であった、界面での分子の挙動の解析を実現するため、当社は半年前からヘッドマウントディスプレイ*5を用いたVR技術活用の検討を始め、このたび有用であることを見出しました。 VR技術を導入することにより、1mの100億分の一となる0.1nmの「原子・分子レベルの世界」を眼前に表現し、分子と同じスケールで直感的に操作をしながら3次元的に基板・分子界面に近づいて観察することができるようになります。この結果、計算科学の専門家だけでなく、材料の開発現場にいる「材料開発の専門家」も、基板の原子と有機分子の分子鎖が結合する様子などの振る舞いの詳細を解析することが可能となりました。
モノづくりの現場から見ると別世界と思われがちな計算科学の世界が、VR技術によりだれにでも容易に“体感”できるようになり、ひいては、現場の“材料開発の専門家”と“計算科学の専門家”のコミュニケーションも円滑になり、材料の研究開発の加速につながると考えています。
VRとヘッドマウントディスプレイ使用時の様子 |
■ 計算情報科学研究センター 奥野好成センター長コメント
「VR活用による分子設計は、必要とする特性を実現するための研究開発につながります。より深い材料解析や新たな材料・素材の発見のための、当社が持つ高度な計算科学技術を活かした取り組みです。まずは、このVRの導入・活用を全社に展開し、将来的には、社内のインフラにまで高めていきたいと考えています。計算科学・シミュレーションをフル活用し、当社の研究開発を加速してまいります。」
*1 仮想現実(VR)技術:VRはVirtual Realityの略で、コンピュータで作られたデジタル空間をユーザーが
まるで現実のように体感できる技術。
*2 当社調べ。
*3 分子動力学計算:原子の動きに着目し原子間の相互作用を考慮した運動方程式を解くことで分子の振る舞いを
解析する計算手法。分子シミュレーションとも言う。
*4 CMPスラリー:CMP(Chemical Mechanical Planarization:化学的機械研磨)スラリーとは、砥粒と液体で
構成され、半導体デバイスの回路形成工程で発生した凹凸を研磨、平坦化する材料。
*5 ヘッドマウントディスプレイ:頭部に装着し、左右の目の視差を用いて仮想現実を3次元で表示できる表示装置。
以上
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